1092.感じた違和感
※加筆修正を行いました。
旅籠町の『予備群』の屯所では、隊長のコウゾウがまだ見回りから戻って来ないので、シグレ以外の者達もおかしいと思い始めていた。
「隊長、流石に遅すぎるよな……?」
「ああ、おれもちょうどそう思っていたんだ。隊長の事だから心配は無いと思うが、あと少し待ってみて戻って来ないようなら俺が探して来るよ」
『予備群』の者達がそんな事を話していると、ちょうど二階からシグレが業務を終えて降りて来るのだった。
「その必要はないですよ。私も丁度仕事が終わったところですから、私が様子を見てきますので貴方達は普段通りにしていて下さい」
「そうですか? 分かりました。すみませんが宜しくお願いします」
にこりと笑みを浮かべながら、シグレが部下達にそう告げると、彼らも素直に頷いて隊長の事はシグレ副隊長に任せる事にするのだった。
シグレは部下達に普段通りの仕事をしておくように告げた後、壁に掛けている上着を手に取ると外に出る為に羽織り始めた。そしてシグレはそのまま外に出ようと玄関口まで歩いて行き、ちょうど戸に手を掛けようとした瞬間に外側から大きく戸が開けられるのだった。
「え?」
目の前で突然に戸が開いた事に驚くシグレだったが、そこに赤い狩衣を着た数名の男たちの姿を見ると、直ぐにシグレはその場から後ろへと跳躍して距離をとった。
突然の大きな物音に何事かとばかりに、他の『予備群』達も続々とシグレの居る玄関口へと詰め寄って来る。
そしてその場に集まった者達は赤い狩衣を着ている男たち見て、彼らが『妖魔召士』だと直ぐに気づくのであった。
「お前達が『キネツグ』と『チアキ』を捕らえた『予備群』達だな? 大人しく我らをキネツグ達の居る所へ案内しろ。逆らえば容赦はせぬぞ」
突然入って来た妖魔召士の男たちは、シグレ達に有無を言わさずに捕らえられているキネツグ達の元へ案内しろと告げて来るのだった。
「その狩衣を見るに貴方がたは『妖魔召士』だとお見受けしますが、突然そのような勝手な事を申されましても困りますね。せめて隊長が戻られるまでお待ち願えますか?」
最初こそ驚いた様子を見せていたシグレだったが、直ぐにコウゾウの留守を預かる副隊長として、突然の来訪者の対応を始めるのであった。
「馬鹿め! そのお主らの隊長とやらは、既にヒュウガ様の手にかかっておるわ。さっさとキネツグ達を出さんとその隊長があの世へ行く事になるぞ?」
その言葉にシグレは目を丸くして驚いたが、次の瞬間これまでとは別人のような形相に変えたかと思うと、シグレは腰鞘から刀を抜いて目の前の『妖魔召士』を睨みつけるのだった。
「はっ、馬鹿めが! お主ら『予備群』風情が、我ら『妖魔召士』に適うとでも思っているのか?」
玄関口に居た『妖魔召士』達は、シグレやその他の『予備群』達が刀を抜いたのを見て『捉術』を使う為に目を青くさせて『魔瞳』を使い始めようとするのであった。
そして先程まで喋っていた『妖魔召士』は『魔瞳』で魔力を集約させた後、その魔力を各々が『捉術』を使う為に宛がおうとする。
更には他の『妖魔召士』達もそれぞれが魔力を伴わせて『印行』を結んだり『捉術』を使おうとし始めるが、そこで『妖魔召士』達は違和感を感じ始めるのだった。
「貴方達が何故このような真似をなさっているのか分かりませんが、我らが隊長に手を掛けたというのであれば、当然黙っているわけにもいきません!』
シグレはそう告げた後に刀を水平に構えて真っすぐに先頭に居る男に向けた。
「貴方がたから手を出そうとしたのですから、その身を拘束させて頂きますよ!」
そしてシグレは思いきり地を蹴ると同時、先頭に居る『妖魔召士』に向かっていった。
「ハッ! 『予備群』風情が何を偉そうに!!」
そうは言うが先頭に居た『妖魔召士』は先程感じた違和感が大きくなっていく。それもその筈、男が『魔瞳』を用いていくら魔力を費やそうとも攻撃をする為の『捉術』が使えないのである。それどころか『魔瞳』に費やした『魔力』以上に著しく『魔力』が消耗している様子を感じ取って、この『妖魔召士』はすぐに『青い目』を解除して『魔力』を用いる行動を制限する。
「お、お前達! なにをしておる、早くあの女を止めるのだ!!」
「わ、分かっているが『魔瞳』も『行』も『捉術』も何も発動せぬのだ! それどころか『魔力』が急激になくなっている! こ、このままでは戦うどころか『魔力枯渇』を引き起こしそうだ!」
「なっ……!? く、くそっ……!!」
仲間内で声を荒げていた『妖魔召士』達だったが、目の前にシグレが迫ってきたのを見て先頭に居た男はシグレの刀を器用に躱す。
「ハァァッ!」
一太刀目を躱されたシグレだったが、お構いなしに次から次へと切り返していく、
「くっ、こ、この……!!」
『妖魔召士』も『式』に頼らずとも本来は『予備群』程度が相手であれば、対抗できるだけの戦力値は有している。
だが、それは『魔瞳』や『捉術』などがあるからこその話であって、その魔力を使った一切の効力が発動しないせいで、攻撃の要が全て失われてしまい、更にはシグレが単なる『予備群』ではなく、限りなく『妖魔退魔師』衆に近い力量を持つ剣士だったのも彼らには不幸な事だった。
何とか必死に身を躱す事が出来ているが、いずれはやられると理解しながらもシグレに狙われている『妖魔召士』は、脂汗を流しながらどうするかを考えるのであった。
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