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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1079.咄嗟の機転と失望

※加筆修正を行いました。

「ちょ、ちょっと待ってくれシゲン殿。さ、流石にそんな無茶を急に言ってもらっては……」


 困ると続けようとするが、その言葉を告げる前にミスズが遮った。


()()()()()()()()()()()()()()殿()。妖魔山の話は前回もこの場でも説明はした筈ですし、不法侵入の件、それに『予備群(よびぐん)』の件に関しても貴方であれば、今回総長が仰られる言葉をある程度予想がついていた筈ですが」


「た、確かにその通りではあるが、流石に先程の要求は一方的で乱暴すぎるとワシは思うぞ……!! 先程も言ったが、最高幹部であったヒュウガが姿を晦ましたのだ。今ワシが長の座を降りる事にでもなれば、うちの組織はどうなるというのだ! 戦争、戦争と軽々しく口をするのはいいが、この『ノックス』の世界のあらゆる町は、お主達『妖魔退魔師(ようまたいまし)』達だけで回っているのではないのだぞ!」


 数百年という長いもの間、妖魔から町や人の身を守ってきた『妖魔退魔師(ようまたいまし)』達。だが、決してそれは一つの組織で全てを解決してきたわけではない。


 『妖魔召士(ようましょうし)』という人間達が居たからこそ、妖魔が町に入らないようにとあらゆる町に結界を施す者や、それこそ『妖魔団の乱』以前までならば『妖魔退魔師(ようまたいまし)』達と上手く連携を取る事で現状維持を続けてこられたのである。


 今でも袂を分かってこそはいるが、両組織間での取り決めがあり、協力出来るところは協力している状態である。確かに『妖魔召士(ようましょうし)』の次の代を担う存在が不在のままで、ゲンロクを引退させる事になれば、上手く機能が回らなくなり『妖魔退魔師(ようまたいまし)』側にも不都合な箇所が生まれるだろう。


 シゲンはゲンロクに『妖魔山』の管理を譲り渡すという言葉を出させる為に、発破をかけたつもりであったが、そのゲンロクは自分の進退によって生じる組織への影響へと論点をすり替え始めてしまった。


 ――全く上手く口が回るものだとシゲンは、内心で感心すら覚えるのであった。


「確かにこちらの言葉も一方的過ぎたところはあります。しかしそこまで言うのでしたらゲンロク殿、まずは貴方の誠意を形にしてもらいましょうか。こちらの要求をそのまま呑めないというのでしたら『予備群』の一件にしても『不法侵入』の一件にしても、()()()()()()()()をお願いしたい。前回のコウヒョウの話は、確かに素晴らしい誠意を見せて頂きました。ですので今回も私はあなたに期待をしています。しかしゲンロク殿? 今回の『予備群(よびぐん)』を襲撃した一件。これまで数百年の歴史で、一度も起きた事のない程の出来事なのです。総長が戦争も辞さないと仰られた意味をよく理解して、コウヒョウの利益や『予備群(よびぐん)』に支払う護衛料の上乗せなどという、()()()()()で済ます事のないようによくお考えになられて下さいね。そしてあまり待たされるような事になれば『妖魔山』の管理権の移転だけでは済まなくなりますよ?」


 副総長ミスズは眼鏡をくいっと上げながら、ゲンロクに畳みかける。


「くっ……! くっぅ……!!」


 武力では『妖魔退魔師(ようまたいまし)』には歯が立たず、口でも決断力でも自分の子供くらいの年齢の者に上を行かれた挙句、悪いのは『妖魔召士(ようましょうし)』側という風下に立つ立場に立たされて、更にはその原因を起こした者は自分に文句を言って組織を出て行ってしまった。


 もう泣きたくなるような辛い惨状に『ゲンロク』は、血が出るほど強く唇を噛み、何も言えずに目の前のテーブルを見つめる事しか出来なかった。


「今回はこれまでの貴方がうちに行ってきた功績を考慮して、貴方に満足の行く決断が出来るように、数日は待つ事にしよう。だがゲンロク殿、うちは仲間を傷つけられて黙っていられる隊士など、一人もいないという事を肝によく銘じておく事だ。では『ミスズ』に『ヒノエ』。今日はここまでだ。帰るとしよう」


 茫然自失となっているゲンロクを一瞥したシゲンは、立ち上がりながら部下達に声を掛けるのであった。


「はい、分かりました総長。それではゲンロク殿『妖魔召士(ようましょうし)』の皆さんも『妖魔山』の管理の一件をよく考えた上で結論をお願いします」


 ヒノエもミスズ達と同様に立ち上がり、情けない表情を浮かべているゲンロクを見て、前回は自分が認めた男は所詮はこんなものだったのかと、()()()をありありと、その目に浮かべるのであった。


 そうして二度目の会合が終わり『妖魔退魔師(ようまたいまし)』達は屋敷から出て行った。

 その場に残された『妖魔召士(ようましょうし)』達は、ゲンロクの様子に声を掛けることも出来ず、こんな時にこそ頼りになるヒュウガの存在がこの場に居ない事にゲンロク派の『妖魔召士(ようましょうし)』達は、どこか心にしこりのようなものが、自分の中に出来ている事を実感するのであった。

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