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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
サカダイ編

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1047.説教と感謝

※加筆修正を行いました。

 セルバスが追加の酒を持って屯所へ戻ってきたが、直ぐにシグレに捕まり説教をされていた。

 セルバスが『魔瞳(まどう)』で男に出した命令は、旅籠に居る大勢の者達に迷惑をかけたのだと告げられたセルバスは、苦笑いを浮かべて謝罪していた。そして決して少なくはない時間のシグレの説教からようやく解放されたセルバスは、ソフィ達の居る部屋へと戻って来るのだった。


「クックック! お主も災難だったようだな」


「は、はい……。あ、これ、遅れてすいませんね」


 そう言ってソフィ達に追加の酒を差し出したセルバスだった。


「さっき外で叫んでた野郎は何だったんだ?」


 テアと楽しく食事をしていたヌーがセルバスに疑問をぶつけると、セルバスは少しだけ憂いだ表情を見せた。


 どうやら酒を取りに行く途中に考えていた事が再び頭を過ったのだろう。やがてセルバスは、その思いを吹っ切るように口を開き始めた。


「あいつは俺と同じ『煌鴟梟(こうしきょう)』の残党だったんだが、どうやら俺に対して恨みを持っていたようでな……。そんな俺だけが捕まらずに『予備群(よびぐん)』の彼女と歩いているのを見て、裏切者といって襲ってきやがったんだ」


「あー。そういう事かよ」


 組織に属している以上はある程度の同調行動の共有を求められる。セルバスを襲ってきた男のように直接行動を起こす者も居れば、皆と足並み揃えない者に対して表立っては何も言わないが、裏で陰口を叩いたり、組織内で仲間外れを促進させて組織に居づらくさせる者も居る。


 これは色々な思惑が交差する『組織』に属している以上、ある程度は仕方が無い事ではある。

 だが、襲ってきた男もこれまで、捕らえられていなかったのだから、少しばかりヌーが思っている事以外でセルバスに対して恨みがあったのかもしれない。


 しかしそうだとしても『煌鴟梟(こうしきょう)』の組員の多くはただの人間である為、セルバス程の魔族であれば何も問題はなかったはずである。つまり屯所へ向かわせるだけでよかったところを『セルバス』はやりすぎてしまったという結果にやはり行き着くのだった。


「セルバスよ。今我達はコウゾウ殿の屯所で世話になっている身だ。こんな夜分遅くに大声で騒いでいる者を捕らえるのはここの護衛達だという事。()()()()()()()()()()()()()も大事だとは思わぬか?」


 旅籠に泊まっている者達は夜にいきなり起こされて不満を持っただろう。そしてその不満は少なからず捕らえる側の護衛隊たちに向く。叫んだ張本人が一番悪いのだが、捕らえられてしまった後は、苦情を告げた者達には、その男の顔も見る事は出来ないのである。


 もっと早く捕らえろとか、普段から治安が悪いからこうなるとか。そう言った苦情の向く矛先は『予備群(よびぐん)』の屯所になってしまうのである。


 ソフィはセルバスに世話になっている者達には迷惑を掛けるなと、少し考えて行動するようにとやんわりと説明したのであった。


「はぁ……。よく分かんねぇけど旦那が言うなら……。すんません」


 しかしヌーと同じようにこれ程まで好き勝手に生きて来たセルバスには、ソフィの()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()であった。


 ソフィはセルバスの返事に溜息を吐いたが、分かってくれればいいと頷くのだった。


「ふふっ」


 ソフィがセルバスに説教をしていると、隣に居たエイジが笑みを浮かべた。


「むっ?」


「いや、ソフィ殿達のやり取りを見ていて少しな。かつて小生も似たような過去があった事を思い出したモノでな。何処にも同じような事はあるものだ」


 どうやらエイジも過去の『妖魔召士(ようましょうし)』の組織内で言う事を聞かないモノに対して、今のセルバスと同じような説教を行った過去があるのだろう。


「クックック。そうか」


「まぁ、いいじゃねぇか。こうしてコイツは酒を持ってきてくれたんだしよ」


 ヌーはそう言ってセルバスの肩をバンバンと叩きながら彼の運んできた酒を岡持ちから取り出して、自分の酒の入った容器に注いでいく。


「うむ、そうだな。セルバスよ、気を利かして追加の酒を取ってきてくれて感謝するぞ?」


 酒の入ったコップを軽くあげながら、セルバスに笑みを向けて褒めてくれたソフィを見て、セルバスは落ち込んでいた表情から徐々に笑顔に向かっていき、最後にはニコニコと笑いながら自分も酒を注いでいた。


(ソフィ殿は、不思議な方だな。あれだけの力を持っているというのに、一切偉ぶらずにまるで自分は仲間内の中でも、どこか一歩退いて物事を考えている節がある。そうだと言うのに、いつの間にかその場に居る者達はそんなソフィ殿に引き寄せられていく)


 まるで自分の師であったサイヨウ様のようだと、心の中で呟くエイジであった。

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