1307.遂に認識され始めた退魔組のイツキ
※加筆修正を行いました。
ヒノエから説明された『イツキ』という男の持つ『力』の内容の数々は、先程の『煌鴟梟』という『影響力』を持つ人材が多く集わせたことと同等かそれ以上の驚きをミスズ達に齎すのだった。
中でもヒノエが語った内容の中に出てきた『金色』の湯気という言葉は、これまで『煌鴟梟』の内容を聞いても平然と頷いていたシゲンすらも眉を寄せて険しくさせるのだった。
「き、金色の湯気?」
シゲンが驚いているのと同様にミスズもどうやら思い当たることがあったのか、反芻させるようにその言葉を口にするのだった。
「ええ。コイツが言うには『金色』で間違いねぇようなんですが、もしかすると私らが使う『天色』や『瑠璃』のような戦闘時に纏わせるアレのことなのかと思ったんで一応伝えておこうと……。それで一度は妖魔団を率いていた『紅羽』にやられそうになったそうなんですが、サイヨウ殿とサイヨウ殿が連れていた俺達と同じ妖魔退魔師の護衛を目の当たりにした後に、再び『紅羽』と戦い勝利をしたってコイツが口にしたんですよ。史実だとサイヨウ殿が奴らを討伐したってことになってますから、よく出来た作り話だと感心したもんです」
はははと笑うヒノエと、どうやらまだ信用していなかったのかとばかりに、サノスケがヒノエに非難をするような目を送っているのを眺めながらミスズとシゲンは先程の『金色』の湯気のことを考えていた。
シゲン達にとっては『妖魔団の乱』を率いていた『紅羽』をイツキが倒したということも勿論驚くに値する出来事ではあるのだが、それ以上に最初の『金色』の湯気を使っていたという話の方が驚きが強かったようである。
(まさか金色の体現者が、同じ時代に二人目も出現していたとはな。どういう者かまだ存ぜぬが、可能ならばソフィ殿と同様に手を結んでおきたいところだが、果たしてどうなるかな)
総長シゲンは胸中でそう呟くのだった。
そしてもう一人『金色』の言葉に興味を示した副総長ミスズの方は『妖魔召士』の里にソフィの『魔法』で飛んだ時のことが思い出されていた。
(ヒノエ組長の告げた『金色』の湯気とは、ゲンロク殿の里の入り口で『結界』を壊そうとなされた『ヌー』殿が纏っていた『金色』の湯気と同一のものと考えてもいいでしょう。ソフィ殿やヌー殿が使うモノは更に別の『紅』や『青』も用いていたようですが、どうやらそのイツキという男も使えるということでしょうね。それにその効果は実際に見てみないと分からないモノではありますが『特務』の私の建物内でソフィ殿と手合わせをした時に彼程の力を有する方でも戦闘中に使っていた程の技法ですから『金色』の技法は決して侮れるモノではないでしょう。どうやらそのイツキという男には私も直接会う必要性が出てきたということでしょうね)
ミスズはズレ落ちてくる眼鏡をくいっと上げながら、静かに胸中でそう決断をするのであった。
……
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『ケイノト』でミヤジと合流しようとしていたイツキは、自分の預かり知らないところでひた隠しにしてきた素性が、一番隠しておきたいと考えていた『ノックス』の世界に大きな『影響力』を持つ『妖魔退魔師』組織の総長と副総長にバレてしまったのであった。
それもイツキが信用している数少ない人間であった『サノスケ』から、情報を漏らされたことなどこの時の彼は夢にも思っていないだろう。
そんな彼は町中で避難をしようとしている者達の悲鳴を聴きながら、平然と口笛を吹いて自分の長屋で待つミヤジの元へと向かうのであった。
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そしてヒノエから報告を受けている『シゲン』達の居る『サカダイ』の本部に、新たに重要な情報を届けるべく一体の鬼人の『妖魔』が近づいてくるのを『サカダイ』の町を守っていた一の門の見張りの妖魔退魔師衆が発見すると、直ぐにその妖魔退魔師衆の指示によって、一の門に本部付けの予備群と妖魔退魔師衆が続々と集められるのだった。
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