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神様のお使い  作者: 泡沫にゃんこ
第二部
35/52

前節のNo.2…彼の名は"ジャック"



突然だが、皆さんは”盗賊”というものをご存知だろうか?



そう。盗みを生業とし、己の欲のままに生きる非常にヒャッハーな生き物である。


この世界でも彼らは、主に旅人や荷馬車を襲うという比較的小さな事しかしないが…時として、国家から狙われるような大罪を犯すこともあるのだ。



例えば…



「ん~ッ!!?むううぅぅぅッ!!!!?」



「へぇ~、これがエルサイド王国王女か!全く!!手間取らせやがって!!」



「それにしてもコイツ探すのに何日かかったんだ!?通学路で張っててもこねぇしで大変だったぞ!!」



「へへへ!!だけどこうしてちゃ~んと任務は完了したんだ!!!とっととズラかるぜッ!!」



「「あいよぉッ!!」」



このように一国の王女を攫ったりとか……。



「むうぅ!!」



エルサイド国王女…ハイメルシューラルム=エム=エルサイドに布を噛ませ、目隠しをさせた盗賊Aは、迅速且つ丁寧に彼女を荷馬車に積み込むと仲間である盗賊Bと盗賊Cに指示を出し、彼らを二台に乗るように手でサインを出すと、自分は素早く馬に鞭を打ってその場を後にするのだった。



・・・・・



数十分馬車に揺られた頃だろうか?ある場所で場所は止まり、盗賊たち連れられ歩くメル。


目隠しのせいでここがどこなのかは分からない。


しばらく歩き、どうやら目的地に着いたようだ。ようやく体を簀巻きにしていた鬱陶しい縄を解かれたが、今度は手錠のようなもので後ろ手に拘束され、その場に跪かされる。



そして目隠しが解かれ、彼女の視界に光が戻った。



「んッ!?」




その刹那、驚愕の表情を浮かべるメル。



それは自分が牢の中に跪かされていること?それともここが牢の中の

筈なのに、まるで普通の部屋のように綺麗だということ?



どれも違う。



「クックック…中々の手際だ」



「ハッハッハ!ジャック程じゃねぇよッ!!」




彼女の視線は…盗賊Aが”ジャック”と呼んだ、黒髪黒目の人物に釘付けになっていた。




「んん!!!むぅぅぅん!!!」



半狂乱になって滅茶苦茶に唸るメル。


するとジャック飴を口に放り込み、牢屋を開けて彼女の前に歩み寄ると、眼前で取り乱して自分に対して敵意を剥き出しにする金髪巨乳を嘲笑し、彼女の肩を軽く足の裏で押すようにして倒した。



「おいおい、うるせえ豚だな。あんまり騒ぐと養豚所に放り込むぞ」



ケラケラ笑い声を上げる目の前のフツメンをメルは睨み付け、何とか手の拘束を解こうと力を込めるが…恐らくこの手錠が魔力を封じているのだろう。


しかしそんな技術はこの王国にはまだ無い。他の大国でもそんなものを発明したなどと聞いた事は無い。


だが彼女は…そんなとんでもないことが出来る人物を、一人だけ知っていた。



「むぅぅ!!」



その人は黒髪黒目で、一見どこにでもいるようなフツメン。よく飴を食べており、何かあるごとにそれをくれたりする。


王国では『剣帝』という地位と共に、王国最強と呼ばれる存在…



そう…



「あ、なに?餌をよこせ?しょうがないなぁ…ほら食え、さっき拾ってきたどんぐりだ」



鬼灯拓也である。




メルは目の前のどんぐりが大量に注がれた木製の器を頭突きで張り倒すと、彼を強く睨み付け、伸ばした足で彼の膝横を何度も蹴りつけた。


すると牢屋の外で椅子に腰掛けテーブルに足を掛けてナイフを舐めていたAが血相を変えて飛び上がってこちらへ向かってくる。



「ッこのアマ!!ジャックに何しやがるッ!!」



身動きが出来ない上に、彼らは盗賊。普通は怖いだろう。


しかしメルはそれ以上に、目の前の彼に対する怒りが勝ってAの言うことなど耳に入っていなかった。



「おいおい待て待て。女性には優しく…そうだろ?」



拓也はくるりと首だけでAの方へ振り向くと、謎の爽やかスマイルを浮かべ、軽く片手を彼に突き出して制す。


そして軽くククッ!と気色悪く笑うと、ウインクしながらそう発言した。



「あんなすっげぇ勢いで何度も蹴られたのに…怒らねぇなんて……」


「「「さ、流石ジャック!やっぱ俺たちのNo.2だぜェェ!!」」」



何故か彼の言動に感動してハモるABC三人。メルは最早何がなんだか分からず頭が痛くなってきた。


するとジャック…もとい拓也は、何かを考えるように顎を指弄りながら、何かを決めたように一息吐くと、まるで忠犬のように彼の指示を待つ盗賊ABCたちに向けて口を開いた。



