1324.ソフィVSイツキ
※加筆修正を行いました。
急にイツキの纏っていた『オーラ』である『金色』と『青』の両方の色が消えたかと思えば、ソフィはイツキの『魔力』を感知出来なくなった。
イツキが魔力を隠蔽したとかそういうワケではなく、単に可視化出来る程の膨大な『魔力』を消したからである。
ソフィは最初これから『エルシス』と同じオーラの体現をしてみせたイツキと、素晴らしい戦闘が行えると思っていたのだが、その気持ちに水を差されたような気分となって不機嫌さを露わにしていたが、その後の『イツキ』の集中している様子を見て、戦闘自体そのものをやめるつもりはなさそうだと判断してソフィ自身のオーラは解除しなかった。
そしてそのソフィの直感通りに、イツキから再び『魔力』を感知出来るようになるソフィであったが、しかしその感知したイツキの魔力は先程までいた場所からではなかった。
いつの間に移動したのかイツキは、ユウゲという『退魔組』に所属する退魔士の隣から、一瞬の内にソフィの背後に立っていた。
イツキは完全に虚を突いてソフィの背後を取ったというのに、その目の前の存在は明確に自分の位置を理解していたかのように振り返ってきたことに多少の驚きを見せたが、そのまま構わずに防御を行うには態勢が不十分だと思えたソフィに対して、全力で殴り飛ばそうと右手に『魔力』を付与させながら振りかぶった。
あの僅かな一瞬の間に完全に消えていた筈の『オーラ』は全身に纏われていて、更にはその振りかぶっている右手はソフィ達の世界では『淡い青』と呼ばれる『浅葱色』ではなく『天色』が纏われていた。
今のイツキは『退魔組』の単なる『上位退魔士』の実力ではない。あの『エルシス』が苦労の末に、数十秒間だけ得られた『魔神級』の『力』と同義の『二色の併用』の力を身に纏っているようである。
――戦力値にして『6000億』を下回ることはないであろうその拳の一撃である。
イツキはひとまずこの一発を試金石にして、自身と同じオーラを纏っているソフィの力量を確かめようとする。この相手の態勢であれば、まず間違いなく無条件で一発は入るだろうが、そのダメージがどれ程のものかで今後の対応が変わってくるからである。
「クックック! 成程! お主は虚仮脅しではないと証明してみせてくれたわけだな? 僅か一瞬とはいっても我の目を欺いて背後にまわってみせたのだ」
――ならば何も遠慮は要らぬな。
ソフィの口角が歪な程に吊り上がり嬉しそうに笑うその表情は、まさに悪魔の様相であった。
そしてソフィは右手に『鮮やかな青』を形成付与させると、確実に入る筈であったイツキの振り下ろされた右拳を下から合わせて思いきり突き上げる。
――ドゴンッという衝撃音。
到底拳と拳がぶつかり合った音とは思えぬその音が周囲に響いたかと思うと、先に手を出していたイツキの右手は、グルンと一回転するように後ろへ弾かれる。
「ちっ……!」
ソフィの合わされた拳の一撃によって、自分の肩の関節が外れそうになる感覚が伝わったイツキは、ソフィの下から斜め上へと放たれた一方の運動エネルギーに逆らわずに従い、自らも同じ方向へダメージを流すために後ろへ思いきり自分から跳ぶ。
そして跳びながらも左手で自分の右腕の脇の下から肩を握るように触り、そのまま強引に右肩の外れた関節を戻すために揉みほぐすように握ったままで、真上に伸ばして固定させてこつんと叩く。
イツキは肩を無理やりにはめ直す痛みに軽く片目を閉じて堪えるが、あっさりと整復してみせると、ぐるりと右腕を一回転させながらそのまま地面に着地した後、直ぐにその場から再び姿を消して見せる。
音もなく完全に消えたように見えるが、ソフィの『魔力感知』からは『魔法』でも使わなければ逃れることは出来ない。
正確にイツキが移動した先へと先回りをするようにソフィも動きを見せると、イツキが先程から遠く離れた裏路地で姿を見せた瞬間に、ソフィが今度は真後ろからイツキに襲い掛かる。
ソフィの集約された『二色の併用』の拳を何とか両腕をクロスにさせてイツキは防御に成功するが、そのままずざざっと地面を思いきり引きずるように後退りをさせられるが、更にそのイツキを追従してくるソフィは、思いきり跳び蹴りを放って、イツキを後方へ思いきり吹き飛ばすのであった。
「クックック! うむ。よくぞ今のを凌いで見せた。では次は先程の何倍程の威力でいこうか? よし、お主が耐える程にその倍ずつ強めて行くというのはどうだ!? ふははは!」
ソフィの攻撃によって吹っ飛ばされたイツキは、空き家となっている連なる長屋の壁を突き破りながら顔を歪めるが、視線を前に戻すと恐ろしい程までに愉悦に顔を歪めた悪魔のような存在が、自分に向かって更に追い打ちをしようと、彼もまた邪魔な壁を手で殴り飛ばして破壊しながら迫ってくる。
「お、おいおい! マジで何なんだよコイツ!」
吹っ飛ばされながらもソフィの言葉を聴いていたイツキだが、先程の一撃ですら未だに両腕が麻痺して痺れているというのに、今度は先程よりも更に強くいくと告げられて、イツキから余裕が少しずつ失わされていくのであった。
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