1252.遂に出現するランク7の大天狗
※加筆修正を行いました。
ランク『6』の『野槌』がやられた事で、残った妖魔退魔師にトドメを刺そうと考えていた妖魔召士達は、一様に動きを止めてこの場の指揮官にヒュウガから任命された『ジンゼン』の方を見る。
視線を向けられた『ジンゼン』はそちらを意識せずに口元に手をやりながら考え込んでいた。
(あのヒサトとかいう妖魔退魔師が仲間を救出しに自ら『野槌』の体内へと入り込んだ時は、所詮は名ばかりの副組長だと思ったが、実際に仲間を助け出して『野槌』の中から戻ってきて見せるとは……。やはり妖魔退魔師組織で上の役職を任せられている存在を前に『魔力』の温存を考える事は危険な事かもしれぬ)
ようやく妖魔召士側に居る指揮官の『ジンゼン』も、相手側の妖魔退魔師の指揮官『ヒサト』が考えたように、侮ったり温存をして余裕を持って戦える相手では無いと理解したようである。
結局のところ『妖魔退魔師』と『妖魔召士』の両組織は、これまで妖魔を相手にしながら生き残る事が出来て来た歴史が証明する力ある組織の存在なのだという事を改めて、この場に居る両組織の指揮官は理解を示したという事であった。
時代によって多少の差は確かにあるのだろうが、これまで妖魔退魔師も妖魔召士も先人達が残して来た戦う術や技法に伴う技術、それらは脈々と受け継がれて当代まで来ているのである。
そこに侮っていい因子など一つも存在はしていなかったのだ――。
(ヒュウガ様の仰られた通りだった。私は何を勘違いをしていたのだ? ヒュウガ様は全力で相手をしろと仰られていた。それは単に力の差を見せつけろという意味ではなく、そうしなければいけない相手なのだと暗に示して頂いていたのだ。それを私は何様のつもりで『魔力』の『温存』をしようとしていたのだ……!)
それは妖魔退魔師という相手だけではなく、決して侮ってはいけないぞと、信じてついて来た筈のヒュウガという男に対しても侮辱するような真似をしていたのだと『ジンゼン』は悟るのだった。
(ここからは貴方が言っていた通り、私の持ち得る全てを出し切って見せます! そして貴方に改めて謝罪をします!)
ジンゼンはここで起きた詳細とそこでようやく気付けた事をヒュウガに聞いてもらった上で、その後に命令に背いて自分の稚拙で勝手な行動を取った事に対しての謝罪を聞き入れてもらおうと決心をするのであった。
そしてジンゼンは『契約紙帳』から彼の持つ『式』の中で最高の存在が書かれた一枚の『式札』を懐から取り出すと、その場へ投げるのだった――。
――ぼんっ! という音と共に式札から妖魔が出現する。
その出て来た妖魔の存在は、使役者であるジンゼンがまるで子供に見える程の大男の存在だった。
鳥の嘴のような顔をしているその大男は、ジンゼンに使役されてこの場に姿を現すと同時に周囲を見渡し始める。
「んん? ここは『ケイの都』の前か。また懐かしい場所で儂を呼び出したものだな?」
ケイノトの事をかつての『ノックス』の世界の呼び方で『ケイの都』と呼ぶその大男は天狗の『王連』。
――過去の名立たる妖魔召士達によって、ランク『7』と定められた存在にして、高ランクとされるランク『6』までの妖魔達とは、また一線を画す程の力と魔力を持つ大妖魔の存在であった。
「あ、ああ……! ヒュウガ様の重要な作戦を行使している最中でな、妖魔退魔師の幹部達を相手にしなければならないのだ。お前の力を貸してもらいたいのだ!」
王連を使役したジンゼンは返事をしながらも、先程までの『野槌』を出していた時とは比べ物にならない程の早さで、自身の魔力がどんどんと消費していく感覚を味わっていた。
数字上ではランク『6』とランク『7』の間にはたった1しか差はないが、実際に契約をしている者にしてみれば、その1は海よりも深い程の差があるのだった。
下位や中位階級の妖魔召士達ではたった一回の戦闘で、それも他に術式や魔瞳などに魔力を費やしていない状態であっても、僅か数秒の間に魔力が枯渇して生命力を継ぎ足さなければいけない程の魔力を消費させられるだろう。
つまりは『上位妖魔召士』程の魔力を有していなければ、ランク『7』級である『王連』という天狗を『式』になど絶対に出来ないという事の証左であった。
「カッカッカ! 『山』でもない場所で『妖魔退魔師』を相手に戦わされるか! お主ら人間は実に面白いな? 同じ人間同士で儂を使って殺し合わせるとは、本当に面白い!」
「は、はは……、そ、そうか。お、面白い……か?」
何が面白いのかジンゼンには分からなかったが、余程に愉快そうに機嫌良く笑う『王連』に口を挟まずに愛想笑いを浮かべるジンゼンであった。
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