1193.脅威となる最上位クラスの妖魔召士
※加筆修正を行いました。
「それでヒュウガ達の事なのだが、先程エイジが言っていた通りランク『7』以上となる妖魔と契約を行っているのは、ヒュウガの片腕である『キクゾウ』、そして天狗を『式』にしておる『ジンゼン』の両名だけの筈だ」
先程までエイジと口喧嘩を行っていたゲンロクだったが、どうやらソフィが仲を取り持った事で直ぐにエイジとゲンロクは和解を行い、ミスズに脅威となるランク帯の妖魔を『式』にしているヒュウガ一派の契約している者達の名を挙げるのであった。
「キクゾウ殿とジンゼン殿だけですか? 私はヒュウガ殿が妖魔と戦うところを直接見た事はありませんでしたが、こちらの組織でいえば私と同じ副総長という立場に居た者だったのでしょう?」
ヒュウガ一派の『ジンゼン』が天狗の『王連』を『式』にしているという事は、妖魔退魔師の組織の間でも話題にあがる程であったが、妖魔召士の組織で最高幹部であった筈のヒュウガの話題はあまり聞いた事がなかった。その為にミスズは謂わばヒュウガの『式』を尋ねる意味でこの質問を行ったのだが、結局返って来た言葉に一番重要なヒュウガの『式』の事がなかった為に、つい本音を口に出してしまうのであった。
「ヒュウガも『式』自体は有しておるが、此処に居るエイジと同じく自らの『魔力』のみに徹して戦う妖魔召士でな。そこまで目立った高ランクの妖魔を『式』にはしては居ない筈だ」
ミスズはその話を聞いた瞬間、ほんの僅かな時間ではあったが顔を顰めて見せた。それを見逃さないソフィとエイジであったが、特に言及をせずに話は続けられるのであった。
「なるほど。それにしても『黄雀』に『天狗』ですか……。今後彼らが向かいそうな場所や、潜伏している可能性のある場所等、何か思い当たる節はありませんか?」
「あやつらはお主ら妖魔退魔師からも狙われると理解しながらも『旅籠町』の予備群達を襲い収監されておる仲間を助けた。奴らの狙いや目的までは分からぬが、仲間を増やそうと企んでいる事は間違いないだろう。そして次に奴らの仲間になりそうな者達が居る場所となれば……」
「やはり『ケイノト』でしょうか?」
エイジの話を聞いたミスズは直ぐに言葉を返す。どうやらミスズの読み通りに事が運んでいるようである。既にケイノトの町には三組の組長である『キョウカ』を派遣しており、更にはその三組の副組長である『ヒサト』も前回のこの里で行われた会合の後、ケイノトへ向かわせては居る。しかしランク『7』以上の妖魔を『式』にしている上位妖魔召士数名と、更には『式』に頼らず本人の『魔力』のみで戦える最上位クラスの妖魔召士が相手ともなれば、キョウカ達だけでは対処が出来ないかもしれない。
(今の時代の妖魔召士で、目の前に居るゲンロクやエイジ殿以外にも『式』に頼らずに戦える妖魔召士が居るとなると話が変わって来る……)
ランク『7』の妖魔が相手であっても三組の組長である『キョウカ』が居ればそこまで問題はないだろうが、そこに『ケイノト』の退魔組の連中がヒュウガ一派と繋がっているのだとした上で、ヒュウガの力量が『前時代の妖魔召士』程の力量を有していると仮定するならば、流石にキョウカといえども分が悪い。
妖魔召士は『式』に頼る事で戦力自体はそこまで昔と変わらず在り続けているが、妖魔召士の『魔力』の質自体は昔程ではなく『魔瞳』や簡単な『捉術』程度に気をつければ、身一つで昔から今に至るまで戦い続けて『技』を極め続けようとしている『妖魔退魔師』には決して届かないと断言出来る。しかしそれはあくまで『上位』の枠組みに居る妖魔召士達ならばの話である。
もしもヒュウガが『式』に頼らずとも自分自身だけで戦えると自負する程の『魔力』を有していて、それが紛う事無き『最上位』クラスであったとするならば話は変わって来る。前時代の妖魔退魔師組織の者達であっても、『最上位』の妖魔召士、『シギン』殿や『サイヨウ』殿とは対立する事を避けていた程で、今の時代まで両組織が対立しなかったのも裏を返せば『最上位』の妖魔召士達の存在があったからこそと言えるだろう。
『式』や『禁術』とされる技法も厄介で決して侮れない力ではあるとは思うが、それでも『最上位』の妖魔召士が束になってこられた方が面倒この上無いとミスズは考えるのであった。
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