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神様のお使い  作者: 泡沫にゃんこ
第一部
5/52

初クエストはSSSランク!!?

ついた、ここかその岩山ってのは…」


クエストの内容は、魔法を食べるマジキチドラゴン2体の討伐だったよな。


「しっかし、こんな広い場所からどうやって探せと?」


見渡す限りの岩山…。今俺はどうやら岩山の頂上にいるようだ。


「そんなこと言ってても始まらないからなぁ、よし、探そう!」


そう自分に言い聞かせ歩き始めた時だった。『ガンッ!』足元からそんな音が聞こえた。


「んぁ?なんだこれ?」


足元をよく見ると何か巨大な鳥の巣のような場所に、同じく巨大な卵が置かれていた。さっきの音はおそらく卵を蹴った時の音だろう。


よく周りを見渡せば、馬車を引くのに使われていたであろう馬が半分食べられて死んでいたりしている。


「これって……何かの巣なんjy「グォォォォォォォォォォッ!」ですよねー」


後ろで叫び声が聞こえたので、振り向いてみるとドラゴンがこちらへ突っ込んできている。


中々大きい30m位かな?


おそらく自分の巣を荒らされたと思って怒り狂ってんだろうな…


「多分あれだろうな、ドレインドラゴンって」


だとすると魔法は使えない、なら剣術だけでやっちまおう!


「そういえば初めて使うな~この剣」


じーさんに貰った両刃の西洋剣を抜く。刃渡り60cm位かな?


確か能力は流した魔力に応じての切れ味上昇だったよな、よし。


魔力を流しながら柄をしっかりと握り感覚を確かめる。すると…、


剣が一瞬光った。


「えっ?何今の。まさか魔力流すたびにこんなエフェクトあるの?」


だとしたらスッゲー恥ずかしいんだけど!?


「まぁいいや、とりあえず今はあいつを倒そう」


そう呟きながら地面を蹴り、向かってくるドラゴンへと飛ぶ。


このまま行けば俺はもれなくドラゴンの口の中だ。


だが、ドラゴンとの接触10mほど手前で風属性の魔法で自分の周りの気流を操り、軌道を変える。


そんな突然のことで怒りに任せ突っ込んできているドラゴンが対応出来るはずも無く、


簡単に俺の懐への侵入を許した。今、俺とドラゴンはすれ違っている形だ。


「フッ!」


まず喉へ深く剣を差し込み、そのまま腹まで切り裂く。


「グォッォォ…」


弱弱しい叫びが聞こえるが、完全に通り過ぎるときに体を捻りながら尻尾を一刀両断!




