1132.再び見せる、ソフィの第三形態
※加筆修正を行いました。
この世界では既に魔神を数度呼び出しているソフィであったが、度重なる『魔神級』の姿へと変貌をしていく中で、ある程度の魔力コントロールを維持し続けるならば『魔神』に魔力を預けなくとも常に本来の半分程の魔力を持ち続けていても問題はないと判断していた。
つまりこの世界に於いてはソフィの魔力の半分程を使った戦闘が、悉く続いているという証左であり、ソフィを以てしてこの世界はアレルバレルの世界よりも強敵が間違いなく多いと、認めるに至ったという事でもある。
そしてサカダイの町に辿り着いた事でその思いは更に大きくなった。こうして『第三形態』へと気軽になる事さえ、ノックスの世界に来る前であれば数千年単位に一度しかなかった事なのである。
これはまるで悲願を抱くソフィの為に時代が意思を持って、願いを叶えようとしてくれているようだと、荒唐無稽な事を考える程であった。
第三形態はまだソフィがコントロール下に置ける範疇の力ではあるのだが、興奮状態はこれまでの形態とは比較にならず、戦闘酔いに陥りやすくなる為に過去にリラリオの世界でラルフやリディアに抱いた、高揚感を越えるようなことがあれば、興奮状態を抑える為に戦いの途中であっても今回は強制的に試合を終わらせて、また日を改めて魔神を呼び寄せた後で続きを提案しようと考えている。
――逆にミスズが『第三形態』のソフィから見て、その必要性が無い相手だと判断すれば、そこで終わりにしようと思ってはいるのだが。
「セルバスよ、これより絶対に我に『漏出』だけは使うなよ」
ちらりとこちらを見ていたセルバスにそう告げると、セルバスは当然『分かっています』といわんばかりに頷いた。
(クックック、そういえばこういった事は、我よりもセルバスの方が詳しいのだったか)
素直にセルバスが頷いた事でどうやら心配はないとソフィは判断するが、そこでソフィはヌーに言われた事を思い出していた。
格上の魔王が常にいると思っているアレルバレルの世界の魔族達は、ソフィのようにほいほいと『漏出』を使う馬鹿は居らず、慎重に慎重を重ねた上で最終手段として使うのが常だとヌーに教えられた。
つまりソフィがあえて忠告をせぬとも、他世界からアレルバレルの世界へと移り渡り、凡そ数千年という期間をアレルバレルの世界で過ごした魔族であるセルバスには、十二分に理解が及んでいたであろう。
要らぬ忠告だったかと静かに、ソフィは笑みを浮かべた後にゆっくりと力を開放し始めるのであった。
「音?」
キィイインという甲高い音が響いたかと思うと、ソフィの目が金色へと輝きだす。
そしていち早くその音に反応を見せたミスズは、どうやら先程のよく分からないソフィの言葉は、これから彼が起こす事象の為の確認だったのだろうとアタリをつけて、いつでも動けるように纏っている『天色』の鮮やかな青色のオーラを強め始める。
ソフィが纏っていた『三色併用』の色が全て消えて静かな間が数秒程たったが、次の瞬間に――、ソフィの背中から突然に、四翼の漆黒の翼が生え始めるのだった。
「「なっ!?」」
ソフィの背中から突然黒い羽が生えた事によって『ナギリ』や『スオウ』だけではなく、流石のミスズでさえ驚きの声をあげながら、目を丸くさせてソフィを見るのだった。
「一気に全てを使うような、そのような愚かな真似はせぬ。少しずつだ、少しずつ上げていき、楽しみは最後まで取っておく」
「何から何までもこれまでと違うようですね……!」
突如、背中から四枚の漆黒の翼を生やしたソフィに、驚きを見せたミスズだがいつまでも驚いてばかりではなく、直ぐに頭を切り替えて今のソフィを観察する。
そして見た目だけが変わったのではなく、纏う空気のようなものも別人のようだと『ミスズ』は。新たな発見を得ていたがソフィの呟きを聞いた事で、まだ先があるのだろうと判断してここは一気に攻め立てるような真似はせず、これまでの高ランクの妖魔との経験を活かした戦いを広げようと、ミスズはそう決めて踏み込むタイミングを静かに見極め始めるのだった。
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