1ー0 プロローグ
1944年 12月25日 ドイツ
激しい雨の日だった。
戦争の影響で、夜は静かだった。
木の枝に乗っているフクロウが、ホーホーと泣いている。
そんな街にある、1つの細長なトンネルで、歳は30後半だと思われる男2人が、1人の少年をトンネルの壁に押し付けていた。
「おいアジア人の兄ちゃん、金貸してくれないかなー?」
優しげに、1人の男はその少年に言った。
「……………。」
少年は何も答えない。
「こんな世の中だからさあ、おじさん達困ってるんだよ。」
もう1人も少年にぐいっと寄った。
それでも少年は黙っていた。
「なんか言えよ、ガキ!」
1人が少年の肩を強く掴んだ。
「あまり大きな声を出させないでくれよ。」
握る力が少しずつ強くなっていく。
少年はふっと口元を緩ませた。
「なら殺せよ。殺してみろよ。」
その声を聞くと、掴んでいた肩を離し、ポケットから小さなナイフを出した。
「じゃあそうさせてもらうぞ!」
「やめとけ、捕まるぞ!」
「こんなガキ1人殺したくらいで今は、捕まんねえよ。兵隊さんはみんな戦争に行ってるからな。」
「まあそうだな。」
もう1人もナイフを構える。そして少年の顔にナイフを突き刺そうとした。
「じゃあな、ガキ!」
その時少年は、ニヤッと笑った。
ザシュッ!
ナイフにより、何かを切断する音がトンネル内で鳴る。
「……………あれ?」
1人の男は不思議に思った。ナイフを持っていた右手の感覚が無い。見ると、右手が無くなっていた。足元には、ナイフを握った自分の右手が、血を噴き出して落ちていた。
「ぐわぁーーーー!!」
男は後から来る痛みで斬れた右腕を、左手で押さえ、叫び声をあげた。
少年は、右手に血だらけのナイフを握る。そして、棒立ちでガタガタと震えているもう1人の男を直視した。
「ひっ!」
見られた男は、早くトンネルから出ようと、彼に背中を向けて走り出す
ザクッ!
しかし少年は彼を逃さない。手に持ったナイフを素早く投げ、彼の足に突き刺した。
「うわっ!」
男は足にナイフが刺さったため、転んだ。
「く、くそ…………っ!」
痛みで立ち上がる事が出来なかった。
コツコツと歩く音が、だんだんとその男に近づいて止まると、足のナイフを勢いよく引き抜かれた。
「ぐっ!」
抜いた瞬間、次にそのナイフは首を斬り落とす。男は斬り落とされた痛みを感じる暇もなく息絶えた。
首がゴロゴロと血を流しながら転がる。
それを見ていた右手の無い男は、足がすくんで動けなかった。
少年は、今度はその男に向かった。
「あ、あ…………。」
腕を押さえながら、床に尻もちをついた。
少年はコツコツと足音を立てながら、男に向かって行く。
「先にしかけて来たのはそっちだぜ?」
「う、うるせえ!てめえ、前々から俺たちの後をずっとつけてた事は知ってるんだぞ!」
男は顎をガタガタ震わせながら言う。
「なんだ知ってんじゃん。けど、お前たちも同じ事をしたんだろ?えーっと………確か名前は【アレイナ】だったっけ?」
「な、何でそれをお前が知ってんだよ!?」
少年は男の目の前まで来る。
「そんなのさあ。今から死ぬヤツに言ってもしょうがないだろう?」
少年はナイフを男の首に突き付けて言った。
「や、やめてくれ…………。」
「その女の子は外に出るのが怖くなって、最近は家から一歩も出ないとか。」
「こ、殺さないでくれ!も、もうしないから。何もしないから〜!!」
「麻薬売りも?」
「え?」
「麻薬を売るのがそんなに楽しいか?」
「わ、分かった!もう麻薬も売らない!!これで良いだろう!?」
「そっか………。」
ナイフを首から離した。
男はふーっと一息ついた。が、
「じゃあな。」
「え?」
ザクッ!!
少年は躊躇う事なく、男の頭に刃を突き刺した。その後、2人の死体をバラバラにし、袋に詰めて、川に投げ捨てた。
「好き勝手したお前らがいけないんだからな……?」
そのまま、少年は何事もなかったかの様に自分の家に帰って行った。
こんにちは、ジニーです。新作を始めていきたいと思います。
こちらは投稿ペースが少し遅くなりますので、よろしくお願いします。
まだまだ未熟者なので、誤字・脱字などを教えて頂けたら嬉しいです。