空中で大ダメージを負ったドラゴンはそのまま岩山へ激突した。


そんなことより…


「この剣の切れ味やばいな!スパッといけたぜ!」


さすが神からの貰い物だ、あのエフェクトは少々気になるが能力は申し分ない。


それとさっきの風魔法が食べられなかったって事は、魔法を食べるには自分に接触しないと駄目みたいだな


そんな思考をめぐらせていると、視界の端に先ほどのドラゴンが口にブレスを溜めているのが見えた。


「そんなことやらせるわけないっていう」


ドラゴンの横に瞬間移動して首を刎ねる。


これで1体。


さて…あと一体はどこかね?……。


先にこのドラゴンの処理をしちゃおう。


「ドラゴンって事は中々いい素材だよな?よし、なら全部持って帰ろう。【ゲート】」


ドラゴンが倒れている地面にゲートを開き、異空間へ落とす。


「帰ったら解体して~素材別に分けておこっと」


「グォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」


おっと、どうやらもう一匹のお帰りのようだ。


「さ~て、とっとと終わらせて帰りましょうかね!!」


もう一度剣を抜き、魔力を流してもう一体への討伐へ向かった…。



・・・・・


~sideミシェル~


「拓也さん…、どれぐらいで戻ってくるでしょうか…?」


ミシェルは今さっきクエストへ向かった少年の事を少し心配していた。


いくら強いといっても相手はドレインドラゴン2体、分が悪いだろう。


「拓也君なら1体1時間として…、2時間ぐらいで帰ってくるんじゃないかな?」


「帰ってこなければいいのに…ボソボソ」


リリーさんはまだ怒っているようです…


「こらリリー君、拓也君ももううちのギルド員なんだ。そんなことはいってはいけないよ?」


「はい…」


リリーさんはロイドさんには絶対に逆らいませんね。


ミシェルはなにか、忠実な犬を見ているようで少し笑いがこみ上げてきたが我慢する。


「あっロイドさん、私のクエストの荷物、ギルドのカウンターに置いておいたので納品お願いします」


そういえば自分もクエストを受けていたことを思い出し、ロイドさんにクエスト完了したことを伝える。


今日一日でいろいろありすぎてすっかり自分のことをすっかり忘れちゃってました…





「わかった。リリー君とミシェル君はギルドへ戻っているといい。リリー君、ミシェル君に報酬を渡しておいてくれ」


「わかりました。マスターはどうされるんです?」


「この壁を直してから戻るよ」


「そうですか、わかりました」


ロイドさんは自分が激突して大破した闘技場の壁を見て苦笑いしながらそう言う。


「あの…よろしければ私も手伝いましょうか?拓也さんを待つ間、得にすることも無いですし」


ただ待ってるだけなのも暇ですしね…。


「そうだね、じゃあ手伝ってもらおう」


「あの…マスター、私は?」


「君はギルドに戻って仕事をしていてくれ。あの荒くれ者達は君じゃないとどうしようもないからね」


イケメンスマイルを作りながらロイドさんがそう言う。


「はい!任せてください!」


ロイドさんは本当に人を扱うのが上手ですね…。リリーさんがまるで犬みたいです。


リリーさんははしゃぎながらギルドへ走り去っていってしまった。


「じゃあ私達は早く壁を直しましょう」


       ~修理中~


今ミシェルはロイドさんと二人で、闘技場の壁を直している。


土魔法を使えば案外簡単に直せてしまうので魔法とは本当に便利だ。


「ミシェル君は、拓也君とどこで知り合ったんだい?」


ロイドさんが作業をする手は止めずに、私に質問してきた。


「クエストで行った林の中です。山賊に荷物を取られたらしくて、その…ほぼ何も着てなくて……」


今日のお昼ごろにあったことを思い出しながら喋る。


「拓也君が山賊に荷物を取られる?あんなに強いのに?」


「!確かにそうですね」


よく考えてみればそうだ。ギルマスであるロイドさんを軽くあしらう人が、普通に考えて山賊なんかに負けるはずが無い。


拓也さんは何かを隠している?でも悪そうな人には見えませんし…。


「本当に何者なんだろうね…、拓也君は。」


「なになに?俺の話題?」


聞き覚えのある声が後ろからした。


後ろを振り向くと、そこにはさっきクエストに向かったはずの少年が立っていた


「!?何でここにいるんだい拓也君!?」


「えっ、いやクエスト終わったから戻ってきたんだけど…」


どうやら受けていたクエストを終わらせたようだ。


「だって拓也さんが出て行ってから15分程しか経ってないんですよ!?」


そんなに早くドレインドラゴンを2体倒すなんてありえない



「いや…そんな事いわれても…、ほら、ドレインドラゴン」


彼はそう言うと、私達の前にゲートを開きドレインドラゴンの物と思われる首を落とした。


「拓也君なら早く終わらせると思っていたけど…、まさかこんなに早く終わらせるとね……」


…なぜでしょう…拓也さんのやることにはもう驚かなくなる自信がついてきました…。


「でもこれでクエスト完了だ。拓也君、リリー君から報酬を貰ってくるといい」


「わかりました。それと俺のギルドカードいつぐらい出来上がるんですか?」


「う~ん、明日には出来上がるとおもうよ」


「そうですか。ではまた明日来ますね。ミシェル上いこうぜ~」


そう言って拓也さんはギルドへと歩き出した。


・・・・・


~side拓也~


「ではこちらが今回のクエストの報酬になります」


俺は今、クエストの報酬を受け取っている。


金貨100枚、これで生活費は何とかなるだろ…。


ていうか何とかなるっていうよりしばらく何もしなくてもいいっていう。


ミシェルに聞いたところ、この世界の平均月収は金貨3枚程だそうだ。ミシェルには変な目で見られたが…、後で説明するからまぁいいだろ。つまり何が言いたいかって言うと…、



SSSランククエスト儲かりすぎでワロタ。


こんなクエストばっかやってたら金銭感覚狂っちゃうな…。少し控えよう、うん


「どうも、リリー…さん?」


正直なんと呼んでいいかわからない、だってロリなんだもの。


幼女にさん付けするとかわけわかめっすわ


「リリーでいいわよ、さっきはごめんね。私もむきになりすぎてたわ」


凄い大人だなこの人、ほとんど俺が悪いのに自分から謝ってくるなんて大人だわー。精神は


どこの名探偵だよ!


「いえ、もとはといえば俺が悪いんですし、これからもよろしくお願いします」


「えぇ、こちらこそよろしくね!」


リリーと和解したところで…。


「ミシェル、これからご飯食べに行かない?もちろん俺の奢りで」


「え、いいんですか?」


ミシェルと二人になれる場所を作る。別にいやらしい意味ではない。断じて!


