1407.加護の森での任務の終了
※加筆修正を行いました。
セルバスの忠告を受け入れた『ロイトープ』は、直ぐに『ペレアータ』と『オグルエ』に大人しくするように視線を送ると、その二体も素直に頷いて見せるのだった。
他の悪魔達も居なくなり、残った彼らも大人しくなったのを見て、ようやく収まったと判断したミスズは警戒心をそのままに背後を振り返るのだった。
当然背後には『退魔組』の頭領である『妖魔召士』である『サテツ』が居た。
ミスズは『悪魔』達と戦いながらも背後のサテツからの攻撃にも備えられるように警戒は続けていた為、もし攻撃をされても直ぐに対応の出来る準備は整えていたのであった。
「どうやら双方、素直に矛を収めて頂けたようで何よりですよ」
笑顔でそう告げるミスズの目を見るサテツは、敵を見る目ではなくなっていた。
「ミスズ殿……。あんたはさっき『ヒュウガ』様を捕縛したと言っていたが、それは本当の事なのか?」
「ええ、間違いありません。彼はこの私の手で倒して捕縛しましたので」
視線をサテツに向けたまま、ズレ落ちる眼鏡をくいっと上げながら答えるミスズだった。
(この女が断言するんだから、間違いねぇな。あーあ、これで俺達も終わりか……)
何が発端で現状の様子になっているのか、この『退魔組』の頭領である『サテツ』は理解していなかった。
唐突に『イツキ』から『ヒュウガ』が『加護の森』に集まるように『式』を通して伝えてきたという事と、それ以前に『妖魔退魔師』と『妖魔召士』の争いがあり、両組織の間でいつ衝突が起こるか分からない状況に発展していた事。
そして『妖魔召士』の組織内でもサテツの予想より早く、ヒュウガがゲンロクと袂を分かつ事となっていた事。
――そのどれもが『サテツ』が預かり知らぬ間に起きた出来事であり、彼は謂わば被害者といえる立場だった。
しかし『退魔組』という『妖魔召士』の下部組織の『頭領』という立場を預かる者である為、その起きた出来事の責任を取らされるのは、組織という枠内に居る以上は仕方のない事である。
「そうか……」
「はい……」
ミスズは自分の話を目の前で聞いて項垂れるサテツを見て、あまりに物分かりのいい様子に逆に面食らうのだった。
(セルバス殿の使役した『悪魔』達に予想以上に精神的に参らされたという事でしょうか? それとも、そもそもヒュウガ殿に対してそこまで思い入れがあったわけでもなかった? いえ……、そんな筈はないわね。そもそもあのヒュウガ殿は『退魔組』を……、この妖魔召士のサテツ殿と合流を果たす事を大事に思っていたからこそ、わざわざ危険を冒してまで『加護の森』で落ち合うと決めた筈。サテツ殿もヒュウガ殿と志を共にするつもりだった筈なのは間違いない。しかしそれにしてはあまりにも……)
何か考え込んでいる様子のミスズを見て、サテツは静かに口を開いた。
「ミスズ殿、助けてくれて感謝する。それと俺に抵抗する意志はねぇから捕らえるなら好きにしてくれ」
「ではこれより貴方も捕縛させて頂きます。構いませんね?」
「ああ。好きにしてくれ」
「結構」
こうしてミスズとサテツの少ないやり取りの後、彼は大人しく捕縛される事となった。
…………
そしてこの後に続々と森の中から『妖魔退魔師』組織の者達が、入口に居る『副総長』の元に姿を見せ始める。
疲れた顔を見せる『特務』の者達や、二組の妖魔退魔師達。
そしてスオウ組長にそれぞれ労いの言葉を掛けていくミスズであった。
この場に最後に現れたのは、先程空の上に居た『妖魔召士』二名を引き連れた大魔王ヌーと、死神テアの姿であった。
男の方も怯える素振りを見せていたが、もう一人の女性の妖魔召士の方は更に酷い様相で、その憔悴しきった顔を見るに、ヌー達との戦闘が相当に壮絶だったことが窺えた。
帰りもまたその大魔王ヌーの『魔法』によって、一行はあっという間に『サカダイ』の『妖魔退魔師』組織の本部に辿り着くのであった。
――こうしてミスズ達『妖魔退魔師』組織の者達は『ヒュウガ一派』と、ケイノトの『退魔組』の者達の思惑を阻止する事で任務を遂行させたのであった。
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