1411.厄介な死の結界
※加筆修正を行いました。
ソフィの真剣な表情を見たミスズは、先程自分が口にした内容が頭に過った。
――私や総長、それに最高幹部の組長達も『妖魔山』へ向かう以上は、この場に居る者達では対処が出来ない。
――そうなのだ。
『妖魔山』へ向かうのは自分を含めた『妖魔退魔師』の幹部達だけではなく、目の前に居るソフィ達も同じなのだ。
つまり自分達が居なくなった後に、ここで何かあれば途中で『結界』を解けばいいという安易な考えは通用しないのである。
ソフィ殿に頼もうとしていた『結界』は、どうやら魔力を使った『捉術』などを使うのを封じるといった簡単な代物ではなく、その『魔力』そのものを使用する全ての『力』に『結界』の効力が作用し、その効力の内容も『打ち消し』ではなく『吸収』を行うモノらしい。
更にその『吸収』も上限に際限はなく、使用者の『魔力』を吸い取りつくした後には『生命』すらも危ぶませるモノのようであった。
当然、この事実を『妖魔退魔師』本部に居る全員に伝えはするが、伝えたところで対処が出来るものではない。
妖魔退魔師達は『瑠璃』や『天色』というオーラを使用する事を禁じれば済む話ではあるが、捕らえている『妖魔召士』達は『捉術』といった『魔力』を絶対に使うなと警告したところで律儀に守らないだろう。
そうなれば待つのは『死』であり、とくに捕らえた者達の中でも一派の首領であったヒュウガは死なせるわけにはいかない存在である。
しかしだからといって『結界』を諦めれば、ヒュウガ達のような『最上位妖魔召士』や『上位妖魔召士』のような数多く居る厄介な連中が結託して脱走を図るかもしれないのだ。
それに捕らえた者達が全てだとも限らない。
まだ何かあった時に外から脱走を幇助する謂わば『別動隊』の存在が居る可能性も残されている。
これ程までに強力で凶悪な類の『結界』だと思っていなかったミスズは『何と扱いずらいのだ』とばかりに考え始めるのだった。
「ほ、他にも『結界』が使えるとソフィ殿は仰っておりましたが、その『死の結界』以外で彼らの『魔力』を封じるものはないのでしょうか?」
「むっ? そうだな……。専守防衛系となれば『極大魔法』などを防ぐ物や『理』に対して反応を示すものが多くてな。妖魔召士達が使う個人に影響を及ぼす『捉術』のような物を防ぐ、限定的な『結界』ともなると『死の結界』以外には難しいな……」
『結界』に『結界』を重ねる『多重結界』を施すという方法もあるにはあるのだが、残念な事にソフィの使う『魔力吸収の地』は他の『結界』に対しても効力を発揮する。
つまり『多重結界』を施したところで『死の結界』としての効力が発動されて、その他一切の『結界』を強制的に消滅させてしまう結果を及ぼすだろう。
そしてソフィの『魔力』が吸収されたとしても、その吸収する先の使用者が『ソフィ』なのだから、これもまた永久機関となって増減する事なく『結界』は意味なく残され続ける事になる事も予想される。
つまりは単なる無駄な行為という事になるのであった。
「捕らえた連中を生かすのが難しいなら、殺しちまえよ」
「なっ!?」
ヌーの放ったとんでもない言葉に普段は表情を変える事が珍しいミスズが、目を丸くして驚きの声をあげるのであった。
「ま、待ってください! ヒュウガ殿達には今回の事を詳しく説明して頂く必要がありますし、最終的にはゲンロク殿達に引き渡す事も視野に入れていますので、何とか生かせておきたいのです……!」
「ふんっ。まぁ決めるのは俺じゃねえから勝手にすればいいが、こいつの『魔力吸収の地』は一歩間違えれば自分の首を絞める事になるって事だけはしっかり覚えておけよ」
それでもう言いたい事は言い終えたとばかりにヌーは、ソフィ達から視線を外すのだった。そして代わりに今度は腕を組んでこちらの会話を静かに聴いていた『セルバス』が、こちらに寄ってきて口を開くのだった。
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