1394.大魔王ヌーの新たな境地
※加筆修正を行いました。
『魔神級』に大魔王ヌーが至った事によって、夢想する『理想』の強さの高さを知る。その彼が思う頂に居る存在――。
――大魔王『ソフィ』という最高にして最強の存在が君臨する頂。
大魔王『ヌー』は、大魔王『ソフィ』の居る頂の高さを『成長』する事で知り、そこに至る為に必要な『三色併用』という『成長』を促す『武器』と、その『武器』の仕組みである『瑠璃』という『青』の原理。
そして『紅』という魔族が最初に覚える事となる『オーラ』を潤滑油にする事によって組み合わせる事で新たな『智』を得た。
――彼の目指す頂の高さと、そこへ向かう為の手立て。
そしてそこを目指す為に必要な『潜在能力』に『成長』の一途を支える『武器』。
その全てを携えた彼の準備は、全てが整ったといえるだろう。
――さぁ、後は登るだけだ。大魔王『ソフィ』の居る『頂』に――。
単に『紅』というオーラの『練度』を1.7にする事が重要なのではない。何故1.7にする必要があったのか。
そしてその『紅』という『オーラ』の潤滑油を注す必要性が示す『瑠璃』という『青』の極地――。
『魔族』という種族と『ノックス』の世界の『技法』。
その組み合わせは、果たして本当に偶然だったのだろうか。まるでこの『魔族』の為にあったような『青』の完成形は魔族が扱う『紅』の『オーラ』によって真の意味で完成する。
――紅『1.7』 青『5.0』からなる ――二色の併用。
そしてそこに金色が交わる事で『柘榴色』と『瑠璃色』の併用のオーラは更に輝きを増して『三色併用』に至る。
――カチリとヌーの中で音が鳴った気がした。
大魔王『ヌー』の中でこれまで閉ざされていた扉が開かれて、貯蔵されていた魔力が全て部屋の中から溢れ出て、ヌーの体中を駆け巡る感覚が伝わっていくのであった。
「ふ、ふふっ……、フハハハ!!」
大魔王『ヌー』の持つ本来の感性と、相反する彼の持つ冷静沈着な理性。
何処までも迸る『潜在する魔力』を一瞬でその全てを制御する事の出来る全能感。
信じられない程の膨大な魔力を手にしたヌーだが、その全ての魔力の細部に至るまでを完全に掌握していた。
このヌーの限界をまた一つ乗り越えた感覚は、過去に大魔王『シス』も同一の経験を行った事があった。
それは『シス』の元を離れようと『ユファ』が、最後の挨拶を『シス』にしようと姿を見せた時の事である。
『代替身体』の身体から本来の『災厄の大魔法使い』である大魔王『ユファ』の姿で『シス』の元を訪れた時に、シスは『潜在する力』の一部を開放して、強引に『ユファ』の『概念跳躍』を膨大な『魔力』を用いて強制解除を行い、そして『ユファ』を動けなくさせたのだ。
あの時の『シス』もまた一時的に『魔神級』へと変貌を遂げた大魔王『シス』となっていたが、その時のシスはまだ本来のその『力』に振り回されてしまっていて、全てを完全にコントロールする事は出来てはいなかった。
しかし今の『ヌー』はその時の『シス』の『魔神級』の状態を上回っている状態で、更に完全に自分の思い通りに全ての『魔力』のコントロール』が行えているのである。
――どちらの方が『魔力』が上なのかという話をしているのではなく、このヌーの凄さを表すとするならば、その示すモノに対して最大限度の掌握を可能としているのは、この状態に至る理由ともなった『武器』となる全ての『オーラ』『魔力』『潜在能力』を完璧に管理下に置いて、思い通りにコントロール出来ているという事なのである。
当然『黄雀』はこの今のヌーの魔力を感知出来ている。だからこそ彼もまた激昂している状態から、普段通りの冷静な状態に戻れたのであった。
今の大魔王『ヌー』の纏う『三色併用』が齎している膨大な『魔力』に『黄雀』が驚いていると、そこにヌーが笑みを浮かべながら『黄雀』に手を翳し始めた。
