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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1141.動向を確かめる一手

※加筆修正を行いました。

「今だ……っ! 行くぞ!」


 露店商たちはシゲンに向けて棚やら商品をぶちまけた後、シゲンの方を振り返る事もせずに散り散りに走って逃げ始めた。


 そして倒れて来る大きな棚がシゲンに当たる直前にようやく、シゲンの身体は自由を取り戻したようで、シゲンは視線を向かって来る棚に向けると軽く右手で受け止めた。


「大丈夫ですか? 総長」


「……ああ、問題はない」


 心配そうに駆け寄ってきたミスズがシゲンに声を掛けるが、どうやら何とも無い様子に安心した顔を見せると、ミスズは直ぐに後ろを追ってきたヒノエ達に向けて命令を下す。


「直ぐに奴らを取り押さえなさい、一人も逃すな!」


「「応!」」


 ミスズの命令を聞いた『ヒノエ』や『妖魔退魔師(ようまたいまし)』達は、直ぐに恐ろしい速度で逃げた露店主達を追いかけて行った。


「ミスズ、奴らはどうやら一介の『妖魔召士(ようましょうし)』ではないらしい」


「どうやらそのようですね。捕えて詳しく確かめなければ分かりませんが、少なくとも総長の動きを数秒止める事が出来ているところをみるに、最低でも上位クラスで間違いはないでしょう」


「ああ」


 そしてヒノエ達に遅れてソフィ達もシゲンの方へ辿り着くと『魔瞳(まどう)』の影響が解けた様子で自分の手を開いたり、閉じたりして感触を確かめているシゲンにソフィは声を掛けた。


「お主、何故奴らに抵抗しなかったのだ?」


 遠目からソフィはシゲンと男たちのやり取りを見ていたが、露店商の前に居た客の一人がシゲンに『魔瞳(まどう)』を掛けようとした時にシゲンは、抵抗をしようと手を動かそうとしてあえて止めたのを確認していたようである。


「ほう? ソフィ殿は彼ら『妖魔召士(ようましょうし)』が使う『魔瞳(まどう)』を知っているようだな」


「うむ。我も『妖魔召士(ようましょうし)』のチアキという者に同じ術を掛けられたことがあってな。その効力の強さはよく分かっておる……が、お主はあの男たちに『魔瞳(まどう)』を掛けられる寸前に、手を動かしていただろう? 何か対抗する術があったような気がしたが、それをあえて止めたように感じられたのが少々気になったのだ」


 ソフィ達の世界とは違い敵を動けなくする『魔瞳(まどう)』の類の術などは『妖魔召士(ようましょうし)』以外に扱う者が居ない為に、当然の如くシゲンも彼らが単なる露店商ではないという事に気づいていたようである。


 そして相手が『妖魔召士(ようましょうし)』だという事に気づきながらもその彼らの術に抵抗を行わずに為すがままにされる事を良しとしたシゲンに、ソフィはその真意を確かめたいと考えてシゲンに質問を行うのだった。


「それは彼らが『妖魔召士(ようましょうし)』だからですね」


 しかし実際にそのソフィに返答を行ったのは、シゲンではなく隣に居たミスズであった。


「どういう事だ?」


 先日まで『妖魔召士(ようましょうし)』と『妖魔退魔師(ようまたいまし)』の間で戦争に発展し兼ねない状態が続いていて、ようやく会合を通して一旦の落着となったという事を知らないソフィには、ミスズの説明だけでは腑に落ちず、もう少し詳しく教えて欲しいという意味を込めて視線をミスズから再びシゲンの方へと移しながら更に問い返すソフィであった。


「少し前に『妖魔召士(ようましょうし)』側の組織人間が、我々『妖魔退魔師(ようまたいまし)』組織に属する人間を襲う事件が起きて、ゲンロク殿達の『妖魔召士(ようましょうし)』組織と揉めていたのだ。だがその事は数日前に両組織の首脳陣が集まって、会合を行う事で一応の落着をしたところだったのだ」


「ソフィ殿達がいつこのサカダイに来られたのかは分かりませんが、その『妖魔召士(ようましょうし)』達との会合を終えたのはほんの数日前の事であり、我々は帰路についたばかりだったのです」


 ソフィが事情をどこまで知っているか分からないミスズは、シゲンの話す内容の補足として会合の事について言葉を足しながら説明を行うのだった。


「俺達であれば『妖魔召士(ようましょうし)』が先程のように、如何に姿を誤魔化していようが奴らが俺達に向ける視線や、接する態度だけである程度は()()()()()()


 シゲンの言葉を聞いて横に居るミスズが頷くのを見たソフィは、確かに先程ヒノエという女性と目の前のミスズが小声で会話を行っていた内容から露店商達が『妖魔召士(ようましょうし)』だという事に直ぐに気づいていたなとばかりに、胸中で感心するように呟く。


「だが、彼らの正体が『妖魔召士(ようましょうし)』だと直ぐに気づいていても、その目的などを確かめる必要があったのだ」


「先程の話に戻りますが、揉める事となった原因については会合で落着したばかりですので、ゲンロク殿の組織……『妖魔召士(ようましょうし)』達がこのタイミングで何かを仕掛けて来る理由がない筈なのです。総長はどういう意図があって彼ら『妖魔召士(ようましょうし)』が、我々を監視していたのかそれを探る為にわざと近寄って、相手がどういう行動に出るかを見極める為に手を出さずに最後までいたのでしょう」


「なるほど。両組織間でのトラブルが解決したばかりで『妖魔召士(ようましょうし)』達が何を考えているのか分からぬから出方と様子を窺う為に、わざとされるがままでおったという事か」


 シゲンとミスズが交互に話す内容を照らし合わせたソフィは、ようやくあの時にシゲンが手を出さずに居た心情を理解するのだった。ソフィが納得するような表情を浮かべたのを見た後、ミスズの頭の中ではもう別の事に思考を巡らせていた。


(先程の『妖魔召士(ようましょうし)』達は、会合の時には居なかった者達だった。ゲンロク殿の指示で動いている者達ではないというのは明らかでしょうけど、総長を僅かながらでも止められる程の力量を持っている者が、勝手な行動を起こすとは考え難い)


 そこまで彼女の思考が行き着いた後、ふとあの会合の時に居なかった者達、とある『妖魔召士(ようましょうし)』の幹部の事が頭に過るミスズであった。

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