「コイツはこれでも王女…よし、お前らは追っ手が来ていないか見回りを頼む」



「「「任せてくれジャック!!」」」



すると彼らはすぐさま綺麗にビシッと敬礼を決めると、我先にとこの地下室を後にした。


残されたメルはまだ拓也を威嚇するように低く唸っているが、彼のことだ。きっと何か理由があるのだと自分に言い聞かせ、彼に向かって剥き出しにしていた敵意を収め、腑に落ちない表情のままだが彼の目をしかと見つめる。



「さて…行ったか…」



どうやら彼女の予想は的中していたようだ。



拓也は彼らが出て行ったドアの方を向きながら、外へ駆けて行く足音が完全に聞こえなくなった頃そう呟く。


彼は呟きながらメルの方に向き直り、散らかしたどんぐりを器の中に片付けながら、メルの口に噛ませてあった布を取り払った。



ようやく口を開放された彼女は、大きく口を開けて思い切り息を吸い込む。


地下室の筈なのに、地下独特のジメジメとした嫌な感じはしない。むしろ心地良くさえ感じる。


よく分からない妙な感覚に、メルは思わず笑みを浮かべて心を落ち着かせると、何を考えているのかは知らないがとりあえず彼の話を聞いてみようと顔を上げた…次の瞬間。



「俺のどんぐりが食えねぇってのか?ほら、もっといっぱい食って存分に肥えろよ」



彼女の頭頂部目掛けどんぐりがたっぷり入った器をそぉい!した拓也が、ニヤニヤと最高に腹立たしい笑みを浮かべて怒りのあまりプルプルと小刻みに震えるメルを挑発するようにそう口にした。



ちなみに…最高級のイベリコ豚はどんぐりが主食である。



そしてこの後、テコンドーに目覚めたメルに拓也がボコボコにされたのは言うまでもないだろう





「まったく…本当に凶暴なやつ…だ…」



ボコボコに腫れ上がった顔でニヤリと強がるように笑みを浮かべた拓也は、ダメージを受けすぎてガクガクと笑う膝に手をついて鉄格子を支えに起き上がる。


見事な蹴りだけのコンビネーションで彼をそんな状況に追い込んだ張本人。メルは立ち上がった彼を今一度威嚇するように警戒態勢を取って犬のように低く唸りながら鋭く睨み付け、叫ぶように彼を問いただした。



「あなたは一体あんな盗賊と一緒に何をしていましたの!?答えなさいッ!!」



「誘拐した君の豊満なメロンを堪能……ってのは冗談ですはい。


とりあえずこれを見てくれ」



自分の発言の途中でメルがステップを踏み始めたことに危機感を覚えた拓也はすぐさまその発言を中断し、どこからとも無く数枚の書類を取り出し、メルの近くまで歩み寄って彼女の手錠を外し、それを手渡した。


そして少し表情を引き締め、虚空を見上げる。



「色々調べてたら…俺のところにちょっとした情報が入ってきてな…」



「『メル…I(まだまだ成長の余地アリ)。文字の通り愛があり、包容力(物理)があり、ちょっとした動作で揺れ動くソレは、男の煩悩を刺激してやまない。


ここまで大きな”モノ”を見せ付けられれば、どんな男でも道徳心などかなぐり捨ててしまうだろう。


しかし…影が薄いのが玉に傷である。』


って、なんですの…これ?」



書類の内容を音読するメルは、自分について記載されている最後以外は意味不明な内容に思わず首を傾げた。


受け取った他の数枚を見ても、『ミシェル…C+』や『ジェシカ…地平線』『セリー…C』などと意味不明なことが記載されている。



すると真剣な雰囲気をかもし出していた拓也が突然、げっ!と

表情を歪めると、彼女の手の中からその書類を慌てた様子でぶんどった。



「HA☆HA☆HA☆!とんだミステイクを犯してしまったようだね!見てもらいたい書類はこっちだったよ!」



引きつった笑みのまま取り上げた書類をゲートに放り込み、気持ち悪いほどの満面笑みを浮かべ、何故かその顔からは尋常でない程の冷や汗が滝のように流れる。



とりあえずさっきの書類が何だったのか気になるメルだったが、目の前の彼が放つ『早くそっちを読め』という無言のプレッシャーに負け、仕方なく手元の書類に視線を落とした。




「えぇと…『王女誘拐で身代金ガッポリ大作戦』…?



