1173.シグレの苦い回想
※加筆修正を行いました。
「貴方に色々と説明を行って頂きたいのですが、ソフィ殿の『魔瞳』による影響は問題なさそうですか?」
シグレは尋問を行っていた『妖魔召士』達を相手に暴れた後、ソフィの『魔瞳』によって意識を失わされた後、この部屋に運ばれていた。ミスズは『妖魔召士』の『魔瞳』の効力は理解しているが、魔族と呼ばれる種族の『魔瞳』の効力を経験した事がなく影響がどれ程残っているのか分からない為、シグレがしっかりと意識を取り戻し物事をしっかりと考える事と受け答えが可能なのかどうかをシグレ本人に聞いたようである。
「は、はい……。今はもう意識もしっかりとしていますし、妖魔召士達の使う『魔瞳』とは違って『魔力』が乱されて気分が悪いといった症状もないようです」
ミスズはソフィ達の『魔瞳』だけではなく、妖魔召士達の『魔瞳』も実際にその身に受けた事はないが、これまで妖魔召士達が妖魔達に使ってきた『魔瞳』から省みて『魔瞳』を受けた者は『魔力』がかき乱された影響からか、酩酊状態になっているようにフラフラとし始めて、辛そうにしている所を見たことがある為、もしかするとシグレも現在そうなっているのではないかと心配したが、どうやら特に問題はなさそうに見えた。
「…そうですか、分かりました。それでは説明を行っていただきますが、そもそもここに来た理由を貴方の口から教えて頂けますか?」
ある程度の事はスオウを通して説明を受けているミスズだが、実際に本人に最初から確認を取りたい様子であった。そしてシグレは何処から話をしたモノかと考え始める。
『煌鴟梟』のアジトで『妖魔召士』を捕縛した事は間諜を放っているであろう『妖魔退魔師』の本部に伝わっているとは思うが、どこまでをミスズが把握しているか分からない為、まずは捕縛した二名の『妖魔召士』の事から話す事から始めた方がいいのかと、悩んでいる姿をミスズに見せるのだった。
「『コウゾウ』からの書簡はソフィ殿を通して受け取っています。ですので、ソフィ殿が旅籠町を去った後の事を話をして頂けますか?」
シグレが何から話せばいいかと悩んでいると、ミスズはそう言って話して欲しい内容を明確にしてくれるのだった。
「は、はい。ソフィ殿がここ『サカダイ』に向けて旅籠町を発った後、隊長も本部へ報告へ向かう為に準備を始められたのですが、その時に今後は『煌鴟梟』が壊滅して、旅籠町を悩ませていた人攫いの問題も解消されるだろうから、そろそろ本部に戻ろうと思うと私に仰られたのです」
(そこから話をしてくれるのね。それならばそれで私が個人的に聞きたい事でもあるし、ココは黙って聞きましょう)
スオウの報告にあった『妖魔召士』の襲撃から説明をしてくれるのだろうと思っていたミスズだが、シグレは先程のミスズの言葉をそのまま受けて、ソフィ殿が旅籠町を離れた直後から話を始めたのだった。しかしシグレから気になる言葉が出た事でそのまま口を挟まずに、シグレが話をしやすい様に頷きを挟んでその先を促せる。
「その時に今回の事はいい機会だからと隊長は、私に『隊長』の座を譲ろうと思うと仰られたのです」
「元々『特務』の決定では貴方を『旅籠町』の隊長にするつもりだったところなのだけれど、コウゾウが旅籠町の事態を重くみて自分を派遣させて欲しいと私に強く言ってきたのよ。そこで私が許可を出して貴方の代わりにコウゾウを隊長にしたのだけれど、その旅籠町を悩ませていた組織……『煌鴟梟』だったかしら? その煌鴟梟の幹部連中を捕縛出来た事でコウゾウは、もう貴方に任せても何とかしてくれるだろうと判断したのでしょうね」
「はい……。副総長の仰る通りだと思います」
シグレはコウゾウ隊長がどこまで書簡に纏めていたのかを預かり知らないが、どうやらあの妖魔召士達が来る直前までの事であれば、既に情報は集まっているのだろうと判断して、本題であるあの憎き妖魔召士達の話をミスズにする決意を固める。
「本部に戻る準備を終えた隊長は、もうすぐ見納めだからと私の代わりに町の見回りの仕事を代わって頂いたのですが、その時丁度この旅籠町に紅い狩衣を着た男たちが現れたのです……」
「その妖魔召士は『ヒュウガ』と呼ばれていなかったかしら?」
シグレが妖魔召士の事を口にするや否や、ミスズは被せるように早口で妖魔召士の名前を出して来た為、慌てて当時の事を必死に思い出そうとするのだった。
「すみません。現れた妖魔召士達は複数人で建物の外にも妖魔召士は居たようですが、私は押し入られた妖魔召士数名達と交戦になってしまい、名前まではちょっと……」
(成程。見回りに出ていたコウゾウの元に複数人の妖魔召士が現れて、この屯所の建物に部下数人を入らせて、その命令を出した者が妖魔召士の代表格で、コウゾウの相手をしていたという事ね)
シグレの話す内容と照らし合わせながら、憶測ではあるが少しずつ当時の現場内容を構築していく。全体像はまだハッキリとはまだ見えていないが、過去の会合に居合わせていたヒュウガとその派閥の人間達と、里に居なかった妖魔召士達の人数を考慮して、少しずつ欠片を拾い集めて一枚の絵を完成させていくミスズであった。
「この屯所にはソフィ殿に『結界』を張って頂いていましたので、妖魔召士達の『魔力』は封じられていたようで、我々予備群の隊士達だけでも最初は押していたのですが、その中の私と戦っていた妖魔召士が屯所の奥へと逃亡を図ったために、私が後を追っていったのですがそこで捕縛する寸前に、懐から一枚の札を出されたかと思うと『背中から羽を生やした嘴が印象的な大男の妖魔』が使役されて、私はそこで不甲斐ないのですが、その妖魔にあっさりと打ち負かされて気を失ってしまいました……」
そのやられた時の事を思い出したのだろう。ミスズに説明を行いながらシグレは、途中から非常に悔しそうな表情を浮かべるのであった。
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