1401.残虐な大魔王ヌー
※加筆修正を行いました。
「お前、どっちとやる?」
「え――?」
「――?」(お前はどっちとやりたいんだ?)
突然ヌーが声を出したことで、最初は自分に声を掛けられたのだと勘違いしたミスズが反応したが、その後直ぐにテアが返事をした事で、自分に言われていたわけではなかったのだと理解したミスズは顔を赤くした。
しかしそこで彼女もつられて空を見上げると、彼女にも何を言っているのかを理解するのだった。
「あれは妖魔召士……? お、お待ちください! もうヒュウガ殿の捕縛は完了していますので妖魔召士を相手に無用な殺生は控えて頂きたい!」
「ああ……? だったら、あれはいいのかよ?」
自分の実力をもう少し試してみたいと考えていたヌーは、その相手を殺すなとミスズに忠告された事で不満気にセルバスを指さしながらそう告げるのだった。
「も、もちろん駄目に決まっています! セルバス殿の方にも止めに入ろうと考えていたところなのです! ヌー殿もテア殿も捕縛をするのに協力をして下さい! そ、そうです! よ、弱らせる目的でなら手を出しても構いませんから!」
「ちっ……! まぁそれでもいいか。おい、テアお前も協力しろ」
どうやらここまで協力をしてきたのだから、今更ソフィに対して逆らうのも惜しいと考えたのか、存外素直に『ミスズ』に従う大魔王ヌーであった。
「――」(はいはい、言われなくても分かってるって)
元々テアはどっちでも良かったようで、言われた通りにヌーに従うのだった。
そう告げるとヌーとテアは同時に空へと向かい、それを見送った後にミスズは視線を『サテツ』達へと向けた後にそちらに向かって駆け出し始めるのだった。
…………
「キネツグ! 早く飛び降りろ!」
「!?」
先に地上からのヌー達の接近を感知した『チアキ』が『キネツグ』に向けて叫んだ後、直ぐに『結界』を施そうと行動を開始するが、その『結界』を張ろうとした『チアキ』の首を掴み上げると、ヌーは思い切りその場から遠くの空へと放り投げようとする。
「ぐっ……!」
チアキもヌーに首を絞められてしまい、苦しさから片目を閉じたが、そのままされるがままではなく右手で『応戦』を行おうと自らも手を伸ばす。
――捉術、『動殺是決』。
「察知もおせぇし、行動も遅いんだよ!」
捉術を放とうとした『チアキ』の左手の手首を掴んだヌーは、そのまま強引に自分に引き寄せると、そのまま『チアキ』の鼻面に思い切り頭を叩きつけた。
「あっ……、ぐっ!!」
鼻血を流しながら顔を思い切り背けようとするチアキを逃すまいと、彼女の首を掴んでいる右手に『魔力』を集約させると、そのまま力任せに放り投げた。
「ぐああっ……!」
鼻を押さえながら痛みで反射的に涙を流しているチアキは、そのヌーの放り投げた勢いそのままに空を飛ばされていった。
その姿を見たヌーは鋭利な笑みを浮かべたかと思うと、自身の両手を左右に広げ始める。
――『紅色』1.7 『青色』5.0 『金色』からなる、――『三色併用』。
爆発的に『魔力』の上昇を果たしたヌーは、視界から消えようとする程までに遠くへと飛んで行った『チアキ』に向けて右手を伸ばした。
「ククククッ! 『力』を試すにはいい機会だ」
そう告げるとヌーは伸ばした右手を広げると『魔力』を放った。
その瞬間――。
遠くの空を飛んで行った筈のチアキが、一瞬でヌーの眼前に出現を果たす。
――それは『逆転移』であった。
圧倒的な力の差があれば魔力を送り込む事で、相手を自分の目の前にまで『転移』させられる『大魔王』の扱う『逆転移』という技法である。
何が起きたか分からないチアキは、一瞬で景色が変わった事に気づいて慌てて前を向くが、そこには待ってましたとばかりにヌーが、チアキの鳩尾を下から思い切り突き上げた。
「ぐぇっ!!」
チアキはその激痛に耐えきれずに、前のめりになりながら空から落ちそうになるが、そのチアキの髪を強引に掴むと今度は邪悪な笑みを浮かべてそのチアキの顔を殴り続け始める。
上手く力の調節を行うヌーに殴りつけられ続けるチアキは絶命する事なく顔を殴り続けられて、乾いた音が空の上に響き渡り続けるのだった。
そして遂には髪の毛が抜けてそのままチアキは一時的にではあるが、空の上で自由になった。
しかし今度はそのチアキの後頭部を思い切り力を込めた足の踵で蹴り飛ばす。
その勢いで真下の地上へと思い切り飛ばされていくチアキだったが、激突する瞬間に再び『逆転移』で空の上のヌーの元にまで強引に引き戻される。
「ククククッ!! どうやら完全にこの状態の『魔力コントロール』は完璧に出来たようだな……!」
声高にそう叫ぶと再びチアキの下腹部を前蹴りで押すように蹴り飛ばすと、再び吹っ飛んでいくが、今度は『逆転移』で戻すような真似をせず、ヌー自らも前方へと追走してそのままチアキの腹に膝を入れるのだった。
「うげっ! げぇ……っ!」
血と胃液が混ざった液体を口から吐き出すチアキの目は虚ろになっていたが、目の前に居る『大魔王』が視界に入ると全身が総毛立つのだった。
「さて、次は何をしようか? 今の俺の魔力で使う『禍々崩』で、肺に極限まで汚染させた空気を送り込ませた状態で思い切り呼吸をさせてみるか? とんでもねぇ激痛が今度は身体の体内から伴うだろうなぁ」
「ひっ、ひぃっ!! も、も……う、ゆ、ゆる……ひ、て……、お、おねが……い! こ、ころしゃないでくだしゃい……!!」
「ククククッ! 安心しろよ? てめぇらを殺さねぇとあの女と約束したから殺さねぇよ! だがまぁ、これだけ今の俺の攻撃を受けて耐えられているんだ。素晴らしい実験台のてめぇには、俺の気が済むまでは付き合ってもらうがなぁ……?」
口角を吊り上げながら笑うヌーに、歯をカチカチとならしながら怯える『妖魔召士』の『チアキ』であった――。
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