何ですの?この頭の悪そうな計画書は」



「さっきの三人が企画、立案、実行したモノだ。まぁ俺が手を加えて色々変わってるんですけども」



「なるほど…あなたは帝という地位を持ちながら盗賊に協力し、あまつさえ自らの仕える王族の一人を攫うなどという大罪を犯した謀反者というわけですわね」



「俺がそんなことするメリットが無い。



んでお前が攫われるって情報を得たからこうして潜ってるわけだ」




しかしメルは疑問に思う。


一人で強大な力を有する彼だ。そんな情報を事前に得ていたのだったら、何故自分が攫われるまで行動を起こさなかったのだろうか?と。


別に彼に腹を立てているわけではない。ただ彼女の馬鹿ではない為、単純に疑問に思ったのだ。


そこで彼女は素直に彼に尋ねてみる。



「では…何故私が攫われるのを待っていたのですか?」



すると拓也は上着のポケットの中から小瓶を取り出し、それをメルに見えるように手の上に乗せた。


小瓶の中には黒い丸薬が数個。光を吸収しているかのように黒いその球体をまじまじと見つめるメルは、脳内を漁ってこの丸薬の記憶を引き出す。



「確か…私たちが一年生の時の学園祭で、二年大将が使用した薬物。


現在発覚している効果は魔力生産量の増幅…


製作者は恐らく”神”に相当する何者か…でしたわね?」



「まぁ正解。”現在”というのもこの薬は俺がどれだけ調べてもまだ未知の部分があるからだ。


それにお前の言う通り製作には間違いなく神が関わっていると見て間違いない。


それで俺がここに潜ってる理由だが…メル、3枚目を見てみろ」



拓也に言われた通り、受け取った書類の束を数枚二枚捲る。


すると盗賊たちが書いた汚い文字と雑な表やグラフ、挿絵などで構成された計画書とは対照的なモノが目に飛び込んだ。


そしてメルはこの書類にあらかた何が記載されているかに気が付き、その内容を小さく呟く。



「丸薬の販売…」



「そうだ。あの三人はこれに手を出そうとしている。価格は盗賊なんてやってる奴らには到底支払える額じゃない。


お前を攫うってのも書いてある通り身代金の要求の為。見ての通りアイツらバカだから、大金を得るにはそれくらいしか思いつかなかったんだろ」


話し終えた拓也は小瓶を上着のポケットの中に仕舞い、壁にもたれ掛かって腰を下ろし、少しだけ申し訳なさそうに顔を歪ませると、メルに向かって微笑を浮かべた。



「だが安心してほしい。お前の身の安全は、俺が保障する」



きっと彼も、2年前からどれだけ捜査しても足の掴めないこの丸薬の流通ルートを探るために必死なのだろう。


それにこの薬の流通を阻止しなくては、いずれ大きな犯罪が起こることは、メルも何となく分かっていた。


そして彼は、いずれ王国…引いては世界中に降りかかるであろう根源を絶やすためこうして奮闘している。



「別にいいですわ、私の身一つで解決するのでしたら…協力させていただきます」



メルも彼と同じように微笑を浮かべると、自分も協力するという皆を口にした。


拓也は少し意外だったのか、しばらくの間目を見開いてフリーズしていたが、彼女も彼女なりに考えているのだろうと考えをまとめると、いつものようなニヤけ面をその顔に張りつける。



「じゃあ…まず服を脱ぎます」



しかしそのニヤけ面は次の瞬間炸裂した彼女の右ストレートによって粉砕されるのだった。


・・・・・



数時間後…


この地下室には窓が無い為、外がどのような状況化は分からなかったが、壁に掛けられた時計から、現在時刻が午後八時だということは分かった。



「そういえば…あなた、今回は独断で動いているんですの?」



鉄格子越しに彼が扇のようにして手に持つトランプのどれを引こうかと吟味しながらそう呟くメル。


対する拓也は、彼女が引こうと指を向かわせたカードを空間魔法で瞬時にジョーカーと入れ換えながらその問いに答える。



「まぁほぼ独断だな。ただお前を巻き込むわけだから国王とミラーナさんには何が起こるかは説明してある。


だから今頃お前抜きの夕食を堪能してんじゃね?」



「ババですわ…」



「いや、人の話ちゃんと聞けよ」



「それにしても信頼されていますわね…まさかお父様とお母様が…私を売るなんて……」



「…この丸薬は異常すぎる。だから早めに対策しておかないといけないし…こんなチャンス…今逃したら次はいつ巡ってくるかも分からない。国王もミラーナさんも苦渋の決断だったことだろう。


だから俺はこのチャンスを絶対にモノにする」



ユラユラと静かに闘志を燃やし、小さく決意する拓也の向かいで、ババを引いたメルは先程から拓也にババが渡ってもなぜ一回で帰ってくるのだろうと自分の運の悪さに落胆し…彼の言葉など耳に入っていない。どうやらあまり気にしていないようだ。



「それで…ちゃんとミシェルさんには話しているんですか?」



「……あぁ、ちゃんと話してある。ただすごい事細かなところまで説明させられたがな…それこそどう進めてどういった結果に終わるのかまで。


もの凄い剣幕で迫られるから説明に小一時間は掛かった」



「そりゃあ心配でしょう。今回の相手は神なのでしょう?ミシェルさんよく言ってますわ…危ないことするときはちゃんと話してほしいです…って。


あなたは一度、あのオーディンという神と戦って死に掛けたことがあることをちゃんと覚えていますの?」



「嫌という程」



メルが広げるカードを吟味し、一枚引いて苦笑いを浮かべた拓也は、自身の持つカードをシャッフルしながらそう答えた。



「あの時、ミシェルさんがどれだけあなたのことを心配していたかは知っていますわよね?」



「…あぁ…鼻ドリルで傷口を抉られたのだけは絶対忘れられないだろうな」



「あなたは…まぁいいですわ。って、またババですわ…」



「貴様の行動パターンは既に読めているのだよ」



そしてまた自分の元に戻ってくるジョーカー。それを見て面白そうにニヤけ面浮かべる彼を見て思う。



「(ミシェルさん…拓也さんのことが大好きなんですわね)」



昔は自分もこんな彼に惹かれていたということを思い出し、なんだか面白いような懐かしいような妙な感覚に陥るメルは口元を押さえて口元のつりあがりを隠し


同時に、普段、同じ女性でも思わずカッコいいと思ってしまう程クールな彼女のそんな一途で可愛らしい一面を彼の発言から知り、遂に堪えきれなくなって小さく『クスクス』と笑い声を漏らした。



