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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1284.底知れぬ大天狗の強さ

※加筆修正を行いました。

 キョウカは高い木の枝に身を置きながら、こちらへゆっくりと近づいてくる王連を観察する。


(直接あの天狗の拳を受けてみたけれど、どうやら『瑠璃(るり)』を纏っている今の私には大したダメージはない。つまりアイツの攻撃力自体は上位の『鬼人』や『妖狐』と同程度でしかなく、そこまで警戒に値する程じゃない。しかしそれらを踏まえてもあの何の前触れもなく私の動きを封じ込めた『不思議な力』だけは侮れない……)


 鬼人族の女王と呼ばれる『紅羽(くれは)』や『空狐(くうこ)』と呼ばれる妖狐達を従えていた『朱火』も前時代の妖魔退魔師や妖魔召士達が曰く『不思議な技法を用いられて、一筋縄ではいかない妖魔』と結論付けていた。


 『妖魔団の乱』を束ねていた鬼人女王『紅羽(くれは)』や、空狐と呼ばれる妖狐達の上位の存在である『朱火(あけび)』もまた、この大天狗『王連』と同じような神通力を有していたらしく、相対することがあれば何やら色々と対処をとらなくてはならないと前時代の妖魔退魔師達が言っていたのを思い出すキョウカだったが、その頃の彼女は『ミスズ』の観察を優先していたためにそんな妖魔達の話に興味を示さずに詳しくは聞いていなかった。


(こんなことになるのならあの時、もっと先輩達の話に耳を傾けておくべきだったかしら?)


 今更後悔をしたところで後の祭りではあるが、確かにランクが『7』を上回る妖魔達は例外なく、妖魔ランク『7』に届いていない妖魔達とは違った『異質』な力が備わっているというのは間違いないらしい。


 大天狗の『王連』と直に戦ったことでキョウカは、ようやく根本の部分からこの事に理解を示し始めるのだった。


(私の属する妖魔退魔師という組織が設立されてから、相当に長い歴史を持つ。それこそ五年、十年という短い歴史ではなく、遡れば数百年という規模になるというのに今目の前に居る『王連』とやらが使っている『不思議な力』に関しては、ほとんど何も情報が入ってきてはいない。それはつまり実際に私のように直に戦った者達や、そんな者達から話を聞かされた者達を含めても、結局は詳しいことは何も分からなかったということなのだろう……)


 彼らの祖先の人間達が生きていた時代から妖魔退魔師という組織は存在している。そんな時代の妖魔退魔師と今の妖魔退魔師では、積み重ねられてきた戦闘の『技術』に差があるのは否めないことではあるが、それでもこれだけの長い歴史を積み重ねてきてさえ『不思議な技法を使う妖魔達は、一筋縄ではいかない』という情報しかないのである。


 キョウカが先輩達から詳しく対処法とやらを聞いていなかったことを踏まえても、大々的に妖魔退魔師組織からの指導がこれまでなかった事を考えれば結局は『焼け石に水』だっただろう。


 そう考えられる理由の一つにランク『7』以上である様子の『王連』は、妖魔退魔師『三組組長』である『キョウカ』をもってしても強敵だと認められる程の存在であったことが挙げられる。


 そしてその対処法を伝えようとしていた前時代に活躍していた妖魔退魔師の先輩達は、今の一つの組を束ねる程の最高幹部となった『キョウカ』には強さという点では到底及ばない者達である。


 ――つまり妖魔退魔師の先輩達の対処法というのはあくまで『逃げるための算段』の部類であったのだろうと、簡単に想像がつくのであった。


「! ま、まずい!」


 高い木の枝の上からゆっくりと近づいてきていた王連を視界に入れて、物思いに耽っていたキョウカは、突然に大きな声をあげながら意識を戻す。


 何とキョウカの視線の先にすでに戦闘を行える体力も魔力も残っていない筈のヒサトが、ゆっくりと前を歩いていく王連を背後から忍び寄って、攻撃を加えようと接近しているところが見えたのであった。


「と、殺ったぁ!」


 彼とて妖魔退魔師『三組副組長』という役を持つ大幹部である。戦力値では優に4000億を越える剣豪であり、相手がランク『7』の大妖魔であっても、隙を見せて油断をしている背後から首を斬り落とせば勝てると踏んだのだろうが、しかしそれでも普段の彼であればこの場面で斬りかかるという選択肢を取ることはなかっただろう。


 どうやら敬愛するキョウカの顔を殴られて、吹っ飛ばされたのが相当に頭にきていたのだろう。その上でやぶれかぶれではなく、明確に隙をついて攻撃をしたようであった――。


 ――しかし。


「カッカッカ! 青いな人間」


 音もなく忍び寄って来た筈のヒサトの存在に、あっさりと気づいていた王連は振り向き様に羽団扇を持つ手で、思いきり刀の持つヒサトの手を思いきり叩いて刀の切先を強引に変えてみせた。


 そしてそのままヒサトの刀を躱して見せた後に、王連はその煌々と周囲を照らす程の光を放ち続ける『羽団扇』をヒサトに向けて思いきり振り切るのであった。


 轟轟とけたたましい音を響かせながら、激しい風が突如吹き荒れたかと思うと、ヒサトはそのまま吹き飛ばされていくのであった。


「ぐぁっ!!」


 目を開けていられない程の突風に曝されながら、ヒサトは木に思いきり叩きつけられて意識を失った。


「ヒサト!!」


 すでに王連に襲い掛かっていった瞬間には、高い木の枝の上から飛び降りてきていたキョウカは、そのまま恐るべき速度で駆け寄ってきていた。


「カッカッカ! お主ら人間は思慮が浅い! 何処まで力を突き詰めようともお主らに根底にその甘さがある限り、それこそが命取りとなるのだ!」


 そして王連もまたヒサトという隊士を攻撃すれば、キョウカを釣る事が出来ると踏んでいたのだろう。前もって用意していた『魔力』を羽団扇に込めながら、肉薄してくるキョウカに向けて新たに『風』を放つのであった――。

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