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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1280/2235

1263.妖魔殺しに定評のある一組組長

※加筆修正を行いました。

「ここが『煌鴟梟(こうしきょう)』の組織だった者達が居る座敷牢です」


 そう言って予備群の男は、先程の部屋と同じ通りの一つ手前の牢前の扉の(かんぬき)を外すと扉を開ける。


 扉が開かれると仕切り代わりに大きな襖がまず目に入った。その襖を男が開けると、元々は旅籠である為に広さは申し分なく、畳敷きの床の上に無理矢理作ったであろう木造の座敷牢があり、そのくすんだ牢の格子戸の隙間から『煌鴟梟』の組員だったのであろう男達が数人程こちらを睨んでいるのが見えた。


「座敷牢の中に居る連中は手や足を縛っているわけではないですし、猿轡や目隠しもしておりませんので、牢付近に近づく時はお気を付けください」


 普段通りに注意事項を述べる予備群達だが、中に入っている者達がたとえ自由に動ける状態で暴れたとしても、ここに居るのは自分達護衛隊よりも戦力を有する『妖魔退魔師』の最高幹部達であるため、何も心配をせずにあくまで形式上の説明を行った様子であった。


 予備群の護衛隊がヒノエに説明を行っている間にも牢の中に居る煌鴟梟の男達は、ヒノエを品定めするように、ヒノエの胸元や太ももあたりを見てぺろりと舌なめずりをしていたり、牢の格子戸から届くわけもないのに、必死にヒノエを触ろうと手を出している者も居た。


「……なんだぁ? えらいべっぴんさんを連れてきたじゃねぇか? へへっ、何か俺達に喋らせようと()()()でも取りにきたのか?」


 強面の男がそう言いながら下卑た笑い声を上げると、他の連中もその男に合わせるように笑い始めた。


「てめぇら……!」


「まぁ待ちなって」


「は、はい……」


 予備群の男が勝手な事を言った男に注意をしようと一歩前に出ようとしたが、ヒノエがそれを手で制止するのだった。


 そして牢の隙間から男がヒノエに向けて手を伸ばしてきた瞬間、ヒノエは自分の腰に差している刀を一瞬の間に鞘から抜き去ると、その抜き身の刀を器用に隙間から伸ばして来た男の手の距離を目線で正確に測りながら縦に振り上げた。


「えっ――?」


 下卑た笑みを浮かべていた男の腕の先が切り落とされたと同時、その手の断面から血が流れ続けているのを見て恐ろしい笑みを浮かべながらヒノエは、そのまま牢を思いきり蹴り飛ばした。


 牢の隙間から多くの煌鴟梟の男たちが手を伸ばしていたが、そのヒノエの蹴りで全員が後ろへと後退った。中にはその蹴りの余りの勢いにビビって地面に転がる男も居るのだった。


「う、うわああ! な、何をしやがるぅうっ!?」


 突然自分の腕を切り落とされてしまった男は、脂汗を大量に流しながら流れ出る血を止めようともう片方の手で必死におさえ始めた。


「うるせぇ! 黙らねぇと今度はその首を斬り落とすぞコラァッ!!」


 ぎゃあぎゃあと喚いていた男は、そのヒノエの恫喝で静かになるのだった。


 完全に牢の中の連中が大人しくなるのを見計らった後、ヒノエは再び静かに声を出した。


「私は『妖魔退魔師』組織に属する『一組』の組長『ヒノエ』だ。てめぇらに聞きたい事があってここに来た。黙って私の質問に正直に答えねぇと、全員この場で斬り落とすからよろしくな?」


「よ、妖魔退魔師の……、くっ、組長!?」


「ひ、ヒノエってあの妖魔殺しのヒノエかよ……、な、何故、こ、こんなところに?」


「……妖魔退魔師だと?」


 広い牢の中で数人が一斉に声を上げる。この牢の中に居る者達は、全員が妖魔退魔師ヒノエの事を知っていたようだった。そして目の前の女がヒノエと認識した瞬間に、この場に居る煌鴟梟の残党達の全員が逆らう気が完全に失われるのだった。


 それもその筈であった。ここに彼らを閉じ込めている護衛隊の予備群達でさえ、複数人で襲い掛かっても勝ち目がないというのに『妖魔退魔師』はそんな予備群が束になっても勝ち目がないのである。そして目の前に居るこの女性はそんな『妖魔退魔師』達を束ねる組長である。


 それでもまだ逆らう胆力を持って傾ける者が居れば大したものであったが、流石にこの場には居なかったようである。


 ヒノエは牢の中に居る者達を一通り見渡すが、その中に一人驚いた表情は浮かべているが、怯えを見せていない男が居るのを発見する。


 次の瞬間、ヒノエは座敷牢の外側から番いになっている閂錠を強引に外すと、またもやその牢を思いきり蹴り飛ばす。


「「う、うわああ!!」」


 完全にヒノエから離れて壁際に移動をしていた罪人達だが、そのヒノエが牢の施錠を外しながらその座敷牢の内側に入って来ると、必死に一箇所に固まるようにヒノエから離れて行くのだった。


 ――そんな中、最初から全く同じ場所でヒノエを見ていた一人の男の元に、ヒノエは近づいていくのであった。

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