「どうした、勝ち目が無いと分かって現実逃避か?」



「いえ、まだまだ勝負はこれからですわ」




・・・・・



更に数時間後…日付は変わり、現在時刻は深夜0時。


階段を慌しく下りてくる音で、拓也は手元の小説から目を離し、同時に勢い良く開け放たれた扉の方に視線を向けた。



「ジャック!追っ手は今のところ来てないみたいだぜ!!」



「そうか…それなら……次に進むか」



パタリと本を閉じ、ニヤリと不気味の降格を吊り上げて笑うそのさまは、演技だと分かっていても盗賊そのものにしか見えないほどリアル。


鉄格子の内側で猿轡を噛まされているメルは、彼のその発言が何を意味するのか…彼が話してくれた計画の一部を思い出し、瞬時に理解する。



「ヒャッホー!待ってましたぁッ!!」



「ヒャヒャヒャ!腕が鳴るぜぇッ!!」



楽しそうに各自声を上げる盗賊ABC。


拓也はいきなり騒ぎ出した彼らをたしなめるように両手

軽く突き出して制し、彼らを静かにさせると、静かに問い掛けた。



「決行は本日午後三時~四時頃。


目的は…ちゃんとわかってるな?」



「もちろんだぜ!」



「王女を受け渡し金をガッポリ受け取った後、俺たちが逃走する為の時間を稼ぐ為の新たな人質の確保!!」



「新たな人質とする人物は、ある程度影響力のある人物!!」



仲良く3人で説明してくれた彼ら。


拓也は正解だと言うように数回深く頷き、楽しそうに声を弾ませながら…彼らに問う。



「では…新たな人質とする人物は?」



「エルサイド国立学園三年!」



「学園内でも指折りの実力者と言われギルド『漆黒の終焉』では現在Sランク!」



「王族とも関わりがあってこの王女とも友人!!」



また正解と言うように頷きく。すると拓也は先程とは比べ物にならない程凶悪な笑みを浮かべると、最後に一つ彼らに問うた。



「では…その人物の名前は?」



彼のその問いに、盗賊ABCは顔を見合わせ、三人で声をそろえて答えた。



「「「『鬼灯拓也』!!」」」



「ククク…良く出来ました。



明日は俺も共に行こう」



「やったぜ!ジャックが来てくれれば百人力だッ!!」



「「流石俺たちのNo.2だぜ!!」」



凶悪に微笑む拓也。




そして本日午後、彼の毒牙が自分に襲い掛かるなどと…きっと”彼”は思いもしていないのだろう。



・・・・・



街を行く二人の影。一人は暗めの茶髪の無造作ヘアーの冴えない男子ビリー。もう一人は、今まで下ろしていた明るい茶髪を、イメチェンなのか柔らかな三つ編みにして後ろに下げるセリー。


広めの通りなのに何故か今日は人通りが少ない帰路で、ふと彼女が口を開いた。



「拓也君どうしたんだろう…今日は学園に来てなかったね」



「そうなんだよ。昨日の修行もすっぽかされて結局自主トレだけだったんだ」



「でも偉いね、サボらないんだ」



「うん、まぁ…ね。今日も姿が見えなかったから帰って自主トレにするよ。拓也君から例のシャツ貰っちゃったし…」



事情を知らない彼らは彼がいきなり姿を消えたことを不思議には思っているようだが、そこまで心配はしていないようで。すぐに話題を切り替えてそんな他愛も無い会話を繰り広げた。


するとセリーはあることをふと疑問に思い、隣の彼に問い掛ける



「そういえば…ビリー君は何で強くなろうと思ったの?」



「そ、そうだなぁ…」



彼女のそんな問い掛けに深く考え込むように首を傾げて目を瞑って唸るビリー。


そこで彼は思い出す。そういえば…似たようなことを聞かれたことがあったと。


それは…技の稽古が始まる前、拓也から投げかけられた問い。



『なんで俺の下で強さを求める?』



結構最近のはずなのに、妙に懐かしくすら感じる出来事。


ビリーは少し俯くと、微笑を浮かべたまま彼女の問いに答えた。



「大切な人を…護ってあげられるように……かな?」



返ってきた答えに、セリーは興味を抱いたのか目を僅かに輝かせながら…それこそ楽しいことを見つけたジェシカのような様子…且つ、また少し違った感情も含んだ様子で口を開く。



「へ、へぇ!その大切な人って誰なの!?」



「…あ、あぁごめん!いつか僕にも大切な人が出来るかもしれないからって意味だったんだ!」



まるで今、自分にそういう相手がいるというような誤解を招いてしまったことに少し頬を染めなると、ビリーは慌てて誤りを訂正した。




ハハハ、と少し恥ずかしそうに笑いながらセリーを見つめるビリー。


セリーはなんともいえない表情を浮かべると、適当に相槌を打って前を向く。


そして…視線を前に向けたまま固定し、その歩みを止めた。



「どうしたの?」



前を向いて固まった隣の彼女に首を傾げながらそう尋ねる。が、彼女はそんな言葉がまるで耳に入っていないかのように反応が無い。


そこでビリーは彼女が何を見て硬直しているのか…確かめる為に彼女の向ける視線を辿った。



「ヒャヒャ!女連れなんて聞いてないぜ!!」



「どうするジャック!?」



「ククク…女性には優しく…そうだろう?


