1410.ソフィの死の結界の効力
※加筆修正を行いました。
セルバスがソフィ達と『妖魔山』に同行しようとしていたところを『ヌー』に止められた後、どうやら会議を終えたのであろう『ミスズ』がソフィ達の居る部屋に顔を見せるのだった。
「申し訳ありません、ソフィ殿に頼みたい事があるのですが……」
「む? 前にもミスズ殿に言ったが、我に出来る事ならば協力するぞ?」
部屋に迎え入れたミスズに開口一番そう告げられたソフィだが、あっさりとミスズの頼みたいという言葉に協力をすると答えるソフィであった。
「おい、ソフィ……」
また何か面倒な事に巻き込まれるのかと懸念を抱いたヌーは、体を起こすと不機嫌そうにソフィに向けて口を開こうとしたが、そこでミスズが言葉を被せる。
「ご安心下さい、ヌー殿。次の任務は当初の予定通りに『妖魔山』への調査と決まりましたので、ソフィ殿達のお仲間を探すという目的は果たされる事は変わりません。今回我々がソフィ殿に頼みたいというのは、旅籠町に張られたという『結界』をこの『妖魔退魔師』の本部にもお願い出来ないかと思いまして……」
直ぐにヌーの懸念に対してミスズがそう答えると、矢継ぎ早に自身の願いを口にするのだった。
「ふんっ!」
ソフィにミスズの頼みを断らせようとしていたヌーだったが、そのミスズに『妖魔山』へ向かう任務に変更はないと説明をされた事で出鼻を挫かれてしまい、その後にミスズの願いというのが自分に対して何も影響がないと知ったヌーは口を挟めなくなり、そのまま舌打ちをしながらも引き下がるしかなくなるのであった。
どうやらヌーは自分勝手を働く外道と呼べるような大魔王対しての対応や、上辺だけの正論を述べて中身が伴っていない者達に対しての扱いには長けているようだが、この目の前に居る『ミスズ』のような完璧主義者のきらいがある輩に対しては、一定の苦手意識を持っているようだった。
――ヌーがその苦手意識を持つに至った理由は、このミスズの性格に似た側面を持った『煌聖教団』の総帥であった大賢者『ミラ』が関係しているのだが、本人もその事には気づいてはいないようだった。
「ふむ? 旅籠町に張った結界……? 確かその結界とは『魔力吸収の地』の事かな?」
「ほ、他にも違う結界をソフィ殿は使われるのですか? え、えっと……、シグレからソフィ殿の結界の事をきいたもので……。旅籠町の我々妖魔退魔師組織の管理する『予備群』達の屯所にソフィ殿が張られた結界というモノをこの場所でもお願いしたいのです!」
「はっ! 大方あの森で捕らえた『妖魔召士』とかいう奴が、牢の中で目を覚ました後に、この場から逃げないように『魔力』を使えなくしたいと考えたんだろう?」
そこで先程苦言を告げようとしたところに出鼻を挫かれて口を噤んでいたヌーが、再びソフィとミスズの話に割って入ってきた。
どうやら先程のミスズの態度にヌーは『ミラ』を思い出して、余程悔しい思いを抱いたようであった。
「は、はい。ヌー殿の仰る通りです。捕縛したとはいっても『ヒュウガ』殿をはじめとする多くのヒュウガ一派の『妖魔召士』の者達が『上位妖魔召士』ですので、結託されると手足を縛ったところで『捉術』や『魔瞳』の類を放たれては危険ですので……。そこでソフィ殿の結界を張っていただきたいと思った所存です」
「てめぇらがやっぱり頼まなければよかったと、後悔するのが目に見えているから先に忠告をしておいてやるがな。お前が望んでいるソフィの『結界』は、俺らの世界では通称『死の結界』と呼ばれるものでな、融通が利かない厄介な『結界』なんだ。悪いことはいわねぇから『結界』を張るのを頼むのはやめて、素直に牢の見張りの数を増やしておけ」
「いえ、それは出来ません。理由は先程も言いましたが、捕らえたヒュウガ一派の妖魔召士の者達は、旅籠町で捕縛した『中位妖魔召士』達とは遥かに戦力値も魔力値も違う『上位妖魔召士』達なのです。更に言えば『ヒュウガ』殿はあの『ゲンロク』殿や『エイジ』殿が口を揃えて『最上位妖魔召士』に匹敵する魔力を持っている『妖魔召士』だと口になされていました。私や総長、それに最高幹部の組長達も『妖魔山』へ向かう以上は、残っている妖魔退魔師達だけに見張りを頼むのは、それこそ危険が大きすぎるのです」
せっかく苦労して捕らえた『ヒュウガ』達を取り逃がすくらいならば、ソフィの『結界』が如何に危険な代物であっても張ってもらいたいというのが、ミスズの言い分のようであった。
「ちっ……! ここまで言っても頼むっていうならもう知らねぇよ! 全く! こいつがどれだけ規格外の化け物なのかを知らねぇってのは幸せな事だぜ! こいつは俺達の居た世界に居る何万、何千万、それ以上の生物が口を揃えて何千年もこの化け物には逆らえねぇって野郎なんだぞ。その化け物が使う『結界』の中でもトップに来るような凶悪な『結界』を自分から望むってんだから、もう付き合いきれねぇよ! 最初から自分の命をコイツに握られるようなもんだ。コイツが『死の結界』を張った後は、俺はもうここには絶対入らねぇからな!」
ヌーはそう吐き捨ててもう話は終わりだとばかりに、部屋の隅に居たテアの場所に戻っていった。
去っていくヌーの後ろ姿をミスズは、唖然とした表情で見送っていた。
どうやらここまでヌーが激昂する事だとは思わなかったようだった。
「そ、そのソフィ殿……」
「うむ……。結界を張れば本当にもうヌーの言う通りに、この場所は結界を解くまで『魔力』を使うその全ての現象は封じさせてもらう事になるが、張ってよいのだな? 結界を張った後はこの施設内で『魔力』を伴う行為をとれば下手をすれば『魔力枯渇』を引き起こす。それでも使用を続けようとするならば、使用する『魔法』や『魔力』を伴う規模にもよるが、僅か数秒でその術者や詠唱者の命を奪うのだが、本当に構わぬか?」
「!」
ソフィはミスズを脅そうと口にしているのではなく、そう話すソフィの困ったような表情を見て、本当にそれ程の覚悟が要る事を頼もうとしているのだと、ここにきてようやく彼女はその事の重大さに理解したようであった。
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