1415.強者の線引き
※加筆修正を行いました。
「さて、まさか『妖魔召士』でも『妖魔退魔師』でもない者が、我々『妖魔退魔師』が扱う『青』の技法を用いて、更には『妖魔召士』と見紛う程の『魔力』を使い二つの『技法』のオーラを混ぜ合わせるとはな……」
少しばかり報告にあった『イツキ』と呼ばれるかつて『煌鴟梟』を束ねていたという男の力量と器を確かめようとしていたシゲンだが、藪をつついて蛇が出るではないが、まさか『金色』だけではなく『青』まで完全にコントロールして更には併用まで見せられてはある程度は本気にならざるを得なくなるのだった。
昔から『青』の力と呼ばれる『技法』を『妖魔退魔師』の組織の間で受け継がされてきた。
『妖魔退魔師』と認められたものは誰もが持って生まれた素質を抱き、あくまで『魔力』という要素を除けば『天才』と呼べる資質を持つ者達であった。
今では妖魔退魔師の副総長である『ミスズ』が創設を果たして、新たに『特務』と呼ばれる『元』予備群の者達も『妖魔退魔師』と呼ばれる者達と並び始められるようにはなったが、生まれ持った資質からすでに最初の適性試験で『妖魔退魔師』として認められた者達は、例に漏れずに全員が早くから『青』を体現する事に成功しており、そこから自身の腕を磨き、初期の『淡い青』と呼ばれる状態から地道に研鑽を積んで『天色』に、そして『瑠璃』へと昇華していくのである。
いわば妖魔退魔師組織の中であっても『青』というのは直ぐに扱える代物ではなく、長年磨き上げる必要性のある『技法』なのである。
妖魔退魔師組織内の『特務』の者達も『ミスズ』という師が指導にあたったことで、かつては『妖魔退魔師』と認められなかった『予備群』の者達の中にも『青』を見事に体現してみせて、何と生まれ持った資質で『妖魔退魔師』となった者達に並べ追い越せと迫るほどに伸びてきているが、それはあくまで『予備群』として認められる程のある程度の素質と資質が求められているのである。
妖魔退魔師内の中であっても、これ程までに『青』のオーラと呼ばれる者を排出するのが難しいというのに、その『妖魔退魔師』という組織に属しておらず、また『妖魔召士』でもない目の前の存在は、見事に『青』の練度も高く使いこなしているとみえる。
それもそれだけに留まらずに、独自に『金色』と併用させて使っているというのだから、シゲンは再び『イツキ』の評価を上げざるを得なくなった。
(先程の『金色』状態の『魔力』も大したものではあったが、その使い方にはがっかりをさせられた。しかしこれだけの事が出来るのであれば、あとは『魔力』を上手く使いこなせれば化けるな……。しかし惜しいのは『青』だな。練度は完全に『天色』に至っているというのに、未だに『初期』の『青』を使っているというところだ。あれではいくら『金色』と同時にオーラを用いられているとはいっても、その真価を発揮出来ているとはいえぬな)
先程よりはイツキの実力を認めたシゲンだが、それでもまだ彼の考える『強者』の最低ラインに到達していないと判断したようである。
――そのイツキに対する考えは、奇しくもソフィも『ケイノト』でイツキと戦った時と同様のものであった。
そして今回もまたイツキの行う行動によって、対戦相手は彼に対する印象を二転、三転させる事となるのであった。
(前回俺があの化け物と戦った時は、普段通りに湯気を混ざらせようと『青』と『金色』を同時に完全に消してしまった事で、魔力の負荷が重なり消費が著しなっちまったからな。今度は『青』の力を抑えて先に混ざらせた状態でその後に『青』の練度を高めて昇華させちまえばいい……)
イツキは戦いを経ていくごとに徐々に自身の『魔力』の使い方を変えて『技法』をも変えていく。
彼は『生き残る為』の一点にだけは真摯に向き合い研鑽を惜しまない。
その必死さはあの大魔王『ヌー』と並ぶ程であり、努力を嫌う彼であっても戦闘に役立つ事に対しては、絶対に研鑽を怠らない。
一度見た『妖魔退魔師』の『青』を見て、その『青』の使い方を学んだように、今度はあの『ソフィ』の戦闘経験から彼には新たなヒラメキがあった。
――そしてその彼のヒラメキに同調させられるだけの『素質』もまた、同時に兼ね揃えている。
『妖魔召士』でも『妖魔退魔師』でも、はたまた『大魔王』でもない。ただの人間が行きついた『境地』。
そのイツキという人間の為に用意された先天性の贈り物――。
――金色の体現者のみが扱うの事の出来る『特異』。
単なる人間の『イツキ』が生まれながらにして持つ『特異』の正体は『ラーニング』。
彼が心の底から興味を抱き、自分の糧にしたいと本気で思った時にだけ発動する『特異』。
そしてイツキが『特異』を発動させた後、イツキの『浅葱色』だった淡い色が、一気に紫色に近い『瑠璃』の色へと変貌を遂げる。更にはそれと同時にイツキはもう行動を開始しており、驚いた表情を浮かべるシゲンの横っ面に手痛い一発をぶち込んでやろうとばかりに『捉術』を放つのであった――。
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