1376.王連の放つ風
※加筆修正を行いました。
スオウは上空から一方的に攻撃を行う『王連』から逃れるために『加護の森』を縦横無尽に駆けて避けに徹していたが、やがて何かを決心したようでその足を止めるのだった。
「カッカッカ! どうやら観念したか人間?」
そう口にする王連だったが、それでも地上へ降りてくるつもりはないようで、空に留まったままで勝ち誇ったような笑みを浮かべるのだった。
「うーん……。俺が思っていたより、君は気が長く用心深い性格のようだからね。このまま受けに回っていても君は地上に降りてくる様子はなさそうだし、作戦を変える事にしたんだよ」
「ほう? 八方塞がりになって観念したものだと思ったが、他にも何かいい案が残されていたという事かね? カッカッカ! 作戦でも案でも何でもよいが、考えがあるのならば試してみるがよいぞ? 儂は人間達のその切羽詰まった状況下での行動に興味があるのだ! 是非儂が驚くような作戦を期待するぞ」
王連は本当にそう思っているのか、それとも追い詰められた人間の戯言だと思って煽るようにそう口にしているのか。
そのどちらとも取れるような言い方でスオウに告げると、最初に得の刀に纏わせたように『瑠璃』のオーラを自身の身体に纏わせ始めるのだった。
「ふむ。その青色の光を纏う妖魔退魔師はこれまでも多く見てきたが、結局は儂には通じずに敗れ去っていったぞ? それがお主の奥の手だというのであれば、少しばかり興が削がれるというモノだが……」
スオウの言う作戦とやらが、単に自身の能力を一時的に高めて放つ一撃で勝機を見出そうとしているのであれば、それは少しばかり期待外れだと言いたげな表情を浮かべる。
そして王連は『風』を生み出そうと考えているのか『羽団扇』に再び魔力を灯し始めるのだった。
対するスオウは王連が『羽団扇』に魔力を費やしているのを見て、『瑠璃』を身体に纏った状態で動かずに相手の出方を窺っている。
どうやらスオウは王連が再び『風』を巻き起こすのを動かずに待っている様子であった。
王連は自身の『言葉』にも『羽団扇』に魔力を費やしている『行動』にもスオウが反応をしないのを見て、何かあると勘づいてはいるが、それでも何も出来はしないだろうという考えを踏まえた上で何かを行うのであれば、それはそれで構わないと考えて『魔力』を込め続ける。
そしてどうやらこれまでより、更に強力な一撃を見舞おうとしているようで『王連』もまた、この一撃で決めてしまおうと考えているようであった。
やがて『羽団扇』に魔力を込め終わったのか、大天狗『王連』は目下の存在に向けて羽団扇を振り切った――。
「これまでの『風』とは思わぬ事だ。何処へ逃げようとも確実に仕留めてやるぞ人間!」
新たに『魔力』を込めなおした王連の『風』は確かに先程までスオウを追いかけていた風とは違うようで、大きなうねりをみせた竜巻状態へと変貌を遂げていく。
あの『ケイノト』の門前での戦闘時に見せたような『竜巻』規模の風がスオウを吞み込もうと襲い掛かっていった。
「凄いね。こんな風を自由自在に生み出したり、狙って放つ事が出来るのならば、確かに君たち天狗は『神』の領域に住まう存在だと認めざるを得ないよ」
スオウは感嘆の声をあげながら自身に向かってくる風を見て、そう独り言ちるのだった。
「カッカッカ! そんな悠長な事を呟いていていいのかね? まぁどんなに足掻こうともう遅いのは確かだが」
確かに王連の言う通りに今放たれた竜巻状となっている風は、先程までの追い立てるような突風の比ではない。
いくら速く移動を行える妖魔退魔師という人間達でも間に合わないだろうという程の自然の暴風速度で、誰が見てもあと僅かでスオウは空高く上空へ巻き上げられていくだろうと予測させられる。
「確かにもう避ける事はかなわないだろうね……」
スオウは冷静に迫りくる竜巻をみながらそう口にしたが、やがてその直ぐ後に『王連』の風に吞み込まれてしまうのだった。
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