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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1219/2220

1202.気になる二人組

※加筆修正を行いました。

 猫背でやや背が高く痩せ細った白髪交じりの男と、その後ろを付き従うように歩いている若い青年の二人組が『ケイノト』の町へと入っていく。ケイノトの周辺で何かを見張る様に見ていた左目に眼帯をつけている女性が目聡く視線で追いかけていた。


「妙ね……」


 その隻眼の女性は背に長い野太刀を背負いながら、静かにそう言葉を漏らした。


 ――彼女の名は『キョウカ』。妖魔退魔師(ようまたいまし)の最高幹部の一人で三組の組長である。


「どうかなさいましたか?」


 この場にそのキョウカともう一人居た、目を覆い隠す程に長いボサボサの髪が印象的な男が、何やら睨むようにケイノトの町に視線を送っていた『キョウカ』に何があったのかと声を掛ける。


 キョウカに声を掛けた男の名は『ヒサト』。同じく妖魔退魔師に属する組員にして、キョウカ組長の右腕として三組の副組長の座に居る男であった。


「貴方と合流するまでの期間、ここをずっと見張っていたのだけれど、あの門番があんなにすんなりと中へ通すところを見たのは、あの二人組だけだったのね? だから私はここから姿が見えなくなるまでずっとあの二人組を観察していたのだけれど、一見商人のような恰好をしている癖に手荷物なども何も持っていない。何よりあの二人の歩行速度は常に一定、会話等も何もせずにまるで決められた行動を行うように歩いていった」


 ヒサトは自分の組の信頼する女組長の言葉を聞いて、ガシガシと頭を掻き始めて溜息を吐いた。


「キョウカ組長。いつもの高尚なご趣味の人間観察もいいですけど、今は任務に集中して下さい」


 部下の言葉に視線を二人組の男が入っていった『ケイノト』の町の方から、自分の信用している部下の方へと向けたキョウカ組長は、心外だとばかりに口を尖らせた。


「もう、分かっているわよ。確か貴方の話じゃ会合に姿を見せなかった『ヒュウガ』殿の一派がこちらに向かっている可能性があるのだったわね?」


「こほっ、こほっ……。厳密に言えば俺じゃなくて、副総長の話ですけどね」


 青白い顔をしながらヒサトは、咳き込みながらキョウカの言葉を訂正するようにそう告げた。


「ミスズが貴方を私の所に向かわせた事を考えると、まず間違いなくその『ヒュウガ』っていう妖魔召士はここに姿を見せるでしょうからね。でも貴方が来る前から見張っているけれど、紅い狩衣を着ている者どころか、諜報員の連中すらここを通っていないのよね」


 そう言いながらも体調の悪そうなヒサトの背中を擦ってあげていた。


「今日の分の薬はもう飲んだのでしょう? 怪しい奴が来たら起こしてあげるから、少し休んでいなさいよ」


「すみません……、もう大丈夫です。それより『退魔組』の方はどうなっていますか?」


「そっちの方もうちの組員が交代で見張っている。でも確かに報告によれば、今この町には『特別退魔士』が任務をそっちのけで全員戻ってきているらしいのよね。きっと何かやろうとしているのは間違いないわね」


「会合の時の様子では、ゲンロク殿は『退魔組』の事には何も関わっていない様子でした。どうやら全て現場を預かっている『サテツ』殿か、そのサテツ殿に指示を出しているであろう何者かが居るのでしょうね」


 その何者かが『ヒュウガ』だろうという事は、ヒサトもキョウカも察しながら会話を交わすのだった。


「ひとまず次の交代時の報告を待ちましょう。それまでここを通る者は全員の顔を覚えるくらいのつもりでいくわよ」


「やっぱり休んでていいですか?」


「……馬鹿」


 そこで二人の会話は途切れて、少しケイノトから離れた場所から門の方の観察を続けるキョウカ達であった。


 ……

 ……

 ……


「どうやらバレずに町の中へは入れたようだな」


「みたいっすけど、あの隻眼の方の女は俺達を疑ってたみたいっすよ? このまま退魔組に向かったら間違いなく怪しまれると思うんですけど」


「ああ。このままは流石にまずいだろうな」


「どうするんですか?」


「まぁ待て……。今は何も言わずに俺の後ろをついて来い」


 互いに視線を前に向けたまま小声で話している為に、周囲からは会話を行っているようには見えない。そして商人の恰好をしている二人は、ケイノトの町の退魔組がある場所まで到着したが、そのままトウジは一度だけ周囲を見渡すと、足を止めずにそのまま『退魔組』の建物の前を通り過ぎていくのであった。


(裏路地の方から『退魔組』の門前を見ているものが数人居るな。どうやら門周辺で見張っていた妖魔退魔師の連中の一味だろう)


 トウジはやはりそう上手くは行かないかとばかりに溜息を吐くと、少し傾斜が急な坂道が続く道へと曲がって入り、そこで大人しくついてきているミヤジの方へ視線を送るのであった。

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