しかしまぁちょうど良い。彼女には彼が攫われたことを広めてもらう役を担ってもらうことにしよう」


「流石俺たちのNo.2!不測の事態でもすぐに対応できるなんて!


今日もキレッキレのナイフみたいな男だぜッ!」



次の瞬間ビリーの視界に映ったのは、明らかに賊という風貌の三人と、ホワイトマスクを着用した黒髪の男。


ビリーとセリーは思う。そのホワイトマスクの人物の声…マスクのせいで少し篭って聞こえたが…どこかで聞き覚えがある…と。


しかし…ビリーはそれ以上に警戒していた


敵意がある人物が三人に、ホワイトマスクの彼の攫うという発言。



「な、何者だ?僕たちに何の用なんだよ!」」



ジリリッとすり足で前へ踏み出し、セリーを護るように背後に隠して拳を構える。


そして背後の彼女にだけ聞こえるようにそっと呟いた。



「逃げて」


「!…そ、そんな…ビリー君を置いてなんていけないよ」


「ダメだ、相手は四人…僕は多分勝てない。だから…せめて君だけでも」


「絶対ダメ。逃げるくらいなら…私も一緒に戦う」



強い意志が篭ったそんな声色に思わず振り向くビリーの瞳には、緊張した面持ちながらも前方の盗賊たちを睨むように見つめ、魔力を練り上げるセリーの姿


しかし…実戦経験の薄さからか、小刻みに震え、額には冷や汗が滲む


気持ちは嬉しいが……そんな状態の彼女に…無理をさせるわけには行かない。ビリーは自分の中でそう結論を出すと…



「僕なら大丈夫。あの拓也君に鍛えられてるんだし。



おい!僕が相手だ!掛かって来いよ!」



恐怖で若干震えていた自分の足を平手で強く叩き彼女にそう笑いかけると、眼前の彼らに向かって強気にそう言い放った。





するとジャックと呼ばれたホワイトマスクの男は薄気味悪く笑い声を漏らしながら盗賊たちの前へ歩み出ると、ビリーに向かってビシッと指を刺し、口を開いた。



「クックック…負けると分かった上で歯向かうか。


それでこそ『鬼灯拓也』…噂通り勇ましいなッ!!」



「………は?」



思わず素っ頓狂な声が漏れてしまうビリー。それもそうだろう。折角覚悟を決め、戦う意思を表したというのに…彼らはどうやら勘違いをしているようだったからである。


しかし…ここまで見事に人違いだと、なんだか勢い良く啖呵を切ったことが恥ずかしくなってくる。



「ぼ、僕は鬼灯拓也じゃないよ。僕はビリー。ビリー=ラミルスっていうんだ」



自らの本名を明かし、誤解を解く為構えを解いて笑い掛けた。



すると…なぜか盗賊たちは顔を見合わせて笑い出し、腰に差してあったナイフを抜き、その切っ先をビリーに向けた。



「流石ジャック!!相手が偽名を使ってやり過ごそうとすることまでお見通しなんて!!それでこそ俺たちのNo.2だぜッ!!」



「ヒエェェ!!おまけに偽名に使う名前までお見通しかよ!!すっげェェ!!」



「というわけで鬼灯拓也!お前はこれから八つ裂きだぜぇぇぇ!!!」



ABCが各自ナイフを抜いて戦闘体勢に入る。



しばらくこいつらなに言ってんだ…という表情で固まっていたビリーだったが、まだセリーと自分に迫った危機が回避できていないことを察し、声を荒げた。



「は…………はぁぁぁぁ!!?僕は本当に鬼灯拓也じゃない!