「服のお礼もあるし…、話しておきたいことがある」


今までに無い真剣な雰囲気を出しながらそう言う。


ミシェルも俺が何を言いたいか悟ったらしく…


「わかりました」


一言だけそう言った



・・・・・



「お待たせしましたー紅茶とコーヒーになりまーす。ごゆっくりどうぞー」


俺とミシェルは食事を終わらせ、今から食後の一杯を楽しもうという所だ。


俺がコーヒーを一口、


「さて、本題だが…」


ミシェルは一言も聞き逃さぬよう、俺の話に耳を傾けている。


だがその空気の中で俺は…、


「(うっわ~コーヒー飲めない癖に頼むんじゃなかった)」


そんなことを考えていた。ぶっちゃけそこまで真剣になる必要も無いしね


ただ普段は出せないカッコイイ雰囲気を出したい俺は無理に『キリッ』とした表情を作り、両肘をテーブルに着き顔の前で指を絡ませる。


あ、駄目表情筋つりそう。


「俺はこの世界の人間じゃない。違う世界からある神に頼まれてこの世界に来た。」


ミシェルは驚きのあまり目を見開いているが、俺の話に聞き入っている。


「とある人間が神に匹敵する力を近いうちに目覚めさせる。一部の神はその人間の存在を恐れ…、殺すつもりだ」


殺すという単語が出たことで、場の緊張感がより一層増す。


あえてその人間がミシェルとは言わない。なぜならそんな力が自分にあって尚且つ命まで狙われているときたら、誰でもまいるだろ?


「それを阻止するためにこの世界に送り込まれたのが俺だ」


最高のキメ声でそう言った。


うん、やっててかなり恥ずかしかった。


ていうかミシェルがフリーズしてる。まぁそうだよな、俺も最初は信じられなかったし。


「ど、どういうことですか…?神様がいるんですか?」


お、復活した。


「あぁいるよ」


まさに神ってかんじのやつが。天使とかもいるし


「そして…一部の神様がその人を……?」


「そう、殺そうとしてる」


まぁミシェルのことなんだけどね。


「拓也さんは…、拓也さんは一体何者なんですか!?」


「神の元で修行を積んだ人間かな?」


100兆年くらいね…。


「信じがたい話ですが、拓也さんの強さを見れば納得できますね」


まぁ事実しか話してませんからね…、


あとさっきから最初に飲んだコーヒーの渋みがヤナカンジーなんで口濯ぎたいんだが…


「信じがたいとは思うが、全部本当のことだ。信じてくれとは言わないさ。時が来ればわかることだし。


     

あ、それとこの話は秘密ね!」






ミシェルは今回の主人公みたいなもんだから教えといても問題ないが、俺の情報の無駄な拡散は避けたい。


だって一応極秘扱いなんだもん。俺


「なんで…そんなことを私に教えるんですか?」


『ミシェルが神に匹敵するを持っているからだよ!』なんて言えるわけないですよね~。


「う~ん、この世界に来て一番最初に会ったまともな人間がミシェルだからかな?」


適当にごまかしておく


厳密に言えば一番最初に会ったのはあの山賊たちだが、あの人達はまともな人間ではないと言っておこう。

逃げている途中にヤバイのがいた気がするしね…、


「それじゃあ今度は俺がミシェルのこと聞いてもいいか?」


「え、あぁいいですよ。答えられる範囲なら」


「魔力量と魔力属性は?」


「魔力量は250万で属性は水、土、風、光です」


これはこの世界では中々優秀な方だよな?俺がチートなだけだよな?


でもミシェル、予想していたほどチートじゃなかったな。常人より優秀なくらいか、でもこの年でSSランクって事は戦い方がうまいんだろうなきっと。


「そっか、それとミシェルって有名人なん?昼の門の出来事でちょっと気になってるんだけど…」


これは個人的な疑問だ、エルサイド王国に入るときにミシェルの顔が知られているってどういうことって思ったからだ。


ていうかもしミシェルが有名な人だったら俺やばくない?だって二人きりで食事してるんだよ!?


「あぁそれは…」


簡単に説明すると、


Sランク以上になると異名を付けられ、異名がある人は一度国王に謁見して、異名を持っている人の一覧表みたいなのに載るらしい。異名もちは戦力になるから兵士は大体異名もちの名前知っている。とのことだ。


「ちなみにミシェルはどんな異名なの?」


ちょっと気になる。だって異名とか中二病心を擽るんだもん。


「笑いません?」


「笑わないよ」


少し意識して表情筋をこわばらせる。


「私は『光の姫君』です…恥ずかしい。これ私じゃなくてロイドさんがつけたんですからね!!」


意識していたにもかからわず、少しにやけてしまった。


ロイドさんってやっぱり中二病なんじゃいかな?


