1414.金色の体現者を前に
※加筆修正を行いました。
イツキは自身の魔力を込めた衝撃波をあっさりと、刀の剣圧だけで消し飛ばしてみせたシゲンの能力に対して内心で考え始めるのであった。
(この男と正面から戦うなんて馬鹿げた事は考えてはいないが、本当に噂通りに手に負えない野郎みたいだな……。サテツや他の妖魔召士の連中の使う『青い目』といった『魔瞳』も妖魔退魔師達の連中は避ける事は出来るみたいだが、あんなにもあっさりと素振りだけで俺の『魔力』をも掻き消されたんじゃ、他の中途半端な『妖魔召士』の連中達じゃ絶対にこいつには敵わねぇだろう)
イツキはまだ『金色のオーラ』を纏っただけに過ぎない。
まだまだ彼はソフィと戦った時と同様に『青』と『金色』の併用オーラを使う事で、今の状態より数倍『魔力』を高めることも可能ではあるが、根本的な部分で『魔力』を掻き消すような真似をされるのであれば、あのソフィという化け物に匹敵する程に厄介かもしれないと、目の前のシゲンを見て考えるに至るのであった。
「ふふっ、そのオーラの光を見るにやはり『金色の体現者』とはお主の事であったか」
唐突に戦闘が開始されたというのにシゲンは、イツキを取り押さえる様子を見せるでもなく、何かを把握したかのように笑みを浮かべ始めてみせるのだった。
「『金色の体現者』? アンタは俺が覆っているこの『オーラ』を知っているのか?」
「ああ。それは先天性の贈り物と呼ばれている代物でな。生まれ持った素質が関係しているらしく、何百年もの間、この世界でその『金色』の『力』を体現した者は現れなかったのだ。つまりそれを纏っている時点でお前は選ばれた者だという事だな。存分に誇るといい」
「あっさりとその『体現者』とやらの攻撃を防いだ癖によく言うもんだ。アンタの言う通りに俺が選ばれた『体現者』だとしても、遠回しにアンタは俺にあっさりと勝てると言いたげに聞こえるぞ?」
「それはそうだろう。あくまでもお主には才能があると話をしているだけだからな。才能は伸ばさなければ意味はない。活かすつもりもない力を有しているだけのお主など、所詮虚仮威しに過ぎぬ。そんなお主にこの私が負けるわけがなかろう?」
どうやらシゲンはイツキが『金色の体現者』であったとしても、露程にも負けるとは思っていないようであった。
その言葉に流石にイツキも頭にきたようで、身体が熱くなるのを自覚しながらも彼はシゲンに対して口を開くのであった。
「大層な自信を持っているようだが、さっき見せた力が俺の全てだと思っているならそれは大間違いだぞシゲン殿?」
「ほう……? それはどういう意味かな?」
そこで再び『金色』の力を見せる前のイツキに対して見せた、探るような視線へと戻すシゲンであった。
本来のイツキは自分の力を他人に見せずに隠そうとする傾向にあった。
そうする事で厄介ごとに巻き込まれないように危険を遠ざけようとしていたからである。
――しかしどうやら、先程のシゲンの言葉の中に、イツキの琴線に触れるようなモノがあったようだ。
「……気が変わった。その勝ち誇ったお前の顔に一発キツいのをぶち込んでやるよ!」
先程のように闇雲に『魔力』をぶつけるつもりではなく、イツキは自身が放った言葉の通り、目の前に居る『妖魔退魔師』組織の総長であるシゲンに対して、全力で喧嘩を吹っ掛けるつもりで『力』を開放し始める――。
『青』練度5.0 『金色』からなる ――『二色の併用』。
イツキの身体の周囲を『淡い青色』と、体現者の証である『金色』のオーラの二色が混ざりあっていく。
「ほう? 『青』は我々『妖魔退魔師』だけが使える技法だと思っていたのだがな。最近はその考えが薄れてきたように感じるな」
少し前にソフィも『青』を使っているところを見たシゲンは、新たに目の前で『青』を纏い始めたイツキを見てそう言葉を漏らすのだった。
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