表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双藍の箱  作者: ジニー
第三章 「憎悪の裁断」
13/16

3ー5 「死徒」

出久は坂田を連れて、阿嘉音の家に帰って来た。

ドアを開け、出久は靴を脱いで床に上がる。

「ほら、こっちこっち。」

手招きをされた坂田は、「お邪魔します」と言い、家に上がった。

「阿嘉音〜、今帰った………」

リビングのドアを開けると、阿嘉音ともう2人がソファに座っていた。

「しまった、もう帰って来たか…………?」

頭を掻きながら阿嘉音が出久に顔を向けると、もう2人も顔を向けた。

「おう、出久!」

「東間君。」

峰介と真優美だった。

「あ、2人共。早速来たみたいだな?」

出久はバックを床に置くと、壁に寄りかかって目を閉じる。

「今、仕事内容の説明を西行さんに受けていた所です。」

「出久、その子は?」

「坂田 利則。現場で襲われてるのを助けて、とりあえずここに連れて来た。」

「ど、どうも…………。」

坂田は阿嘉音に頭を下げた。

「襲われたって?それは災難だったな。坂田君、まあ、適当に座ってくれ。」

「し、失礼します…………。」

坂田はソファの空いているスペースに座った。

「阿嘉音。やっぱり、今日あった奴は当たりだったよ。」

出久は女に切断された血だらけの手を挙げて言った。

「そ、そうか…………。」

阿嘉音は目を細めてコーヒーを口に運んだ。

「当たり?出久、その怪我どうしたんだよ!?」

「【死徒】だよ。仕事の説明を受けてたんじゃなかったのか?」

「死徒?いや、そんな話はまだ聞いてないけど………。」

「あれ、阿嘉音。まだ話してなかったのか?」

阿嘉音は出久から目を逸らしながらもう1度コーヒーを口に運ぶ。

「私達はまだ、迷い猫を探す依頼の話を聞いただけですけど…………」

「猫探し?阿嘉音、そんな依頼あったのか?」

阿嘉音は更にコーヒーを口に運ぶと、ため息をついて、ゆっくりと話し出した。

「本当はあまりこういう情報を一般人に伝えちゃいけないから、出来るだけ知られないようにしようと思っていたのだが…………。まあ仕方ない。」

阿嘉音は残っているコーヒーを一気に飲み干すと、テーブルに置く。

「死徒っていうのは、既に死んだものの魂が何らかの影響を受けて暴走を起こし、自らの欲望のままだけに動くものの事だ。私と出久は、ここ最近、この街に突如発生した死徒を狩る仕事をしている。ここまでは大丈夫か?」

阿嘉音は話を聞く4人の顔を見渡すが、出久を除いた3人は、訳が分からず。ボケっとしていた。

「ま、まあ要するに、この街にいる死徒っていう悪霊を退治してるって事だ。」

「あ、悪霊退治………ですか?」

「俺、全く話が掴めねー……………。」

峰介と真優美はその話を当然ながら信じる事が出来ないでいて、坂田は腕を組んで頷いていた。

「まあ、実際その死徒って奴を見なきゃあ信じねえだろうよ。俺も最初はそうだったし?」

「はぁ………。確かにそうだな。」

全てを諦めた阿嘉音は、リビングを出て上の階に上がって行った。


しばらくすると、阿嘉音は何かを持ってリビングに戻って来る。

「待たせたな。」

「阿嘉音、それなんだよ?」

「【ガバメントメモリー】。」

「いや、「ガバメントメモリー」と言われても、全然何か分かんないんだけど…………。」

「東間君、ガバメントメモリー知らないんですか?」

「あ、ああ。」

「あれに歌や映像を保存して、テレビやパソコン、【サードアーム】とかに繋ぐんだ。そんなの俺でも知ってるぞ?出久。」

「その言い草だと、あなたより東間君が劣っているという意味に感じるのは私だけでしょうか?」

真優美の鋭い視線が峰介を睨む。

「おい勘弁してくれ…………。そんなおっかない目で睨むなよ?前言撤回します!」

「当然です!」

「ヒィ………ッ!こっわ…………。」

出久達が話しているうちに、テレビの電源がついて、映像が始まった。

「ほら、こいつを見れば分かる。」

映像には、ゴルフクラブを持った男3人と、刀を振る1人の少年が戦っていた。

「こっちの人…………。も、もしかして、これ、東間君ですか!?」

真優美が目を疑う様な顔で出久の肩を叩く。

「あ、本当だ。俺だ………!これ、この前の奴だろ?どうやって撮ったんだ?」

出久は自分が戦っている所では無く、色の付いた映像の方に見入っていた。この時代で目覚める前、1度だけテレビを見た事があったが、当時は画面がぐちゃぐちゃでよく分からなかった。出久はこの時代に来てから、色々な物に興味津々である。

「カメラ付きの虫型ロボットを飛ばしていたんだ。…………そして、ここから先は少しエグいから気をつけろ。」

阿嘉音が注意した数秒後、出久が1人の首を刎ねた。

「うぇ…………っ!」

峰介が思わず口を抑える。

「だから言っただろう?それで、3人に見てもらいたいのはここからだ。」

阿嘉音の言葉のすぐ後に、3人はソファから立ち上がって画面に近づいた。

なんと、先程出久が首を刎ねた男は倒れる事なく、何事もなかったかの様に攻撃を続けていた。

「な、なんで…………?」

それから出久は続けざまに敵の手や首を刎ねていくが、敵は立ち上がれなくなるまで動き続けた。

さらに、男達の攻撃で壁や柱のあちこちが凹んだり、壊れたりしていた。

だが、最終的には出久が3人の足を斬り落とした後、心臓に刀を突き刺した。すると、たちまち男達の肉体は塵となると、跡形も無く消えて、そこで映像が終わった。

「「「……………………。」」」

3人は口をあんぐりさせて、映像の終わったテレビの真っ黒な画面を見続けていた。

「これで分かっただろう?「私達」はこういう奴らと戦っているんだ。」

「まあ、基本的には「俺」1人だけどな?」

「言ったろう?私は「支援役」だと。…………それで、君達2人にはこういう奴らの目撃情報を集めて欲しい。通常のアルバイトより危険が付き纏うかもしれないが、命の保証はできる限りするつもりだ…………。ど、どうだ?」

阿嘉音は峰介と真優美の動揺具合を察して、少し遠慮がちに言った。

「別にやりたくないならやらなくていいぞ?人件費も安そうだし…………」

「お前、それは余計だ。」

阿嘉音が出久の言葉を遮った。



数分経ったが、2人はまだ動揺が収まらなかった為、阿嘉音が、とりあえず2人を帰らせた。

「はぁ…………。絶対にこうなると思っていたよ…………。」

阿嘉音はカップに新しいコーヒーを注いで、ソファに座り直した。

「それで阿嘉音、こいつは………」

「分かってる。利則君はしばらく此処に居てもらう。」

出久が利則を指差すと、阿嘉音はすぐに頷いた。

「そうか、なら良いんだけど。」

「よし、とりあえずひと段落ついたな。じゃあ、次は何故その死徒が利則君を狙うのか。それを考えよう。もう話せるかな?利則君。」

「はい。もう、大丈夫です…………。」


時刻は7時。夜になり、出久は思わずあくびをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