だとしたらもう手遅れな気がする。


「そうなんだ、何で自分で決めなかったの?」


「なににやけてるんですか!?笑わないって言ったじゃないですか!」



おっとまだにやけてしまっていたようだ。


「すまん、ちょっと面白すぎたから。ごめんね」


とりあえず誤っておく。ミシェルはまだ怒っているようだ。


「それより帝には異名は付かないの?」


ミシェルの異名の話題から話を逸らすのと同時に、自分の疑問も聞く


「帝に異名はありませんよ。なぜなら帝自体が異名のようなものなのであるからです」


機嫌を直してくれたミシェルがそう丁寧に説明してくれた。


なるほど、少し異名とか欲しいと思っていた自分がいた。


「そっか~ありがと。今…、8時くらいか…。そろそろ帰るよ。今日はありがとう。いろいろあってたのしかったよ」


時刻はいつの間にか午後8時になっており、あたりは真っ暗だ。


こんな時間まで話しこんでしまうとは…不覚だった…。


「そうですね、もう遅いですし今日は解散しましょうか。それと…、」


俺はミシェルに言われるまで肝心なことを忘れていた。


「拓也さん、この世界に来たばかりなのに家、あるんですか?」


「あ、………」


そう、俺は家が無いことを忘れていた。スーっと血の気が引いていくのがわかる。


だってしょうがないじゃん。いろいろありすぎたんだから、今日。


「ヤバイ…、どうしよう。異世界生活初日からホームレスとか…」


ちょっとシャレにならない。お金はあるのにホームレスとか。


「ミシェル…この近くに宿屋とかない?」


あるならそこに行くしかない。


「あることにはありますけど…宿屋のおじさんが病気で近頃開いてませんね」


「なん……だと」


詰んだ。これは終わった。ふざけんなよ!異世界生活1日目からホームレスはマジで笑えない。


「いやまだ手があるかもしれない『創造』の能力でおじさんを治すか?いやそれなら家を作ったほうが早くないか?どちらにしろそんなことに神の力を使ってもいいのか?いやよくない(反語)神はなぜ俺にこんなにも試練を与えるのかそういえば神はじーさんだったな今度あったら鼻にわさびを詰めてやるセラフィ…」


傍から見たら余裕で通報されるレベルの超早口の一人語をぶつぶつといっている俺。


はい、キモイですねわかってますよ。


そんな今にもダークサイドに堕ちそうな俺に、天使から声がかかった


「あの…拓也さんがよければうちに来ませんか?」



「……。あの、今なんて?」


何か幻聴のようなものが聞こえた気がするので聞き返す。


「いや…、よければうちに…」


どうやら幻聴ではなかったようだ。


あばばばばばば。何!?これはお誘いですか!?


いや、ミシェルはおそらくただの良心でこう言ってくれているんだろう。そうに違いない。なんたって天使ですから


そうじゃなかったらいろいろとヤバイ。主に理性とか理性とか。


「い、いや~女の子の家に泊まらせてもらうのは悪いですすしぃーご両親に説明できないと思うのでちょとー」


ちょっと(?)動揺が隠せていないが、とりあえず答えることは出来た。


そう言い少しでも動揺を紛らわす為に、コーヒーを一気に呷る。


「それなら問題ないです。親は私が小さいときに死んでしまっているので家には私ひとりですよ」


「ブッ!!」


「ちょ!大丈夫ですか!?」


コーヒーを盛大に吹き出した俺は思考を巡らせる。


どういうこと!?何でこんなギャルゲーみたいな展開になってんの!?あぁ俺の家が無いからか、把握。いや、これはギャルゲーというよりエロゲーな的展開なのではないか?まずい。だとしたらひっじょーにまずい。数々のエロゲーをやってきた俺だがさすがに三次元では……だってまだ高校生だものしょうがないね!


ここまで0.1秒!!


