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零零零  作者: 川峰 京
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本編の前の軽い触りです。

 「は、早く……二人で逃げろ……!」

 「嫌だ!」


 腹部から流れ出す血を手で押さえつつ、弱々しくなってる大人の男が幼い男女の子供らにここから逃げるよう言う。

 男の子は逃げることを嫌がり、その妹と思われる女の子はただただ泣いている。


 「早くここから出ないと……」


 「俺らみんな死ぬことになるぞ!」


 男がそう強く言うとダァーンっと燃えてる木の柱が彼らの横に倒れだした。

 少年は目の前の男の怪我にしか目がいってなかったのか、改めて周囲を見渡すと、周りはすでに火でいっぱいだった。

 家の中に火がそこまで来ているものあって、窓から外を見ると悲惨な光景を目のあたりにした。


 それは、


 自分の家だけが燃えてるのだけでなく、街全体が燃えていたのだ。


 火がまだ燃えていないところを道に、近くの人たちが逃げていく。

 中には、燃えながらも逃げる人の他に、途中で焼けきれてその場で倒れ込んでしまった人もいた。


 「それでも、僕たちだけで逃げるなんてやだよ」

 「いいから……はやく香奈美も連れて逃げるんだ」

 「……」


 「俺はもう……うっ」


 男は吐血し、その場で倒れ込んだ。


 「お、お父さん!!」

 「パパッ!!」


 倒れ込んだ父親に二人の子供が近づいた。


 「俺はもう助からん……香奈美を連れて逃げるんだ怜二」


 その言葉の通り、父親が助からそうにならないのは幼くてもわかってはいた。


 「あまり遊んであげれなくてごめんな…」


 二人は涙が溢れに溢れ、声もうまく出せずただ首を横に振るだけだった。


 「悪いがあとは頼んだぞ怜二」

 「お父――」


 そう言っていきなり立ち上がり二人を家の外へ突き飛ばすと父親に向かって燃えた家屋や柱が父親の上に重なり、家が倒壊した。


 父親の最後の力で外へ押し出された怜二と香奈美は燃える我が家を見てることしかできなかった。


 やがて、

 「けほっ、けほっ」

 炎となって燃え盛る火が更に近くまで寄ってきて香奈美も煙を吸いすぎてしまった。


 「お前だけは死なせるもんか」

 目の前で親が死に、せめて妹だけでもこの場から避難させねばと怜二が香奈美の手を引き移動する。

 幸いにも火が弱い部分がまだあり、そこを通りやっとの思いで火がない道まで来れるようになった。


 しかし、どのくらい走り歩いたことだろうか。

 怜二と香奈美は泣きながら燃える広まる自分の住んでた街をようやく出て、隣町にかかる橋の途中まできてようやく人がたくさんいるところに着いた。


 人がたくさんいたことにひとまずホッとしたのか、泣き疲れのか、お互いの顔を見ると兄妹揃ってその場に倒れ込んだ。


 「おい、子供が二人倒れてるぞー!」


 自分たちに気づいて近づく大人を確認すると怜二は静かに目を閉じた。それ以降の記憶はない。


 2123年3月26日、この日起きた大火災は後に国内最大級のテロ事件として日中報道されることになった――




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