1338.慌て始めるヒュウガ一派
※加筆修正を行いました。
妖魔召士達の管理している『加護の森』ではあるが、実際にはこれまで『退魔組』が管理しており『退魔組』の『特別退魔士』達が張っている『結界』が今も残されていたが、その『退魔組』自体を『ヒュウガ』の新たな組織が取り込んだ事によって、この森で今後起きる情報は一切外に漏れ出る事はなくなった。
その上で今回『最上位妖魔召士』である『ヒュウガ』が新たに張った結界によって、イダラマと同様に『他の最上位妖魔召士』達からも居場所を隠せるようになった筈であった。
――しかしそんな『加護の森』に多くの『妖魔退魔師』が入り込んで来た事が『退魔組』の『結界』によって、情報として『ヒュウガ』の元に届けられるのだった。
「キクゾウ。これは一体どういう事ですか?」
絶対に自分達の居場所がばれる事はなくなったと判断した途端に、一気に何処から現れたのか『妖魔退魔師』の組織の者達が入り込んできたことに、ヒュウガは訝しそうに眉を寄せながら側近の妖魔召士である『キクゾウ』に尋ねるのだった。
「わ、私にも何が何だか……! まだ『ケイノト』を見張らせている私の『式』からの報告もありませんし、戦いをまだ終わらせていないのか『ジンゼン』達も戻ってきておりませんので、一体全体どうなっているかさっぱりで……」
キクゾウはヒュウガの圧に押されて布で汗を拭いながら、そう言葉を返すのであった。
それもその筈、ヒュウガと共にこの『加護の森』にきたのだから、何も分からないのは彼も当然なのである。
こればかりは流石に責められても困るというのが彼の本音だろう。
「ジンゼンも王連も何をやっているのですか! わざわざこの私がお膳立てて『煌鴟梟』の連中まで使って『キョウカ』組長を引き離してやったというのに、残った隊士を片付けるのにどれだけ時間を要しているというのです……! それに貴方の『黄雀』はちゃんと『退魔組』のイツキにこの場所を伝えたのでしょうね!?」
ヒュウガは激昂しながら明確に頭領の『サテツ』ではなく、頭領補佐の『イツキ』を名指しで告げるのだった。
「そ、それは間違いない筈です! 門前で襲撃を起こす前に伝え終えておりますので! そ、それに今この『加護の森』に入り込んで来た者達の魔力を感知するに、キョウカ殿や門前に居た隊士達の魔力とも違います。それに何やら感じた事のない『魔力』も数人おりますし、こちらは何やら『妖魔召士』でもなさそうで……」
「馬鹿にしているのですか! 貴方に言われなくても『魔力』を感知する事はこの私にもできます。だから私が聞きたいのは、何故『結界』で居場所を隠した我々の元に続々とよく分からない輩を連れて『妖魔退魔師』達が入り込んで来たのか、その情報を得たいと申しているのですよ!」
「も、申し訳ありません! も、もう少しお待ちください! 森に忍ばせている私の『式』がもうすぐ情報を届けにやってくると思われますので、そ、それまで、お、お待ちください!」
キクゾウはヒュウガの言葉遣いが明確に変わり、声を荒げ始めたのを見て、慌てて安心させるようにそう告げるのだった。
「これはまずい事になりましたよ。多く森に入り込んできた連中の中には、あの『ミスズ』殿の魔力も感じられます。それにあの剣才の『スオウ』殿も居るようですし、間違いなく奴らはここに私が居るという情報を掴んでここにやってきている事でしょう! そうでなければ『組長格』だけではなく『副総長』までもが来るはずがありません!」
完全な計画を立てたとほくそ笑んでいたばかりのヒュウガだったが、あっさりとそれが覆されて嘲笑うかの如く、妖魔退魔師達が現れ始めた事で、彼は冷静さを欠きながら慌て始めるのだった。
彼はあくまで『妖魔退魔師』と直接やり合うことなく、今のゲンロクの里に居る『妖魔召士』達に襲撃を掛けて、多くの妖魔召士をヒュウガの新組織に取り込み、そしてあの『イツキ』という天才とそのイツキと多くの繋がりを持つ『煌鴟梟』の信奉者達を使って、裏から『ノックス』の世界を牛耳り、いずれは妖魔退魔師と真っ向から戦争が出来る程の『力』を得ようと考えていたヒュウガだったが――。
その計画がもう少しで成るという一歩手前の状態で、その計画が破綻仕掛けるのを感じて慌てているのであった。
(何処で我々の情報がばれた? ケイノトの『退魔組』を我々が頼るというところまでは辿り着かれるとは思っていたが、ここに我々が居るというところまでは、そう簡単には辿り着けない筈だ。物量作戦で至る場所に人を派遣して一斉捜索を行ったというのであればまだ理解は出来るが、副総長と組長を含めた最高幹部がこの森に一気に集まるというのは、流石に情報が漏れたとしか考えられない。何かばれた明確な理由がある筈だ……!)
ヒュウガは腕を組みながら、うろうろと同じ場所をグルグルと周りながら思考を続けるが、冷静さを欠いて焦っている今の彼では答えには辿り着かないだろう。
まさかの事態に『ヒュウガ』もそのヒュウガの様子を見た、側近や部下達も見て分かる程に焦り始めるのだった。
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