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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1188.ミスズの微笑み

※加筆修正を行いました。

「ヌー殿。気に掛けてもらって感謝する……が、小生は『妖魔召士(ようましょうし)』から外れた人間だからな。真の意味で彼らにとっての小生は、仲間というわけではないから仕方のない事なのだ。今この里に居るのもゲンロクが次の候補者を見つけるまでの間、その繋ぎとして留まっているだけに過ぎぬ」


「そうかよ。てめぇも世知辛い世の中に生きてるって事だな」


「彼らも余裕が無いという事だ……。しかし驚いたぞ、ソフィ殿達が『妖魔退魔師(ようまたいまし)』のミスズ殿と共にこの里に訪れるとはな」


 ミスズは単なる妖魔退魔師の隊士ではなく、その妖魔退魔師を導く立場に居る副総長である。最高幹部の指揮官を連れて共に行動をしているという事だけでも驚く事だが、副総長ミスズという人間は妖魔召士から見れば、気難しく敵に回す事だけは避けたいと考えられている人間の一人である。そんな風に思われているミスズであるが、どうやらこの場に居るその副総長殿にはその気難しさは微塵も感じられなかった。そう見えるのが、まるで隊士の仲間と共に居るようにソフィ殿の横についている姿をこうしてみているからであろうか。


(どうやらミスズ殿は相当にソフィ殿に気を許しているようだ。しかし今の『妖魔召士』の組織に居る者達の大半は信じられないだろうが、小生はミスズ殿の気持ちを理解出来る。ソフィ殿は別世界から来ている人間ですらない『魔族』という種族らしいが、不義理を貫く馬鹿な人間共よりもよっぽど信用に値する『魔族』だ)


 ケイノトの町からサカダイの町まで行動を共にした妖魔召士エイジは、大魔王ソフィの品性や性質はとても好ましく思えていたようで、ミスズの気持ちは理解が出来ると感じるのであった。


「ふふっ」


 エイジがそんな風に考えていると、まるでエイジの心の中を透かされたかのように、ミスズは明確にエイジの目を見て微笑みかけるのだった。


(いや、それでもやはりミスズ殿のこういうところは苦手だ。どうも小生は好まぬ)


 全てを見透かすような『貴方の考えている事は何でも分かっていますよ』と言っているように思わせる視線を見せるミスズに、心の中を必死に読ませないとばかりに、視線を外しながらそう考えるエイジであった。


「一度立ち寄ったところには直ぐに向かえるとソフィ殿が仰られた為に、急ぎの用事がこの里にある私を運んでもらって頂いたのですよエイジ殿」


「成程。どうやらその急ぎの用事とは相当に重要な内容のようだな」


「ええ……。事と次第によっては再び、前回の取り決めを全て破棄して頂かなくてはならない。またうちの『妖魔退魔師』組織と、貴方がた『妖魔召士』組織とで武力衝突が行われる可能性が出て来るかもしれません」


 笑みを消したミスズは静かに眼鏡をあげながらエイジを見上げて来るのだった。


(一体何があったかは知らぬが、ミスズ殿の様子がさっきまでとはまるで違う。これはゲンロクも小生もまた大変な事に巻き込まれそうだな)


 先程まで前回あった時の副総長殿に見えていたエイジだったが、どうやら今の彼女は内に秘める思いをひた隠しにしていただけで、本心では相当に小生達妖魔召士にやんごとなき事情があるようだとエイジは察して、気を引き締め直すのであった。


「分かった。諸々の事情は中でゆっくりと聞かせてもらおう。それではゲンロクの元に案内する」


「お願いしますね、エイジ殿」


 にこりと微笑みかけるミスズを見たエイジは()()()殿()()()()()()()()()()()()()()と感じながらも、決して何も言わずにそのまま踵を返して、元来た道を歩いて行くのであった。


 ……

 ……

 ……


「くそっ!使者も寄こさずに妖魔退魔師が我らの里で勝手な真似を……!」


「おい、ちょっとは落ち着けよ。ミスズ殿も火急の用件だと言っていたじゃないか」


 エイジが姿を見せた後にあの場から去った妖魔召士達だが、実際にはその場から離れず彼らの聴覚が機能するぎりぎりの距離の茂みの中でこっそりと様子を窺っていたのであった。


「それにしてもエイジ殿もエイジ殿だよな。勝手に組織から離れておいて、今更戻って来てまだうちの幹部のつもりでいやがるし」


「おい、お前もやめておけよ。エイジ殿は『シギン』様の代の功労者である『サイヨウ』様の唯一の弟子で、エイジ殿も前時代では相当にうちに貢献されたお人だぞ?」


「前時代は前時代だろ。現体制になってからはろくに働いてねぇか。そんな奴に偉ぶられて納得できるかよ!」


「おい、やめとけって」


 去り際にエイジを睨みつけていた一番若い『妖魔召士』の彼は、ヒュウガ派でもイダラマ一派でもなく、ゲンロクを長とするこの組織の一員ではあったが、自分達が苦労していた時代に組織を離れていたエイジを仲間とは思えずに、急に戻って来たかと思えば幹部だった時の態度で接してきている為に、腹に据えかねる思いがあったのだろう。


 今はまだ『ヒュウガ』派の者達が『ゲンロク』派に対して抱いているような、明確な敵意などを抱いては居ない様子だが『ゲンロク』派の中の者達も『エイジ』や、そのエイジを擁護する同じ『ゲンロク』派の間であまり良くない印象を抱きつつある状況である。


 しかしその事を既に知っているエイジ自身も特に何かをしようする動きも見せず、またゲンロク派の穏健を好む者達もわざわざ荒波を立てたくはないと判断しているようで、火種が燻ぶり始めているのを理解しながらも見過ごそうとしているようであった。

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