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魔女狩りは天使とともに  作者: 平田直人
短剣の魔女編
9/12

第八話 

 「……おはよう」


 朝、宿屋の一階で椅子に座りながらコーヒーを飲んでいると、眠そうに目をこすりながらながらナナが降りてきた。よく見ると耳が垂れている。かわいい、抱きしめてたい。


 宿屋の一階には談話室の様な物が有り、俺は少し前からここでコーヒーを飲んでいた。


「おはよう、やっと起きたか」


「……うん。待った?」


「俺は待ってないよ」


「……そっか、よかった」


 俺も良かったよ……。どうやらナナは昨日のことは気にしていないようだ。

 それに引き替え……。

「ナナさん、おはようございます」


 ナナに笑顔で挨拶をするのは俺の目の前の椅子に座っている女――レリルだ。朝から一切口をきいてくれない。つらい。


「あの、レリル……そろそろ許して欲しいんだが」


 俺は頭を下げて懇願する。

 レリルはチラりとこちらを見た後、大きくため息をつく。


「……はぁ、今回だけは許します。けど本当に次は無いですからね?」


「わかってる、ありがとう!流石天使だ!綺麗で優しくて有能、最高だな!」


 俺は手放しでレリルを褒める。


「……むぅ」


 ナナが若干不機嫌になる。相変わらず可愛すぎる生き物である。


「もちろんナナも可愛いし大事だぞ?いつもありがとうな」


 そう言って頭を撫でると、いつもの様に尻尾がぶんぶんと左右に揺れる。


「さて、そろそろ仕事の話しをしましょうか」 


「嫉妬してるのか?」

 

「は?」

  

 怖っ!

 レリルが人を殺せそうな目で睨み付けてくる。

 いつもの可愛い顔はどこへいった……。

 

 仕方ないので従おう……。

「冗談だよ……。さて、はじめようか」


  俺はそう言ってナナの頭から手を離し、机に置いてあった資料を見る。

  ナナは残念そうに耳を倒し、俺の横に座った。

 

 ・被害者六人の一致点で今のところ判明しているのは中年男性と言う所だけ。

 ・遺体と、その近くには大量のナイフが刺さっている。

 ・現場はそれぞれべつの場所で路地裏の目立たない所以外は共通点は無い。

 ・現場の近くでは自警団がパトロールをしていた。その際、特に不審者は見つかっていない。 

 

 ……うーん、やはりこれだけでは情報が少ない。


「なんで中年男性ばかり狙われるんでしょうか?」


 レリルが首をかしげながらそう呟く。


「やっぱり誘惑しやすいから、とかじゃないか?若くてある程度見た目も綺麗ならおっさんなんてすぐ引っかかるだろ」


「そう言う物ですか……」


 レリルが若干呆れ気味にそう答える。


「……と言うことは、やっぱり犯人は若い女の人?」


 まあ、それが妥当な線だろう。


「若い女、ってだけだと1000人以上いるな……」


 行き詰まる。もう少し手掛かりが欲しいな……。


「よし、ここで悩んでてもしょうが無い。聞き込み調査をしよう!」


 俺は気合いを入れるために大きな声を出して立ち上がる。


「聞き込み調査ですか……。いいですね。そうしましょうか」


「……具体的に誰を調査するの?」


 ナナが俺の方を見上げながら聞いてくる。その姿が上目遣いの様に見えてとてもとてもかわいい。人形のようなかわいさがある。家に持って帰りたい。


「まあ、取りあえず被害者遺族を当たろう」


「それが良いですね」


「二手に別れようか。レリルとナナは四回目以降の被害者の家に行ってくれるか?」


「……わかった」


 やっと、今日の方針が決まった。




「すいません、少しよろしいですか?」


 ドアをノックして少し大きな声で呼び出す。

 まずは一日目に殺された男性の遺族宅を訪ねてみた。


「どちら様ですか……?」


 出てきたのは四十代くらいの小柄な女性だった。


「いきなり押しかけて申し訳ありません。私、ルノアレア教会の神父の者です」


 そう名乗ると、女性はドアを開けてくれた。


「やっと神父さんが来て下さったんですね。夫の事件の事ならなんでも聞いて下さい」


 女性は少しホッとしたような表情をして俺達を家に迎え入れてくれた。

 リビングで向あわせになり話しを始める。


「不躾で申し訳ないのですが、正直に言いまして情報が足りなくて困っています、もし何か話していない事があるなら教えていただけないでしょうか?」


 ぐだぐだ話してもしょうが無いので単刀直入に聞いた。

 意外とこの方が話してくれることが多い。……自分悪事を働いて居なければ、だが。

 女性は少しの間沈黙すると、意を決したかのように話し始める。


「実は、夫は異端審問に関わっていたんです……」


「……ほう」


 興味深い情報が出てきた。


「と言っても教会が主導でやったのではなく、自警団が行った物なんですけどね」


「神父や、正規の異端審問官はいなかったのですか?」


 もしそうであればそもそもその異端審問に意味はない。刻印など教会関係者が居なければ化粧などで簡単に隠せてしまう。


「おそらく、そうだったと思います。この街にはそんな高尚な人達はいませんので」


「……そう、ですか。この街では異端審問は日常的に行われていたのですか?」


 その問いに女性は首を振る。


「最近隣の村に魔女が出たらしくて……。その事があって自警団の人達が、数年以内に引っ越してきた女性を中心に十人くらいやったみたいです」


 何となくわかってきた。

 

「ご協力ありがとうございました」 

 

その後他の家もまわってみると、なんと全ての被害者が異端審問に関わっていた事が判明した。まあこれで、なんとなく事件の概要はわかった。後はナナ達の情報を聞いて判断しよう。




 

 夕方になり、宿屋の談話室で休んでいるとナナ達が帰ってきた。


「おかえり、どうだった?」


 二人は顔をうつむける。


「……被害者は全員、異端審問に関わってたみたい」


 ナナがいつもより更に小さな声で報告してくれた。

 二人には少し堪える内容だったか……。


「そうか、ありがとう。こちらも同じだったよ」


 しばしの沈黙の後、レリルが顔を上げる。


「決まり、ですね」

 

 レリルが悲しそうに呟く。

 レリルの言うとおり、もう犯人は決まったも同然であった。


「今回はかなり早く魔女が見つけられてよかった。きつかったら二人は宿屋で休んでてもいいぞ」


「いえ、最後まで協力します」


「……ナナも問題ない」


 二人の意思は固そうだな……。

 なら、止めるわけには行かないな。


「わかった、じゃあ作戦を話す。今日はその通りに行動してくれ」


 俺が神妙な顔でそう言うと、二人は黙って頷いた。


「では、魔女狩りを始めよう」


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