「むっ!?」
「さて、試させてもらうか……」
『黄雀』はヌーに手を向けられて訝しそうに眉を寄せていたが、次の瞬間に『ドンッ!』という衝撃音と共に、その場から強引に吹き飛ばされてしまうのであった――。
「なっ!?」
『加護の森』の上空を強引に吹き飛ばされた『黄雀』は、森の奥側の出口付近に張られている『結界』まで一気に吹き飛ばされてしまうのだった。
何とか『結界』の外側へと出る前に『黄雀』は上空で態勢を戻す事に成功したが、もう前を向き直す瞬間には『ヌー』が目の前にまで迫ってきていた。
「ば、馬鹿な……! く、クソッ!!」
「はっ! 逃すかよ!」
迫ってきたヌーに悪態をついた『黄雀』がその場から強引に離れようとしたところに、今度はヌーが真下に向けて手を振り下ろした。
直接ヌーが『黄雀』を触ったわけでもないというのに、可視化出来る程の『魔力』を強引にぶつけられた『黄雀』は、そのヌーの思うがままに身体を支配されたかの如く動かされて猛速度で落とされたかと思うと、地面に激突するのだった。
「さっさと動かねぇと、痛い目を見るぜ?」
――魔神域魔法、『闇の閃日』。
――魔神域魔法、『天雷一閃』。
恐るべき速度で放たれた閃光と雷光が『魔力の檻』というべき『ヌー』の放った衝撃波の後を追うように、空から降り注がれていく。
その二つの魔法もまた、これまでの『神域』程度の魔法とは威力が異なっていた――。
大魔王『ヌー』はまだ全然本気ではないが、その放たれた二つの『魔法』は『魔神域』に到達しており、あの『リラリオ』の世界でソフィが直接戦った『代替身体』の『レキ』程度の耐魔力であれば、瞬時に粉々にしてしまえる程の『魔力』が込められていた。
「な、舐めるなぁっ!! こ、この程度でこの俺を殺れるとは思わぬ事だ 小童がぁっ!!」
流石ランク『8』の妖魔だけあって、全く本気ではないとはいっても『魔神域』に到達している大魔王『ヌー』の無詠唱で同時に放たれた魔法をまともに受けて、甚大なるダメージを負ってはいるが、即座に絶命をするでもなく上空へと舞い戻ってくるのであった。
近くまで『黄雀』の接近を許したヌーだが、全く焦らずに腕を組んだまま笑みを浮かべている。
――そしてお返しとばかりに今度は『黄雀』が攻撃を放った。
その攻撃は幾度となく敵を葬ってきた絶大な力を持った神通力と呼べる程の恐ろしい『呪詛』であった。
あの『妖魔退魔師』の『カヤ』を一瞬で止めてみせたその恐るべき『呪詛』が大魔王『ヌー』に襲い掛かる。
――しかし。
「残念だったなぁ。そんなモン全く効かねぇよ、ゴミ屑!」
「そ、そん……なっ、ばっ……!?」
『そんな馬鹿な』と叫ぼうした『黄雀』だったが、再びヌーに手を翳された瞬間に『黒い球体』が出現して、そのまま驚いた顔を浮かべていた『黄雀』は呑み込まれてしまうのだった。
「くたばりやがれっ!!」
――魔神域魔法、『禍』。
先程の『魔神域』の魔法とは違って、今度こそ大魔王『ヌー』の全力の『魔神域魔法』によって『黄雀』は完全にこの世から消し去られてしまうのだった。
「クックックック! 馬鹿めが! これ程までに俺の『魔力』が上がっているという事は、同様に『耐魔力』もこれまでとは比べもんにならねぇほど上がっているという事だ。てめぇ如きの矮小な『魔力』でもう、俺をどうこう出来るわけがねぇだろうが!」
これまで『特務』を含めた『妖魔退魔師』達を苦しめてきたランク『8』の『黄雀』だったが、別世界の大魔王である『ヌー』の手によって、あっさりとこの世から葬られてしまうのであった――。
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