そ、そうだ!学生証を見せれば……」



誤解が解けそうに無い…どうすれば……一瞬パニックに陥りかけたが…解決策があった。


そんなナイスアイデアに気が付けた自分を内心で賞賛しながら、鞄の中から財布を取り出して、自分の学生証を引っ張り出し…



…そして硬直した。


背後から彼の手の中を覗き込んだセリーも同じように固まる。



「と、とにかく!僕は鬼灯拓也じゃない!!ビリー=ラミルスなんだってば!!」



彼の学生証は……何故か拓也の物と摩り替わっており、顔写真の部分だけがビリーのモノになっているのだった。





折角気が付けた脱出へのルートも完全に封殺され、目の前には行く手を阻む盗賊たち。


数的不利である以上、背を向けて逃走することもかなりの危険を伴う。


どうすればこの状況を抜け出せるのか…思考を巡らすビリー。


するとそんな彼の焦りっぷりが面白いのか、ホワイトマスクの男が笑い声を漏らしながら…装着している仮面に手を掛け…



「俺の名はジャァァ↓ック。


盗賊団『そよ風の会』のNo.2だ」



遂にその仮面を外すと…下に隠していた顔を露にし、ニヤニヤとふざけた面で、硬直するビリーとセリーを見つめる。



「いい加減覚悟を決めたらどうだね?鬼灯拓也君」



「ちょ…な………」



まだ状況が掴めていないのだろう。ジャック…もとい拓也を指差し、信じられないといった表情で小刻みに震えるビリー。


しかしそれも僅かばかりの間。彼はすぐに切り替えると、とりあえずセリーと自分だけが助かる道を選ぶ。



「そ、ソレだよ!ソレが君たちの探してる鬼灯拓也だよ!!


