3ー4 「裁断器具」
やはり、ここに来といて正解だったと出久は思う。現場に坂田がいた事は想定外だったが。
「…………じゃ、…………ま…………。」
「出久、前っ!!」
女はハサミを開くと、出久目掛けて投げた。
カキンッ!
出久は右手に持っていたカッターで、ハサミを斬り飛ばした。
坂田は何故か、その飛ばされたハサミに目がいった。取っ手が緑色のゴムで出来たハサミを。
どこかで見覚えのある………
「おい、坂田。」
「……………。」
「おい!」
「…………え!?」
「ほら、早く逃げろ!」
「分かってる、分かってる!」
坂田は立ち上がろうとするが、足が震えて動かなかった。
「くそ!足が…………っ!」
「何してんだ、早く!」
「そんな事言ったって………!」
「……………っ!」
出久は坂田の方を向いていた内に、女は出久のすぐ後ろまで来ていた。再びハサミを持ち、出久目がけて振り下ろされる。
「お、前…………じゃ…………ま。」
振り返るが躱しきれる間合いではなかったため、出久はカッターでハサミの刃を防ごうとする。しかし、
パキンッ!
カッターの刃が割れてしまった。そしてハサミは、前に出した出久の右腕に食い込み、あろう事か、骨をも簡単に寸断し、右腕が彼の体から離れた。
切り裂いた感触が伝わり、女はニヤリと笑みを浮かべた。
「ちっ!!」
だが出久は痛がったりも動揺する事もなく、地面に落ちる前に右腕を左手で掴み、跳躍した。
「……な……………!?」
「お前が驚いてどうするんだよっ!」
出久はそのまま女の顔に回し蹴りを放った。
「がぁ…………っ!!」
命中し、女は15メートルくらいまで蹴り飛ばされ、体を地面に打ち付けた。
出久は、倒れている女を見て、目を集中させた。すると、出久の瞳が半月のように変わる。出久は、女に流れている魔力の流れを観察した。そしてその中に、線の流れが異常で、その線は一箇所へと集まり、球体の様に腫れ上がっていた。ブラッドオーブである。
「ブラッドオーブ…………ってことは、お前もやっぱり【死徒】か?」
「……………………っ!」
女は、焦りの表情を浮かべると、いきなり身体を透明にさせ、地面の中へと消えていった。
「逃げた…………?ま、いいか。」
出久は左手に持つ自分の腕を、自分の切断部分に合わせて、ゆっくり目を閉じた。
「………おい、いず……………」
「ちょっと静かにしてくれ。」
出久は深呼吸した。すると、右腕がミチミチと、奇怪な音をあげた。そして音が鳴り終わると、右腕を支えていた左手を離し、右手をゆっくり動かした。
最初は指が痙攣していたが、すぐにいつも通りに動かせた。
「本当にいけるんだな。初めてだったから、ちょっと驚いた…………。」
出久は右肩をブンブンと回し、違和感がない事を確認すると、倒れている坂田の方に振り返った。
「ひとまず安心だ。立てるか?」
出久が尻餅をついている坂田に手を差し出した。
「……………。」
坂田は口を開けて唖然としていた。
「おい、大丈夫か?」
出久はそれを心配そうに見つめる。気付けば、目は通常の瞳の色と形に戻っていた。
「………いや、それよりもお前は大丈夫か?」
「俺?ああ。右腕もこの通り動く。」
「そ、そう………なのか?」
坂田は出久の手を取り、体を起こして立ち上がると、出久は、戦闘中に落としたカッターを拾う。
「やっぱこんなんじゃ駄目だな。」
突き出た刃をしまい、ポケットに入れた。
「坂田、今日はとりあえず家に帰るな。」
「え?なんでだよ?」
「あいつが復讐に来るかもしれないからだ。ちょっとついて来い。」
「ついて来いって、どこにだ?」
「俺の「下宿場所」。ほら、行くぞ。」
出久は元来た道を振り返って歩き出す。未だに状況が理解出来ない坂田だったが、とにかく今いる所から一刻も早く離れたかった為、出久について行く事にした。
久しぶりの投稿となります。
こっちは消しません^_^




