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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1315/2220

1298.変わったのは、抱いていた常識だけではなく

※加筆修正を行いました。

 サテツが『加護の森』へと向かった頃。

 妖魔召士の里でゲンロクやエイジ達と今後のことを取り決め終えたソフィ達が、再び『サカダイ』にある『妖魔退魔師』の本部がある建物へと『高等移動呪文(アポイント)』を使って戻ってきた。


 まさにひとっ飛びという言葉がしっくりとくる程の移動に、またもやミスズは一度目の時と同様に目をキラキラさせていた。


「私はこのままシゲン総長に報告に向かいますが、ソフィさん達は『本部内』で寛いで下さっていて構いませんよ」


「そのことなのだがな、ミスズ殿。出来れば我らの人数分が使える一部屋を貸してもらえると助かるのだが」


「え? は、はあ……。それは構いませんが、ソフィさん達は私達妖魔退魔師と協力関係を結んだのですから、自由になさって下さって構いませんよ?」


「うむ。それは大変ありがたいことなのだが、やはり我々は『妖魔退魔師』ではない外部の者であるからな。まだ事情を詳しく知らない者が居れば、その者達からの好奇な目を向けられるのを避けておきたいのだ」


 やんわりとは伝えられては居るだろうが、やはりこの前の『大広間』や『会議室』のような場所で、ちらちらと見られながら会話をするのは避けたいと考えるソフィであった。


「確かに貴方の言う通りです。ソフィさん達はもう私の中で勝手に『妖魔退魔師』の仲間と考えてしまっていました……。そこまで考えが及ばず申し訳ありませんでした」


 そう言って深々とミスズはソフィに頭を下げてきた。どうやら彼女の中では無意識に、ソフィのことを『妖魔退魔師』の仲間と思える程の()()()()()を置いていたらしい。


 初見では輪をかけて他者を疑うミスズではあるが、一度信用を得た相手には『仲間』として接するのが彼女の性格のようであった。


「クックック。ミスズ殿にそう言ってもらえるならば、こちらにとっては大変喜ばしいものだ。こちらこそ勝手なことを言ってすまなかった」


「いえいえ。それではお部屋を案内します。また何かあればそちらに伺いますので、よろしくお願いします」


「うむ」


 …………


 ミスズに案内してもらえた部屋は想像以上に広い部屋であった。


 ソフィの他に『ヌー』『テア』『セルバス』と全員で四人いるのだが、その部屋は『大広間』とまではいわないが、旅籠町の屯所の部屋を二つ分ほどくっつけたような広さがあった。


「ここまで広い部屋ではなくともよかったのだがな」


 ソフィはミスズに用意された部屋の中を歩きながら見渡してそう口にする。


「まぁ広い分にはいいじゃねぇか。これに酒が常備されていたら完璧だったんだがな」


 そう言ってその場に座って寛ぎ始めるヌーだった。


 テアもきょろきょろと辺りを見回していたが、ヌーが座ったところの近くに身を寄せて座るのだった。ソフィはそれを見て本当に仲が良い二人だと頷いて見せる。


 他の者達が思い思いに寛ぎ始める中で『セルバス』だけが立ったままで、何かを考える素振りを見せていた。


「どうかしたのか?」


 どうもその様子が気に掛かったソフィは、セルバスに声を掛けた。


「ああ、旦那。いや、シグレ殿は大丈夫だろうかと考えていたんです」


 どうやらセルバスは余程に『シグレ』を心配している様子であった。彼女が『コウゾウ』を相当に信頼していることは『煌鴟梟(こうしきょう)』のアジトに向かう前から、戻って来たあとの様子を見ていれば誰でも容易に想像が出来る。そんな信頼する『コウゾウ』が突然居なくなったのだから、あれ程取り乱すのも無理はない。


 相当にシグレを気に入って、どうやら一人の女性として好いているセルバスは、今のシグレが気に掛かってどうしようもない程に落ち着かないのだろう。


「確かに。まさか我らが去ったあの後にコウゾウ殿が命を落とすとは思わなんだな……」


「そのコウゾウって野郎は、確かに俺の目から見ていても、そんなあっさりとやられるタマには見えなかったが、どうやらその直接手を掛けた連中ってのは、どうやら相当厄介な連中なんだろうな」


 部屋の中で寝そべり始めたヌーは、ソフィとセルバスの会話の中に入ってくるなりそう告げるのだった。


「この世界に居る者達は妖魔とやらもそうだが、人間達も素晴らしい『力』を有しておるようだからな。我は『リディア』に『ラルフ』といった才能溢れる人間を見た時に、別世界に跳ばされてきてよかったと感じたモノだが、それはこの世界にきたことでも再び感じておる」


 アレルバレルの世界にも『エルシス』という類まれなる『力』を持った人間はいたが、その後の数千年は『エルシス』に匹敵するような人間をソフィは見る事が出来なかった。


 しかし一つ『世界』というモノが変われば、こうまで常識が変わるのだとソフィは改めて『別世界』というモノの侮れなさを痛感したようであった。


「ふんっ! しかし……、まぁなんだ。この世界の人間は確かに侮れねぇな? お前が昔から人間を褒め称えるような口ぶりをしていたのは知っていたが、俺がこの世界で人間から感じたようなことを、てめぇがその『エルシス』って野郎から感じていたのならば、確かに気持ちは分かるし、認めざるを得ないだろうな」


 ヌーは無意識に口にしたのだろうが、自分の抱いていた思いを撤回してソフィの気持ちが分かると告げたことで、やはりここでもソフィとセルバスは互いに顔を合わせながら驚くのであった。


 互いにもうヌーが変わってきていたことを理解していたために、ここで口に出して揶揄(からか)うような真似はしないが、それでも変わり過ぎだろうとばかりに、互いに笑みを向けながら頷くのだった。

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