ねぇ!セリーさん!」



何らかの事情で偽名を使っている彼の正体を明かし、背後の彼女に同意を求める。


いくらあの盗賊たちがバカそうでも、流石に二人が同じことを言えば彼らもジャックを疑うはずだと考えてのことだった。


そして…セリーは彼の言葉に賛同するように深く頷きながら口を開き、大きく声を発する。



「あんぱん!」



「……………え?」



しかし…彼女の口から発されたのは……賛同の言葉ではなく、菓子パンの名前だった…。


彼女は驚愕の表情で自分の口を押さえる。



思考を巡らすビリー。何故彼女はこのタイミングでこの意味不明な発言をしたのか……いや、考えるまでもない。


前方でニヤニヤと笑みを浮かべている彼の表情がすべての答えだ。



「(拓也君が音魔法でなにかしたんだ……)」



そう結論付けるが…ことは良い方向へは進まない。むしろその逆。



「へっへ!流石ジャック!アイツがジャックを身代わりに使おうとすることまで予想しているなんて!!」



「「やっぱ俺たちのNo.2はジャックしかいねぇぜ!!」



「あんぱん!あ…あんぱんあんぱんッ!!」



しかしこの光景…傍から見ると中々にカオスである。




「よし、じゃあ時間も勿体無いしとっとと拉致ってトンズラするぞ。


行け、お前たち」



「「「了解だぜジャック!!」」」



「あん!あんぱん!!」



「「「なんだこの女!狂ってやがるッ!!」」」



拓也の指示に従い同時に飛び出す三人の盗賊。


突然の彼らの飛び出しに少々うろたえたビリーだったが、自分の後ろには現在戦えない彼女がいることを思い出し、自分を奮い立たせた。



「ヤァァッ!!」



鼓舞するようにそう叫び…飛び出す。


まず先頭のAが持つナイフを左足で蹴り上げ、流れるように右足で頭部を薙いで彼を無力化。


次に突き出されたBのナイフをしゃがんでかわし、そのまま足払いを掛け転倒させ、その隙にCの顎を拳で突き上げ…二人目。


最後に転倒していたBの腹部をつま先で蹴り上げ…三人をあっという間に無力化した。



「…ハァ…ハァ…。さぁ、拓也君。どういうつもりなんだい?」



「あんぱん!!あーーーんぱんッ!!」



拍子抜けだった盗賊たちの実力に、緊張していた自分が恥ずかしくなってくるビリーだったが、すぐに切り替えニヤニヤとした笑みを浮かべる拓也にそう問い掛ける。


セリーも彼に何か言おうとしているのだろうが、生憎音魔法のせいで何を言っているのかは定かではなかった。



「言っただろう、俺はジャック。お前を攫いに来た」



「…セリーさん、逃げて。よく分からないけど…拓也君と戦わなくちゃいけないみたいだ…」



「あ、あんぱんあんぱん!あーッんぱんッ!!」



「…ゴメン、とにかく早く逃げて。」



彼のその発言は、彼女を庇ってのものなのか…それとも……。



すると、今の自分では彼の足を引っ張るだけだと判断したのか、セリーは心配そうに顔を歪めながら踵を返し…走り出した。


ビリーはその後姿を安堵の表情で眺めていると…次の瞬間腹部を強烈な衝撃が襲った。



「人の心配とは余裕だね鬼灯拓也君」



「だから…僕はビリーだって言ってるだろォォ!!!」




・・・・・



「おら、入ってろ!」



「うわぁ!」



鉄格子の内側へ乱暴に放り込まれるビリー。



まぁ…拓也に勝てるわけがなかったのだ。


そこで彼がまず目にしたものは…目隠しと玉口枷と拘束衣を着させられ、板に貼り付けられている…すごく見覚えのある金髪の女性。



「め、メル…さん?」



「んぅ!?むぅぅ!!!」



「よし!じゃあお前たちは例によって見張りだ!しっかり頼むぞ!」



「「「あいよ!ジャック!!」」」



メルの時と同じように地下室から出て行った盗賊たち三人。


それを確認した拓也は牢を開け、メルを拘束している器具を外し、何か言いたげな顔をしているビリーに向き直った。



「拓也君…一体どんな考えがあって僕とメルさんを攫ったんだい?」



彼もバカではない。故に率直に彼がこんなことをする理由を尋ね、首を傾げた。


拓也も彼の問いに真剣に答えるつもりなのか…壁を背に腰掛けると、今までに無いほどの真剣な目つきで彼を見つめ、口を開く。



「あぁ…俺は無意味にこんなことはしない。



今回は少し特別な事情があってな……」



「やっぱりそうだったのか…その理由は聞いてもいい?」



「あぁ、巻き込んだ手前…内緒ってわけにもいかんだろう」




滅多に無い真剣な彼の雰囲気に、ゴクリと喉を鳴す。



そして…拓也が語りだした。




「メルが…尊厳や誇りを踏みにじられるような辱めを受けたいって言ったかッが!!!」



次の瞬間、体術を習っているビリーですらも真っ青になるほどの威力と鋭さを併せ持った蹴りが拓也の顔面を強襲した。


サッカーボールの如く蹴られた彼の頭部。その威力は背後のコンクリ製の強固な壁で後頭部を強打するだけでは収まらず、その壁にちょうど人の頭一つ分の穴を開ける。



「あなた…いい加減にしないと本気で怒りますわよ…?」



「既に…怒ってる件に…ついて…」







とりあえず行動不能に陥った拓也の代わりにメルがビリーに事情を説明する。


彼の謎過ぎる行動の一端を理解したビリーは納得したように頷き、彼の計画に協力しようと決意を固めたのだった。



・・・・・



「ミシェル~。お~い、ミシェル~!」



「……」



時刻は午後七時。


拓也が不在の為、いつものようにヴァロア家に宿泊することにし、現在家主のミシェルと共に食卓を囲むジェシカは、ボーっとしたまま食事の手を動かさないミシェルに向かってそう声を張った。


しかしミシェルはそんな言葉も耳に届いていないのか…沈黙を続けたまま虚空を見上げている。



「心配しなくてもたっくんなら大丈夫だって~。そのうちフラフラ~っと帰ってくるんじゃない?いつもみたいに!」



「…」



事情を知らないジェシカは彼女を慰めるようにそう発言するが…ミシェルは相変わらず反応なし。


確かに心配している…という部分もあるかもしれないが…。



考えても見てほしい。彼らが交際を始めて…丸一日以上離れ離れになったことは無いのだ……。



・・・・・



一方、拓也。



「ッぐ!?ッカハ!!?」



牢の中でトランプをするメルとビリーを、鉄格子の外の椅子に腰掛けて監視していた彼が…突然、口から鼻から勢い良く鮮血を吹き出し、椅子から転げ落ちた。



「た、拓也君!?」



「ど、どうしたんですの!?」



尋常ではないその様子。そんな彼を心配するように二人は鉄格子に縋り付き、冷たい床に倒れ込み、紅い染みを広げる彼に必死に呼びかけた。


しかし彼は小刻みに痙攣を起こすだけ。



「ど、毒でも盛られたんじゃ!?」



「そ、そんなことが…!」



どうすれば良いのか…だがまずはこの鉄格子を破壊しないことには始まらない。


だが二人の魔力は、ここに連れて来られて来た時に付けられた手錠と同じ性質を持った。右足の足枷で封じられている。


故に…純粋な身体能力しか使えない。


苦虫を噛み潰したような表情の二人…。



するとそんな中…拓也が呟いた。



「み、ミシェル成分が…欠乏している…」



二人が…もう心配などしてやるものかと思ったのは言うまでもないだろう。




・・・・・


手帳に隠し持っていたミシェルの盗撮写真を一晩観賞してミシェル成分とやらを補給して元気を取り戻した拓也は、牢獄からメルだけを連れ出し、目の前の真剣な面持ちの盗賊たちに向かって指示を出した。