とりあえず冷静になろう。ハイ深呼吸。


………。よし、落ち着いた。


「そうか、ご両親のことお気の毒に」


ミシェルも親を亡くしているのか…知らなかったな…。


「いえ、もう昔のことですしあまり引きずってませんから」


そう言いミシェルは手元にある紅茶を啜り、何かを思い出しているような目をして少し微笑む。


「それにあの家に私一人だと少し寂しいんです。拓也さんが来てくれれば楽しいと思いますし」


今度は俺を見てニコッと笑う。


確かに一緒に住むメリットはあるな…


ミシェルは神たちに狙われているから出来るだけ俺が近くにいたほうがいいかもしれないし…


あと個人的に癒される。


「本当にいいのか?俺なんかを家に住まわせて。俺はこれでも一応男だぞ?」


「えぇ拓也さんは悪い人には見えませんし…、それにいずれこの世界の為に戦ってくださるわけですしね」


つまり男として見られてないわけですね。


しかしありがたいことに変わりはない。


「それじゃあお言葉に甘えるとしますかね」



「わかりました。では帰りましょうか」


俺がそういうと、ミシェルは少し嬉しそうにしながら席を立った。


「わかった。じゃあお会計してくるからちょっと待ってて」


そういい残し、カウンターへ向かう。


「合計で銅貨8枚になりま~す」


あ、俺金貨しか持ってなかった。


ちなみにこの世界のお金は、


銅貨10枚→銀貨1枚 銀貨10枚→金貨1枚となっている


簡単に言えば、銅貨=1000円 銀貨=10000円 金貨=100000円


位に考えておけば大丈夫だと思っている。


「すみません。金貨しか持ってないです」


「大丈夫ですよ。今お釣りを用意するので少々お待ちください」


完全に迷惑行為だよね?だって8000円ぐらいの買い物で100000円を出すとかやられたら俺だったらうっとうしいと思うし。


「お待たせしました。銀貨9枚と、銅貨2枚ですね。ありがとうございましたー。またのお越しをお待ちしております」


えぇ、完璧なマニュアル通りの素晴らしい接客でした。


ミシェルを外で待たせているのでとりあえず外へ向かう。


「おまたせ~」


今の気候は春らしいが、やはり夜になると肌寒くなるな…。


その中で待たせていたミシェルに少し申し訳なく思う。


「いえ、そんなに待ってませんよ。では帰りましょう」


「あぁそうね、帰ろう」


今からミシェルの家に行くことを思い出し、かなり緊張しながら、おぼつかない足取りでミシェルの隣を歩く。


「拓也さんってこの世界に来る前は何をしてたんですか?」


「普通に学生かな。魔法も無い世界だったし」


昔のことを思い出しながら喋る。


そういえば樹…、元気にしてるかな~、お別れも無しにこの世界に来ちゃったし、でもあいつは俺のこと覚えてないだろうし。


「魔法が無かったんですか…、拓也さんの世界って」


そりゃあこっちの人にとっては魔法が無いのはおかしいと思うかもしれないが、俺も車が走っていない街中を見るのは正直初めてだ。


文化の違いって奴かな?ちょっと違うか?まぁいいや。


「その代わりに科学が発達していて豊かな世界だったよ」


一部の国と地域では豊かなんて決して言えないが説明も面倒なので割愛する


「そうなんですか…嫌ではなかったんですか?この世界に来るのは」


抵抗が無かったといえば嘘になるが…。





「まぁ抵抗が無かったわけじゃないけど楽しそうだったしね、この世界」


特に魔法があるっていうのがなおよしだった。


「そうですか?聞いてると拓也さんの世界の方が楽しそうですけどね」


あれだ、隣の芝は青いって奴?勉強苦手なんでよくわかりません。


「いやぁこの世界の方が…」


「いえいえ……」


そんな取り留めのない会話をしながら歩き続ける…。


「着きました。ここが私の家です」


歩いている間にどうやらミシェルの家に到着したようだ。


時刻は8時45分。あたりは真っ暗だ。


「これは…中々立派な家だ……」


ミシェルの家は町から少し離れた、草原とまではいかないけど緑が豊かな場所にポツンと建っている2階建てのログハウスのような家だ。


結構大きい。


なんか木こりとか小人が住んでそうな家だな。


「そうですか?嬉しいです」


ミシェルは隣でふふっと少し微笑む


それに立地条件も中々いと思う。


少し歩けば市場や街中、ギルドに行けて便利だと思う。


「確かにこの家に一人は寂しいよな…」


確実に一人が住む家にしては大きすぎる。掃除とか大変そうだな…


家事は出来る限り手伝おう…、うん、そうしよう。


「そうなんですよね…、でも拓也さんが来てくれたからもう寂しくありません」


今度は俺の顔を見ながらニコッと笑い…


「家の中を案内するので行きましょうか」


家に向かって歩き出した。


笑った顔はマジ天使。それ以外のときはクール系の顔だから笑うとね…えぇ、可愛くてね。


ギャップ萌えってやつ?


