1416.上には上がいるという事
※加筆修正を行いました。
イツキはケイノトでソフィと戦った時と全く同じ『瑠璃』と『金色』の二色の併用状態になり、膨れ上がった『魔力』で今度は単なる『魔力圧』ではなく『捉術』を放った。
――僧全捉術、『』。
それは彼が頭の中で描いて実際に現実に形にしようとしたモノであり、明確な名などない新たな『捉術』。
しかしその規模は単なる『捉術』の域ではなく、名もなき『僧全捉術』と呼べる代物だった。
(何だ……? 何か攻撃をしようとしたのではないのか? 何故動かな……――)
目の前で『瑠璃』と『金色』の二色を混ぜ合わせた後、こちらに向かって何かを仕掛けようとしていた筈のイツキの動きが止まったのを見たシゲンは、頭の中でそう考えていた次の瞬間、彼の傍で声が聴こえるのであった。
「別にアンタに恨みはねぇからよ。命を奪うような事はしないつもりだ。ただ、一発だけ思い切りアンタの横っ面を殴り抜かせてもらうぜ?」
殺すつもりはないと口にしたイツキだが、今までのシゲンは『青』を纏っていなかった。当たりどころが悪ければ死ぬどころか、ほぼ確実に当たれば絶命することだろう。
(まぁ、こっちが殺すつもりじゃなくても耐えられるだけの防御力がなければ、高確率で死ぬだろうけどな)
ほくそ笑みながらイツキが拳を突き出すが、目の前に迫ったそのイツキの拳を見た瞬間に、シゲンの身体が動いた。
「!?」
シゲンに攻撃を放ったイツキは目の前の相手が自分の制御下から抜け出したことを知るが、もう振り切っている拳を止めることは出来ない。
そのまま勢いを止めることなく放たれたイツキの拳をシゲンは右手で払うとそのまま左手で流れたイツキの腕を取りそのまま地面に組み伏せるのだった。
「ぐがっ……、イッテテテ!!」
殴りかかった手を取られたイツキは、そのまま関節を極められて地面で寝転ばされるのだった。
「今のは流石に予想外だった。あんな隠し玉を潜ませながら、これまでそれを匂わせる事なく使わなかった事にお前の恐ろしさを感じ取れた。見事だった」
「へっ! 妖魔退魔師の総長様に褒められ……――!?」
イツキは『褒められて光栄』だと続けようと見上げた視線の先で、自分に乗っかっているシゲンの周囲に自身と同様に『金色のオーラ』が纏われていたのを見て口を噤んだ。
「それは俺と同じ……?」
「ああ……。先程お主に説明したものと同じものだ」
「アンタも本当に化け物だな。昔からアンタの強さと恐ろしさは噂で耳にしていたが、アンタが『金色』を使えるってのは俺の情報網でも掴めていなかったぞ」
「ふっ……。これまではこの世界で使う必要性が全く感じなかったからな」
そう言ってシゲンはイツキの身体から手を放して立ち上がった。
どうやらそのまま解放するつもりらしい。
シゲンが自分の身体の上から退くと、イツキもその場で立ち上がるのだった。
「やれやれ……。あっさり解放しやがって。もう俺は脅威じゃないって事かい?」
「いや、お主が考えている事とは少し違うかな。単にお主とは真正面から話を交わせる人間だと判断したまでだ」
そう言ったシゲンは本当に何事もなかったかのように、再び椅子に腰を下ろすのだった。どうやら本当に言葉に偽りはないのだろう。
(これまでこの世界で使う必要性が感じられなかったから……か。確かにこんな化け物みたいな強さを有している者であれば、そういう考えを持つ事もあるのか? しかし全く。ソフィ殿といい、上には上がいるもんだな。世界は思っていたより広いのかもしれないな)
そう胸中で呟くイツキは『ソフィ』と戦った時のあの『化け物じみた』姿を思い出して苦笑いを浮かべるのであった。
「さて、お主の実力も理解が出来た事だし、そろそろ本題に入らせてもらうがいいかな?」
「え?」
今までのは一体何だったのかと言いたくなるのを何とか堪えて、唖然とした表情でシゲンに視線を送るイツキなのであった。
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