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双藍の箱  作者: ジニー
第三章 「憎悪の裁断」
8/16

3ー0 「乱雑な狂気」

2093年 5月 4日 10時頃


静かな夜だった。

この静かな夜、1人の学生服の男が古びた橋を渡ろうとしていた。

「はあー………。またやっちまった。」

その男は、がっくりと肩を落としながら歩く。

男の名前は、坂田さかた 利則としのり。私立如月高校に通う2年生だ。

彼は週に2回、小さな骨董品屋でアルバイトをしていた。しかし、店主とのちょっとした衝突で、店を追い出されてしまった。クビである。

「こりゃあ、母ちゃんにキレられるな………。」

彼の不器用で安易な性格は、他人にうっとうしがられる所があった。その為、バイトをクビになったのは今回で3回目となる。


そんな彼は、橋を真ん中辺りまで渡った途端、ふと足を止めた。

「あ……………っ!」

橋の向こう岸に誰かが倒れている。

しかし彼には、倒れているのが誰なのか、一瞬で分かった。

先程、バイト先で彼が言い争った男……そう、骨董品屋の店主だった。

空を見ながら倒れる店主は、ピクリたりとも動く気配が無く、腹わたをぐちゃぐちゃにされて、床に血を流しているのは、遠くからでもよく分かった。

「な……、なんで…………?」

利則の膝が、ガクガクと震え出す。

「ど、どうなってんだよ…………?」

恐怖からか、声も震えてくる。

そんな時、


シャキ


と、ハサミの刃が擦れる音が、利則の背後でなった。

利則は、後ろを振り向かない。いや、全身が痙攣しているせいか、振り向く事すら出来なかった。


シャキ


その音が少しずつ大きくなっていく。次第にその音は、彼の耳元で鳴っていた。

「…………っ!?」

とてつもない悪寒が彼を襲う。

彼は断固として振り向かない。

今度はハサミの音ではなく、若々しい女性の声が聞こえた。

「ね……え…………?」

利則は、その声の女性が隣にいる事に気付いた。彼は横目でその女性を確認した。長い髪で全体の顔は見えなかったが、口が裂けている様に見える………。それだけ彼には見えた。

「…………え?」

利則は、つい言葉を返してしまった。

女は待っていたかの様に裂けた口を吊り上げて言った。

「私……き………れい……………?」

「!!」

その声で彼は我に帰ると、一目散に走り出した。

「うわぁーーーー!!」

彼は後ろを振り返らずに、無我夢中で走った。かなりの速度で走ったが、そう大して息はきれなかった。



「…………………。」

橋に1人残された女は、さらにひきつった笑みを浮かべて佇んでいた。

筆者です。

誤字・脱字がありましたら教えてください。よろしくお願いします!

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