「拓也さん?いきますよ?」


そんな思考をめぐらせているとミシェルから声がかかった。


「あぁごめん今行く」


適当に返事をしながら小走りでミシェルの後を追う。


玄関に着くと、ミシェルは持っていたポーチから鍵を取り出すと、鍵口に差し込みドアを開けた。


「ただいま」


ミシェルはそう呟きながら家の中へと入っていった。


誰もいない家にただいまってちょっと寂しいよな…。


まぁ俺もそうだったけど。


「お邪魔します」


そう言いミシェルに続いて家に入る。




家の中は綺麗に整頓されていて、とても落ち着いた雰囲気だ。


家具などもほとんど木で出来ており、自分が森の中にいるようなリラックスした気分になれる。


「家の掃除って全部ミシェルがしてるの?」


あまりにも部屋の中が綺麗だったので思わずミシェルに聞いてしまう。


「えぇ、そうですよ」


ミシェルはそれが当然のことのように答えた。


すごいな…、この中々広い家を一人で掃除するとか…、


主婦かっ!なんて突っ込まないぜ!


そんなことを考えながら近くにあったソファーに座る。


「そりゃぁ凄いな、俺だったらやってる途中で体が拒絶反応起こしちゃう」


ぶっちゃけ部屋は不便じゃない程度に片付けておけばいいと思う。


俺がそう言うと、ミシェルは口元を隠しながらふふっと笑い、


「私が掃除するから大丈夫ですよ」


そうですか。つまり俺の部屋にエロ本があったとしたら…、


考えるのはやめよう。


ていうかさっきからミシェルが上機嫌なのは俺がこの家に住むことになったからか?


いや、そもそも出会って半日程で上機嫌かわかるものか?でもミシェル見るからに上機嫌だし…、


まぁ上機嫌ってことでいいか。


「そうか。あと俺に手伝えることがあったら何でも言いな。出来ることは何でもやるから」


俺はミシェルの家に居候ということになる。


つまりミシェルのお願い=命令というわけだ。


ちなみにさっきから喋り方をちょっと馴れ馴れしくしているのは早くお互いの仲を深めるためです。


これから同じ家に住むわけだしね。


「わかりました。では何か困ったことがあったらお願いしますね」


ミシェルがニコニコしているのを見るとやはり上機嫌なようだ。


「あぁ、それと部屋は私の隣の部屋を使ってください。階段を上って一番左端の部屋です」


どうやら俺の住む部屋が決まったようだ。


わーミシェルの隣の部屋とは……、


これはイベントが起きるかも!?


「了解だボス」


「?どうしたんですか?」


「あ、わ、わかった」


駄目だ、ちょっとしたジョークも通じないか…。


少しテンションが上がったのでボケたがどうやら通じなかったようだ。


ちょっとショック…。


そうか、この世界には向こうの世界のネタが通じないのか。


気をつけないと俺ただの変人になってまうぞ!


気をつけようそうしよう。




それからは時間がすぎるのが早かった。


今日1日でいろいろなことがありすぎて、めちゃくちゃ疲れていた俺は、シャワーを浴びるとミシェルに「先に寝るよ。お休み」とだけ言って自分の部屋へ向かった。


シャワーを浴びたあと、着替えが無いことにきずいた俺は、仕方なく『創造』を使い服を作り出した。マジで焦ったよ、まったく。

いくら首から下がイケメンだからといってさすがにモロは…ね…。


というわけで今俺は与えられた部屋にいる。


「疲れたー」


生活の環境が変わると疲れるってよく言うけどまさかここまでとは…


ちょっと今日あったことを思い出してみようかな…。


・地面に埋まって登場!


・山族に見つかり身包み剥がされる


・葉王


・運命の出会い(笑


・山族から逃走


・阿部さん


・ギルマスとバトル


自分のことだけど中々カオスな1日だったな。


「俺…この世界でやっていけるかな……。」


初日からこんなんじゃ駄目な気がするのは俺だけ?


「まぁ今日は寝よう。明日のことは明日考えればいいし」


そうぶつぶつ言いながらベッドに入る。


ベッドの中で少し動きながら寝やすい位置を探して、徐々に眠りに落ちていく。


もう少しで寝られそうな時だった


『鬼灯君、聞こえているかね?』


聞きなれた声が脳内に響いた


『えぇ、聞こえてますよ。なんですか?こんな時間に」


眠たかったこともあって少しいらいらした口調でそう答えた。


『おぉそれはすまんの。そちらではそろそろ1日が終わるころだと思ってうまくやっているか心配になってのぉ…」


声色から俺が少し不機嫌なのを悟ったじーさんはそう聞いてきた。


なんだ。心配して念話してきたのか…、


『すみません。疲れててちょっとイライラしてたので…』


じーさんが心配してくれているのは少し嬉しい。


とりあえず先ほどの自分の態度のことを誤っておく


『いやいや構わんよ。それよりうまくやっているかね?』


『えぇ、ミシェルとも接触しましたし…それに泊まる場所も確保しました。それとミシェルに俺のことを少し話したんですけど大丈夫でしたか?』


そういえば俺、じーさんの許可なしで喋ったんだった。


まぁいいよね。それで俺の仕事に支障が出るわけじゃないし、





『そうか…。それならそっちの世界でのことは全部鬼灯君に任せる』


そうですか全部丸投げですか。


もし取り返しのつかないことやっちゃったらどうしよう…、そんなこと起こらないように気をつければいいよね!


