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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1370/2225

1353.ランク8に至る妖魔の存在感

※加筆修正を行いました。

「な、何だこの重圧は……」


 カヤの居る部隊の隊士が驚きの声を上げると同時、カヤを含めた他の隊士も『重圧』を放つ存在が近づいてくるのを感じ取った。


「こ、これは……。妖魔でしょうか? ど、どうも私には妖魔召士ではないように感じられますが」


 『特務』の隊士としてミスズに鍛えられた『カヤ』だが、元々は地方に配属されていた予備群の隊士であり、それなりに現場で妖魔と戦ってきた経験や実績も持っているが、そんな彼女であってもこれ程までの重圧を一度も感じたことがなかった。


 つまりは此処に向かってきているのが妖魔なのであれば、地方で遭遇するような低ランクの者ではないということだろう。


「『妖魔召士』ではない事を祈るがな。まぁ『妖魔』であっても困る事には変わりはないが、こんな威圧を放つ『妖魔召士』が相手ならば、尚の事厄介だからな……」


 カヤにそう言って聞かせる二組の隊士もまた、カヤと同様に脂汗をかいている。


 戦力値では『特務』所属のカヤよりも上の『二組』の幹部の筈だが、やはり彼であってもこの重苦しい程の『威圧』を放っている存在は脅威と感じているようであった。


「どうやらもう来るようだぞ、お前ら構えろ!」


 ――そしてカヤのグループのもう一人の男が刀を構えながらそう告げると同時だった。


 前方の空から件の『重圧』の正体の存在が、少し赤みがかった茶色の羽を生やした背の高い人型の妖魔が、羽搏かせながら、恐ろしい速度で地上へと降りて来るのであった。


 その瞬間――。


 その場に居たカヤ達全員は現れた妖魔の姿を見た瞬間に、何かよく分からないものが正面から自分の背中を通り過ぎて行ったのを感じた。


 『殺気』や『殺意』というモノを向けられた時に近いのだが、それとは何処か明確に違うモノ。


 ――生死の境を彷徨う瞬間というものが明確に表す時があるとするならば、まさにこの時のようなものかもしれない。


 これまでの彼らの生涯で実際に感じたことがないのだから、比較することも出来ないし、その通りだと認めることも出来ない。


 しかし、分かっている事はこの『人型』を取っている赤茶色の羽を生やした『妖魔』は、これまでの対峙してきた『妖魔』達とはまるで違うという事であった。


 ――そして彼らの感じた感覚は間違ってはいない。


 この妖魔の名前は『黄雀』。


 あの『天狗』の『王連』と同じ妖魔ランク『8』にして、この『ノックス』の世界の『妖魔』達の住処とされる『妖魔山』の奥深くに生息していた『大妖魔』である。


「お主らが『主』の言っていた妖魔退魔師達だな?」


 ギロリとその目で睨まれた『カヤ』達は、その瞬間に戦いなどなりはしないと明確に悟った。

 この妖魔は単に妖魔退魔師なのかと聞いて来ただけに過ぎないが、その視線を向けられただけで、他の妖魔達から『殺意』や『殺気』を向けられて襲い掛かられた時よりも遥かに恐ろしさを感じた。


 そして『カヤ』達は本能でこの場から離れる事を最優先に考えた。


 決して今の人数の戦力で、戦っていい相手ではない。ここで無理をして戦うという選択肢は勇敢でも何でもない。


 ――そんな行為を選ぶ事はただの自殺志願である。


「こ、ここは一時撤退を!」


 カヤは自分よりも上の立場に居る『二組』の隊士のグループの幹部達が何かを指示する前に、こうする事が一番正しいと思ってそう号令をかけるのだった。


「あ、ああ! カヤ隊士の言う通りだ! お前ら、散らばって後続達の居る場所へ向かうぞ! 妖魔召士が待ち受けていたとしても、ここでたった三人でこんな奴と戦うよりはまだ勝率は残されている!」


 カヤの言葉はとても理に適っていると感じた『二組』の隊士がそう指示を下すと、全員が頷いてその場から離れようと駆け始めた。


 どうやらこの場に居る『妖魔退魔師』全員が、その決断こそが正しいと感じたのだろう。


 『妖魔退魔師』が全力でその場から離れようと動き出した瞬間に『黄雀(こうじゃく)』は自分の言葉を無視されただけではなく、勝手に逃げようとした妖魔退魔師達に苛立ちを見せるのだった。


 この『黄雀』の奥底に宿る一つの感情。それが呼び起こされるかの如く、怨嗟の声が吐き出されたと同時にこの場から離れようとしていた『カヤ』達の足が止められて動けなくなった。


(なっ!? う、動かない!)


(ば、かな……、ただ恐怖で足が竦んでいるだけじゃない。よ、よく分からないが俺の意思とは関係なく足が動かん!)


(そ、そんな!)


「お前達のような半人前の妖魔退魔師達では動く事もままならぬだろうて。悪いが少しの間はそうやって動かずにいろ。別に俺はお前達を殺したいわけじゃないしな。主が決断を下すまで時間を稼げればそれでよいのだ。だが、無理に動こうとはするなよ? 殺したいわけではないが、別に殺さないとは申してはいないからな」


 目の前の恐ろしい『重圧』を放っている存在はそう言うと、もうカヤ達の方に視線を向けてはおらず、別のところを見ていた。


 どうやらこの妖魔はもう『カヤ』達のことなど眼中になく、自分達の後の場所に続いていた『サシャ』副組長達の居るグループの方に意識を向け始めたという事だろう。


 先程この妖魔が口にした通り、本当に『カヤ』達を殺すつもりはないのだろう。ただ時間を稼げればそれでいいと本当に考えていて、逃げ出そうとしたりしなければ何もするつもりはないようである。


 自分は死なずに済むのだと頭に過った瞬間に『安堵』する『カヤ』だったが、そう考えたと同時に信じられない程の情けなさと、惨めさが襲うのだった。


 ――そしてどうやら『カヤ』が考えていた事と同じことを他の妖魔退魔師達も考えていたのだろう。


 カヤが断固たる決意を持って必死に動こうと考えるよりも先に、他の『二組』の隊士達の決意が勝ったようで、何と恐怖心からか動けなくなっていた彼らはその感情を乗り越えて、一気に刀に『瑠璃』のオーラを纏わせて『この妖魔を討伐する』という明確な意思を持って、立ち向かおうと視線を向けて駆け出そうとした。


 ミスズ直々に鍛えられた『特務』所属の『カヤ』より先に動けた『二組』の隊士達は、流石は幹部といったところだろう。


 カヤが自分より先に動いた先輩の妖魔退魔師を頼もしく思って、自分も続こうとした瞬間だった――。


 ――だから動くなといっただろうが。


 その妖魔の声が『カヤ』の耳に入ったと同時、先に動き出して攻撃しようと意思を示した二人の『妖魔退魔師』の首が同時に吹き飛ぶのであった。


「え」


 『黄雀(こうじゃく)』はその場から動いていなかったが、視線を別の場所から動き出そうとした『妖魔退魔師』に向けた瞬間に、カヤ以外の先に動いた妖魔退魔師全員が絶命してしまうのであった――。


 ……

 ……

 ……

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