1278.探求心を満たす者
※加筆修正を行いました。
空から新たに現れた妖魔退魔師の存在に冷静に分析をするかの如く『王連』は『キョウカ』を観察し続けていた。
元々『妖魔山』の中でも更に奥地で生活を行う天狗達だが、その中でも『王連』は大天狗と呼ばれており、同胞達の中でも一目置かれる存在であった。そんな彼が何故『妖魔召士』と呼ばれる人間達と契約を交わして『使役』される立場を受け入れたのか――。
――彼は人間に対して非常に興味を持っている妖魔であった。
しかしそれは人間そのものを好んでいるという意味ではなく、人間達が危機に瀕した時や追い詰められた時に見せる力に対して王連は深い関心を寄せているのであった。
普通の人間では考えられない程の長い時の中を生きて来た『王連』は、これまでの人間という種そのものが培ってきた歴史に身を寄せるようにして、時には身を削りながら戦いを行ったり、時には人間を他の妖魔と戦う時に一助を担って活路を切り開く助けをしながら、どう時代時代のその時に生きる人間達が、苦難を乗り越えて行くかを見届けたりしながら知識の見聞を広めてきたが、彼にとってはまだその探求の行く末の到達点と思わしき場所には届いておらず、納得するにはその『人間』ともっと深い繋がりを持つことが最善なのだろうという結論に至ったというわけである。
人間達の間では『火事場の馬鹿力』ということわざがあるが、王連からすればその『ここぞ』という時に出る力は、本来その『個』となる人間が、潜在的に宿している力を危機が迫った時に開放して出せている『力』」なのか、それともその危機という差し迫った時にだけ人間の個人が出す力ではなく、人間という『種』そのものが持つ不思議な力というモノが大っぴらに『種』となる人間を生かす為に『個』が持ち得ぬ力を『個』に与えられているのか、はたまた種族や個人とは関係のない何らかの土地的な影響、この『ノックス』の世界における人類に対しての結びつきが影響を及ぼして『王連』をもって不可解だと思わせた『力』が体現されたのか。
――王連はそれが気になって仕方がないのである。
他の天狗と呼ばれる妖魔達も例外なく聡明で『知』に優れた生き物ではあるが、この『王連』程までに探求の為に人間と契約を行って『式』となることを善しとするのも珍しいことであった。
(儂の大事な背の羽を斬って見せた人間も、あの木々を上手く活用してこの儂すらも予想だにせぬ動きで見事な動きを見せてくれた。願わくばあの人間が最後に地面に落ちて行く時に更なる不思議な力を出せるのかどうか、それを見定めたかったモノだが……。しかしあの新たに現れた妖魔退魔師は『ケイの都』におった連中共より更に『力』を持つ者のようだ。そうであるならば、この場にあの片目の人間が現れてくれたことは儂にとっては願ってもない事かもしれぬ)
王連はヒサトという人間があの絶体絶命の状況から、自分の力だけで逃れられるのかどうかを確かめて見たかったが、ここにキョウカというヒサト達よりもずっと強そうな人間が現れたことで、その人間を今度は研究材料として、さらに自身の探求心を満たす存在に期待感を寄せるのであった。
「お主。そんな身の丈にあっておらぬような仰々しい得物を構えているが、上手く扱えるのかね?」
空からゆっくりと下りてきた『王連』は、青のオーラを纏わせたキョウカの刀を見ながらそう口にするのだった。
「貴方にそんな心配される筋合いはないわね。それより他人の心配より自分の心配をしたほうがいいわよ? 私は大事な組員に手を出した貴方達を一切許すつもりはないからね」
「カッカッカ! 妖魔退魔師と呼ばれる組織に居る人間の女子はいつの世になっても変わらず強気なものだ。やはりお主達は自分の強さを理解しているからこそ、そんなに強気でいられるのかね? やはり元々強いと自負する者こそが、刹那と呼べる僅かな時の中で絶する力を抱くことが出来ておるのやもしれぬな。つまりは奇想天外な力を見せる者というのは、元から何か自信がある力を抱いておるというのが肝要なのか? いやいや尽きぬ。何処までいってもこの命題に興味は尽きぬものよな」
天狗が突然自分に話しかけてきたかと思えば、勝手に訳の分からない事を宣いながら自問自答を行っている為に、キョウカは訝しそうに眉を寄せるのであった。
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