1403.死神テアの戦い方
※加筆修正を行いました。
「――」(さて……。今のヌーの野郎なら、あの女をあっさりと仕留めちまうだろうからな。私も急がないといけないな)
空を飛べる『幽世』の存在である『死神』の『テア』は、その空の上で同じく飛んでいる『鬼人』の妖魔と相対するのだった。
まさに一足飛びといえる勢いで強くなっていく『ヌー』だが、この『死神』の『テア』もまた前回の『ダール』の世界でその『ヌー』と戦っていた時より遥かに強くなっているのだった。
当初の予定では、契約を交わして『ヌー』より強くなったところを間近で証明しようとしていたテアだったが、どうやら逆に自分よりも強くなっていくヌーの姿を間近で見せつけられた事でその考えはなくなっていった。
しかしもちろん『テア』もこのままヌーに離されたままで終わるつもりはない為に、まずは前回のヌーと同様の強さと判断した、この目の前の『鬼人』に対して、自分の現状の強さを把握しようと『テア』は考えたわけであった。
先程の自分の大鎌を自身の腕で防いでみた鬼人をみるに、あの鬼人の皮膚は相当に固く、人間達の武器ではそう簡単にはダメージが通らないだろう。
――だが、死神のテアにはお誂え向きの相手といえるのだった。
鬼人は一刻も早く拉致をされるように遠ざけられていった『キネツグ』の護衛に戻ろうと『力』を開放し始める。
どうやら彼は相当に『チアキ』に対して忠誠心を持っているのだろう。
キネツグのためにというよりは『チアキ』のために動こうとしている様子であった。
そして戦闘態勢に入った鬼人が、大鎌をクルクルと回している『テア』に向かっていく。
どうやら先程の鍔迫り合いで『テア』の攻撃であれば、たとえ先に当てられたとしても耐えられると鬼人は判断をしたのだろう。
それならば玉砕覚悟の一撃で大きくダメージを負わせられれば、大きな好機は生まれると考えての鬼人の妖魔の初動の動きのようであった。
どうやらこの鬼人の妖魔は力任せに鍛え抜いた腕力を振り回すタイプだったようで、その固い皮膚で覆われた防御適正を活かして攻撃を繰り出す。
それはまさに『肉を切らせて骨を断つ』という言葉が似合う『捨て身』の一撃で相手を粉砕しようと『テア』に拳を繰り出してくるのだった。
テアの方も上手くこの鬼人の拳を大鎌でいなして見せたかと思うと、小柄な身体の速度を活かしてあっさりと鬼人の背後を取って見せる。
そして反撃とばかりに隙だらけの鬼人の背後から、大鎌を振り切ろうとするテアに、今度は鬼人が前を向いたままで裏拳を放ってくるのだった。
「――!」(ちっ、上手いなコイツ……!)
完璧に一撃を入れられる流れだったものが、あっさりとその位置から跳ね返されたテアは、あえてその鬼人の腕力に合わせようとせずに距離を取るのだった。
あのままでも上手く一撃を入れられる自信はあったテアだが、その一撃を入れるよりも相手の攻撃に勢いを持たせる不安感の方が大きく感じられたのである。
こういった腕力で押し通してくる敵というのは、一度調子に乗らせると本来よりも活きた攻撃を重ねてくるものが多い。テアはここで無理をせずに、相手の勢い付く行動を取るのを避けたという事であった――。
これもまた『基本研鑽演義』の一つの行動といっても過言ではないだろう。
戦いの経験が豊富なモノこそ、攻撃の先に待っている繋がる要素というモノを予見出来る。
相手の狙いや思惑というモノは、ある程度似たり寄ったりになりやすい。
その要因は相手を打ち負かすという算段が大前提となってくるからである。
テアはこれまでの戦闘経験から予測して、ここは無理をせずに一歩退くことで、新たに『鬼人』の状態の現在の情報を仕入れ始めていく。
(コイツは私と戦いながらも逐一『ヌー』達の居る方角の方に視線を向けている。どうやらさっきの人間が気になって、気になって仕方がないのだろう。勢い任せに攻撃を仕掛けてくるのにも単に腕力に自信があるだけだからじゃなく、さっさと勝負を決めたいという考えからくるものが多分に混じっていやがるな?)
「――」(そうであるならば、あえてここは……!)
そしてテアはこれまでの攻撃の狙いとは、また少し変え始めるのであった――。
『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!