『わかりました。それと貰った剣が今日いきなり光ったんですけど、あれって仕様なんですか?』


ふと今日の初クエスト中に起きた出来事について聞いておきたい


あれが毎回だったら相当恥ずかしい…。


『光った?あぁ、それはじゃの…、新しい能力が目覚めたということじゃ』


あぁ、そういえばじーさん言ってたね。


俺がこの世界に来る前に、


『それで?どんな能力が目覚めたんです?』


使える力が増えるのはちょっと嬉しい。頑張ってよかったって思えるしね。


いったいどんな能力が増えたんだろ?


じーさんは少し黙ると話し始めた…、


『えっとじゃな……、剣に聞いてみてくれ』


WAY?


剣に聞けだと?なにいってんだこのじーさん。


『では、わしは忙しいからこれで…』


じーさんが何故か逃げようとする。


『ちょ、まってk…』


言い終える前に切られてしまった。


「なんだ?何できられたん?」


それにしても剣に聞けとは…、いったいどうしろと?


普通に喋りかければいいのか?いや、それじゃあただの変質者だ。


もうしばらく変質者はやりたくない、本当に。


…………………、どうしよう。


「おーい、聞こえてる?」


返事が無い、ただの剣のようだ。


「そりゃそうだよね、よし寝よう」


自分の恥ずかしいさっきの行動を早く忘れようと寝る体勢に入る。


ベッドに横になり、剣を雑に壁に立てかけたときだった…、


「イッテーナ、モットテイネイニアツカエ!」


聞きなれない声が聞こえてきた。







ん?なんか声が聞こえたような…聞こえてないような……、


耳を済ませてみる…、


「…………。」


「なんだ、幻聴か…、俺相当疲れてたんだな…」


今日いろんな事があったから仕方ないよね


かなり疲れているらしい自分の体を癒すために、改めてベッドに横になる


疲れもあってかすぐに眠気が襲ってきた。


「オイ!ムシスンナ!!」


!?、なんだ?また聞こえたぞ?


「ココダヨ!コーコ!」


「ここだと言われてもどこだよ」


あたりを見渡すが人影は無い。おまけに気配も無いと着たもんだ。


部屋には、簡易なベッドや家具。そして俺の持ち物であるローブと剣だ。


声を発せられる奴なんていない。


「オレダヨ!ケンダヨ」


「剣?じーさんから貰った剣?」


「ソウダ」


「なんだ、お前喋れるのかよ」


剣に聞けってこういうことね、


まさか喋れるとは…、ちょっとビビったじゃないか。


「というか最初喋りかけたときに返事しろや!」


そういえば何で俺無視されたん?


剣にこの対応されるのは流石に悲しいっすわ


「チッ、ウッセーナ」


「おい聞こえてるぞ。へし折ってやろうか?」


なんで俺剣にこんな冷たくされてるん?


あぁそうか。俺にカリスマが足りないんだね、把握。


「まぁいいや、で?新しく目覚めた能力ってなんなの?」


「ソウソウ、オレガアタラシクメザメタノウリョクハ『ブンレツ』ト『ケイジョウヘンカ』ダ」


「分裂と形状変化?詳しく頼む」


俺がそう問うと剣は丁寧に説明してくれた。


簡単にまとめるとこうだ。


・分裂は武器のコピーを作り出すというものだ。ちなみにコピーの方もオリジナルとまったく同じ能力を持っている。


・形状変化とはこの剣をありとあらゆる武器へ形状を変えることができる。ただし変化できるのは武器のみとのことだ。


えぇ、前にも増してチート要素が増えましたね…、




「へ~、つまり俺は前にも増してチートな力を手に入れたと…」


「ソウイウコトダ、タイセツニツカエヨ?オレノコト」


「善処しよう。それとお前名前は?」


一応こいつがこれからの相棒になるわけだし、名前ぐらい教えてもらってもいいよね、


「ナマエ?ソンナモンナイ」


え?こいつ名前無いの?かわいそうに…、


それなら…


「よし。俺がカッコイイ名前をつけてやろう」


神がかった俺のネーミングセンスに震え上がるがいい!


