1408.妖魔山と利害の関係
※加筆修正を行いました。
ミスズ達がヒュウガ一派を引き連れて『サカダイ』の本部に戻ってくると、既に『ケイノト』の町から戻ってきていた『ソフィ』や『ヒノエ』達の姿が見えた。
「副総長、おかえりなさい! その顔を見るに無事に『ヒュウガ』殿達の一派を捕縛出来たようですね!」
「ええ、その通りよ。貴方達もお疲れ様。おや……?」
ヒノエや一組の隊士達を労うように声を掛けていくミスズだったが、そこで『キョウカ』も合流していたことに気づくのだった。
「おかえりなさい、ミスズ副総長」
そう言って笑顔で出迎えてくれるキョウカだった。
「どうやら『ケイノト』で無事にヒノエ組長達と合流を果たしたようね。よかった」
「ええ……。組の大事な隊士が私を守ってくれたおかげで、何とか私だけは無事で戻ってこれたわ」
ミスズを出迎えた時の笑顔が陰り、悲痛な面持ちでそう口にするキョウカであった。
ちらりと彼女の横に居る『三組副組長』の『ヒサト』の顔を見るミスズだったが、そのヒサトは首を横に振るのだった。
どうやら彼女の『三組』の隊士が彼女を庇って戦死したのだろう。
「そう。貴方も大変だったようね……」
「ええ……」
ミスズも今回の事で『コウゾウ』を失っており、大事な仲間を失う気持ちは痛い程に分かっている。
同じ気持ちを抱いているであろうキョウカにそう告げるのだった。
「皆、ご苦労だった。それぞれに色々と積もる話もあるだろうが、ひとまずは報告を優先して欲しい」
しんみりとした空気が流れ始めていたが、そこに総長である『シゲン』がこの場に居る全員に声を掛けるのだった。
直ぐに総長に対して返事を行った副総長のミスズは、加護の森で今回の事件の発端となった『ヒュウガ』とその一派達、更にはヒュウガの協力を行おうとしていた『ケイノト』の『退魔組』の者達も捕縛した事を伝えた。
そして今回の早期の解決に尽力を注いでくれた『ソフィ』や『ヌー』に『セルバス』といった者達の協力もあったことも合わせて伝えるミスズであった。
「そうか。ソフィ殿にヌー殿達も協力に感謝する。貴方達のおかげで全てが上手くいった」
ミスズからの報告を受けた総長のシゲンが、その場で立ってソフィ達に頭を下げて感謝の言葉を告げると、他の妖魔退魔師の組長や副組長、それに隊士達もソフィに感謝の気持ちを表すように頭を下げるのであった。
「頭をあげられよ。困った者達が居れば協力をするのは当然の事だ」
そう言ってソフィはシゲン達に頭をあげさせると、横に居たヌーが口を開いた。
「しかしソフィ。協力をするのはお前の勝手だがな。そろそろこっちも限界だ。今度こそあの『天衣無縫』を連れ戻すのを優先しろよ?」
「うむ。分かっている。ここまでお主やテアにセルバス。お主らにも色々と迷惑をかけてしまっておるからな」
ソフィがそう告げると、話を聞いていたミスズが今度は口を開いた。
「それは『イダラマ』殿とご同行をされている青い髪の少年の事ですね?」
「ああ……! あの少年がソフィ殿達の連れだったわけか!」
既にソフィが事情を説明していた『ミスズ』が『エヴィ』の事を口にすると、ようやく合点がいったとばかりに『ヒノエ』が口を割り込ませるのだった。
「このクソババアはソフィ殿のお連れの方に喧嘩を売って、総長に窘められていたんだよ?」
こっそりとヌーとは反対方向のソフィの隣に立っていたスオウは、ヒノエの事を耳打ちするのだった。
「聞こえてんぞ、クソチビ! べ、別にソフィ殿のお連れの御方に喧嘩売ったわけじゃねぇよ。あれは成り行きでそういう風になっちまっただけで、別に私は……」
心底困ったと言いたげな表情を浮かべながら、ヒノエは弁明を始めようとするのだった。
しかしそこで再び『ミスズ』が口を開く。
「ヒノエ組長、今更そんな事の話をしても仕方がないでしょう。話を戻しますが、色々とこちらもイダラマ殿達の事を追って調べてはいる状況ですが、イダラマ殿と同行を共にしているソフィ殿のお連れの方は『妖魔山』へ向かっているものと思われます。つまりソフィ殿達が『ゲンロク』殿の里で話を進めた通り、我々と『妖魔山』の調査にご同行をして頂けるのならば、同じ場所を目指しているイダラマ殿と遭遇する事になるかと思われます」
「成程。つまりその『妖魔山』とやらに共に向かう事は、我々とお主らの利害が一致しているという事だな?」
副総長のミスズはその通りですと言いたげに、ズレ落ちそうになる眼鏡をくいっと上げながら頷いて見せるのだった。
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