1281.とある不利を克服しているキョウカ
※加筆修正を行いました。
竜巻状態の『風』に巻き込まれて空へ巻き上げられているキョウカだが、ぐるぐると身体を回されている状態であっても両手両足を広げながら刀を持つ手を強く握りしめて、何かを待つようにじっと『王連』を睨み続けていた。
そして待ちかねていたモノがようやく来たとばかりに、王連が羽団扇に『魔力』を灯して今度は『直接』王連の近距離で空に吹き飛ばされているキョウカを目掛けて『魔力』が込められた『風』をぶつけられるのだった。
キョウカはその暴力的な『風』の勢いを前にして、確かに『にやり』と笑うのだった――。
王連は確実に仕留めたと確信を持ちながら、既に自分の手から離れた新たに巻き起こした『風』の指向の先、別の『風』によって身体を竜巻の内側へと囚われている『キョウカ』の顔を見るのだった。
先程の一件でこの女は弱みを他人に見せる事はしない性格なのだという事を深く理解していた『王連』だが、流石にこの絶体絶命の状況であれば観念をして目を瞑って諦めるか、そうでなくても険しい表情をしながら後悔をしているだろうと予想をしていた。
――だが、彼が見つめる先に居る妖魔退魔師『三組組長』、隻眼の『キョウカ』は何と嬉しそうな笑みを浮かべて、王連を見ていたのであった。
「な、何……?」
流石にそんな表情をしている意図が分からない王連だが、どうにもキョウカという妖魔退魔師の気が触れているとはとても思えずに妖魔としての本能か、はたまたこれまでの妖魔退魔師と戦い続けてきたことによる『経験』とそこから派生する道理上に辿れる『思索』の到達点が頭を過った結果なのか。
そこまでは王連をもってしても問われてしまえば回答に窮する話ではあったが、分かったことはこのまま楽観してこの場で見ているだけという選択をとることは、彼にとって最も愚かで取るべき選択肢ではないという判断であった――。
そして直ぐに王連はこの場に居る事は危険だと本能で察して、背中の羽の代わりに羽団扇を振りかざして、風の勢いを用いて一気に、キョウカの直線上から逃れる一手を講じるのであった。
――その王連が行動を示した一手は、咄嗟の判断としては流石と言えた。
何とキョウカは竜巻の中という不明瞭な運動エネルギーに左右されないように、広げていた両手を使ってまるで自分という存在を支点に置き換えて、王連という場所が居る一定の場所だけを正確に測るかの如く手を伸ばして王連を視界に落とし込むと、一定の慣性力とそれに値する速度を頭に形として記憶していく。
そしてキョウカは頭の中で連想したモノが上手く合致したようで、もう両手を広げる必要性がなくなったのか、その両手の先は自分の得の刀へと再び移動していく。
そしてぎゅっと両手掴んだかと思うと『瑠璃』の色をした『青のオーラ』を刀に宿らせた後に、大きく息を吸い込んだ。
台風の目というべき『風』の中心点、その直線上に居る『王連』に向けて『キョウカ』は思いきり『風』の遠心力に沿うように刀を水平に構えながら大きく息を吐いた――。
次の瞬間、王連の居た場所を信じられない衝撃波が突き抜けて行った。
「なっ!?」
咄嗟の判断で動いた王連は自分の思い付きの行動を盛大に褒めたい気分に陥りながら、足場もない空の上でどうやってあれほどの溜めの衝撃波の一撃を刀で出したのか分からずに目を丸くして、恐ろしい衝撃波が見えなくなるまで見続けるのであった。
そして自分の放った衝撃波の反動の影響で後ろへと思いきり吹き飛ばされたキョウカは、見事に王連の『風』から抜け出したが、今度は想像を絶する高さの空の上で頭から真っ逆さまに地面に向かって落ちて行く。
このままでは頭から地面に激突してしまうが、そのキョウカは全くといっていい程に焦る事もなく、空の上で落ちながら回避を行ってみせた『王連』を自分と戦うに値する『強敵』と認めて口角を吊り上げて恐ろしい笑みを浮かべた。
そのまま持っている刀をあっさりと空から投げ捨てるように手放すと、今度は腰に差している刀に手を伸ばして再びその小刀と言える程の短い腰刀に『青』を宿らせて、地面に向けて思いきり刀を振り切った。
ばしゅっという音と共に再び衝撃波が地面に向けて放たれたかと思うと、態勢がクルリと入れ替わって空の上で見事に態勢を元に戻す事に成功するキョウカであった。
しかし今も尚、地面に向けて落下していることには変わりはないが、もうキョウカは自分が地面に激突しても構わないと判断しているのか、一切そちらを見向きもせずに回避を行った強敵である『王連』の位置を頭に叩き込むように睨み続けて落ちて行った。
「カッカッカ! どうやらアヤツという人間には、空の上は不利という常識は通じないらしいな。天晴なモノだ」
片目を眼帯で閉じられている『隻眼』の女は恐ろしい笑顔を王連に向けながら落ちて行き、やがて『瑠璃』に包まれたキョウカはそのまま地面に見事に着地するのであった。
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