どんな名前にしてやろうか?


「ナマエヲツケルノモオマエノヤクメダ、オマエガオレノシュジンダロ?」


えー、そうだったの。


というかこいつ失礼な態度とるくせに一応俺のこと主人として認めてるんだな。感心感心。


それも俺のカリスマ性が成せる技ってやつ?


「わかった。俺のネーミングセンスに驚くなよ?」


剣だろ?見た目は西洋剣だし……


「エクスカリバー!」


「キャッカ。アンナヤツトオンナジナマエナンテシンデモゴメンダ」


結構カッコイイと思ったのに。だって伝説の聖剣だよ?


あんな奴って事はおそらくほかにもエクスカリバーさん(剣)がいるんだろうな。どこにいるんだろう?もしかして剣が住んでる町とかあったりして、


なにそれ見たい。


さて、他にどんな名前がいいだろうか?


「じゃーあー、ロンギヌス」


「キャッカ。モウケンジャナイジャン」


じゃあどんな名前がいいんだよ!名前なんて適当でいいじゃん!


おっと本音が漏れてしまったようだ。気をつけよう。


他になんかなかったかな?カッコイイ名前、


……………。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、思いつかねぇぇぇぇぇ。あれだ、お前ジョニーな、よし決定!拒否権は認めん」


疲れもあったため、半ばやけくそになり、そう叫んだ。


もういいよね、俺頑張ったよね。はいそうです私にネーミングセンスなんてこれっぽっちもありません。ちなみに先の二つも神器の名前です。


どうせ却下されるんだろうな、はいはい知ってますよー。


「ヘージョニーカ、ナカナカイイナ!」


え?なんかこいつ気に入ってるんですけど!?そんなに気に入ったか?アメリカでありきたりな名前第1位に輝きそうな名前だよ?いいの?


「え?本当にジョニーでいいの?」


「アァ、ナカナカイイヒビキダ」


「そうか!これからよろしくな!ジョニー!」



ジョニー…、ジョニー……。


「ブフォッ!駄目だ絶対笑っちゃう」


だってジョニーだぜ?戦闘中に『行くぜ!ジョニー!』とかキモすぎるだろ、


「ヒトノナマエヲワラウナ!」


「え?だってお前人じゃないじゃん」


「ソウダケド…」


本当のことを言われ、ジョニーは何も言えなくなった。


このまま黙っていると話が進まないためこっちから切り出す。


「まぁいいや、それと外で喋るなよ?喋る武器なんておそらく無いだろうからな」


「ソレナラシンパイスルナ、オレノコエハオレガエランダヤツニシカキコエテナイカラ」


「ん?つまり念話みたいなもんか?」


「ソウダ、ダガオレガエラベバダレニデモキコエルケド」


なるほど、つまり外でこいつと喋ってたら俺は独り言をぶつぶつ言っている不審者になってしまうと…、気をつけよう。


「選べばってことはお前が話し掛けようと思えば誰にでも喋りかけられるってことだな?」


「ソウダ」


「よし、主人である俺が命ずる。外では俺以外に絶対喋りかけるな、OK?」


外でこいつがいろんな奴に喋りかけたらこの国はとてもホラーな国になりかねないからな。そんなことになっては完全に俺の責任だ、


「エー、ナンデ?」


「そりゃお前、怖過ぎるだからだろ。街中で姿の見えない奴から喋りかけられるなんて普通の奴だったらトラウマだぞ?」


昔の俺だったら失禁して失神するか、中二病に目覚める。


「デモチョットグライナラ…」


「駄目だ、いろいろ面倒なことになる」


「イイジャン!チョットグライ!」


「うるせーな!言うこと聞け、折るぞ!」


そんな会話をしていたときだった


ある人物の声が聞こえてきたのは…


「えっと……、何してるんですか?拓也さん…」


部屋のドア近くにミシェルが、何か残念な物を見る目をして立っていた


やめろ、そんな目で見るな。興奮するだろ?


…さて、冗談はここまでにして……、ヤヴァイ。どうしよう


ジョニーの説明だと、はたから見たら今の会話は俺が独り言を言っている非常に気持ち悪い光景に見えているはず。


「え、えっとー。ほら、ジョニー説明してあげて」


さっきまで喋っていた剣を掴みミシェルのほうへ突き出す


だが…ジョニーは喋らない


「拓也さん疲れてたんですね、失礼しました」



この後ミシェルの誤解をとくのに2時間程かかったのはまた別のお話。


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