「一時間だ。一時間立っても俺が戻らなかったら…逃げろ。いいな?」



「あぁ、分かったぜジャック」



「「気をつけてな」」



「手はず通り…恐らく金を受け取った後、奴らは俺の後を付けてくるだろう。


何とか巻けるように頑張ってはみるが…もしダメだったら、そこの鬼灯拓也を人質に使って逃走だ」



その言葉に盗賊たちが静かに頷いたことを確認すると、拓也は後ろ手にかけた手錠から伸ばしたロープを引っ張って、メルを連れて地下室の扉を開けた。


階段を上り、地上に出るドアを開け外に出る。



時間帯は早朝…日は昇っていないが、東の山に橙の明かりがぼんやりと掛かっていた。



場所は王都を出て草原の外れ辺りだろうか。メルは目の前に広がった若干霧が掛かる草原を眺めながら、今後の計画について彼に尋ねてみる。



「もし…敵に辿りついたとして……その後はどうするんですの?」



「敵意有りなら殺す。敵意は無くても結果として俺たちに害があるならば殺す。それだけだ」



非常に淡々とそう答える彼。


普段ふざけ倒している分、このように真剣な雰囲気を醸し出す彼には非常に惹かれるモノがある。


しかし…彼が普段、冗談でも口にすることの無いそんな言葉に、同時に恐怖すら覚えたメルだった。



「まぁ…ここからは俺に任せとけ。人質役、ありがとな」



だが…振り返りながら笑顔を見せた彼。そのいつものようにニヤニヤとした呑気な表情は、見ている彼女にその恐怖を拭ってしまうような安心すら与えてくれるのだった。



そうこうしている内に取引の場所に到着。


そこには既に…色とりどりのローブを身に纏ってフードを深く被る怪しげな集団と、エルサイド国国王がいた。


メルを見た途端、安堵から表情を緩めたローデウス国王。やはり娘の心配でろくに睡眠や食事を取っていなかったのだろう。頬はこけ、目元にははっきりと隈が浮かんでいた。







「拓也君…君の指示通り、帝には事情を話してあるよ。誰に付けさせればいい?」



「闇帝ですかね~。隠密向きだし…」



メルの手錠を外して彼女の背をトンと押し、王の問いにそう返す。


すると彼の背後に控える王国の最高戦力たちの中の赤ローブが豪快に笑い声を上げる。



「ま~た俺たちはお預けか!」



「アンタのは尾行じゃなくてただの追走だから」



拓也の言いたいことを素早く察し、すかさずツッコんでくれる水帝には流石と言わざるを得ない。


拓也の指名に前へ歩み出た紫のローブを纏う闇帝は、金貨がギッシリと詰まった皮袋を手渡しながら、彼に尋ねるように口を開いた。



「指名…は……別にいいけ…ど………本気で…獲りに…行く…よ?」



「ハハハ、その方がいい。まぁ…やれるもんならやってみな」



「そう……あなたとは…一度…戦ってみたかった」



「…は?」



挑発するようにそう言い放った拓也。闇帝は珍しく口角を吊り上げて笑うと…急速に魔力を練り上げた。


戸惑う拓也。その刹那、闇帝を中心に広がった影から、拓也を仕留めんとする勢いで無数の細かな闇の触手が伸びる。



…が、拓也はそれを間一髪回避する。



「た、戦うってなんだ!?姿を現すのはビリーを返却する地点まで尾行してからだ!!」



「問答…無用!!」



「闇帝は、それなら戦ったままそこまで行けばいい…だってさ」



「解説乙」



ー…ったく……なんで帝にはこうも問題児が多いかね…ー



水帝がしてくれた解説にめんどくさそうにそう言い放った拓也は、バックステップを踏んで、そのまま踵を返してメルと歩いてきた道を猛ダッシュで駆けていった。



その速度は、最早人間の走る速度ではない……そんな速さで走る彼を余裕で追走して行った彼女もきっと普通ではないのだろう。





・・・・・



「ジャック大丈夫かな?」


「大丈夫だろ!あのジャックだぜ!!」


「そうだ!俺たちのNo.2だからな!!」



拓也が身代金の受け取りに向かってからおよそ45分。


アジトの外で荒縄で簀巻きにしたビリーを取り囲んだ盗賊たちは、彼の帰りを待っていた。



他愛も無い話し合いを繰り広げ、待つことさらに数分。



近くの茂みから、突如として黒い影が飛び出した。



「おまたせ~」



「「「ジャック!」」」



それは彼らの待っていた人物。ジャックだった。


立ち上がって彼の無事を歓喜する盗賊三人。


しかし…その喜びの明るい表情も、彼の後を這うようにして追ってきた深い闇の影を目にし、消え去る。



「先に逃げてろ、ヤバイ奴に追われてる」



すると茂みから彼を追う様に飛び出したそれは、次の瞬間一本の鋭い槍となって彼…拓也を仕留めんと襲い掛かった。


腰に差した一振りの刀の柄に手を添え、迎撃準備をしながら彼らにそう指示を出す…が、彼らは唖然としたまま硬直しており動こうとはしない。



「早く行け!」



「「「りょ、了解だぜェェ!!」」」



迫る闇の槍を一瞬で細切れにして半ば怒鳴るように拓也が言い放ち、ようやく動き出す盗賊たち。


一目散にこの場から逃げ去ったはいいのだが…可愛そうな事にビリーが置き去りにされてしまった。


これでもう演技の必要はなくなった。…だが…彼女はまだ満足などしていないようである。



「逃がさ…ない…」



姿は見えず、ただそんな不気味な声だけが響く。


嫌な空気が流れた次の瞬間…拓也の背後から先程のように闇が飛び出した。



「ハッハッハー!甘いぜぇ!」



しかし拓也。予測はしていたのかすぐさま振り返り、収めた刀にもう一度手を添えた。



…が、先程の攻撃とは違い、飛び出した槍は幾重にも分裂。


そしてそのすべての先端は拓也の方を向いている。このまま行けばあの無数の鋭い槍に突き抜かれ、非常にスプラッタなことになってしまう。


そんなまったく容赦の無い彼女の攻撃に、内心で拓也呆れ笑いを零した拓也。



「このバーサーカーめ…」



小さくそんなことをぼやきながら、もう一度刀を抜き放った。




そこからの行動は速かった。



まるで舞い落ちる木の葉のように闇の触手を回避し、目にも留まらぬ神速で刀を振るう。


拓也を通り過ぎる頃、槍は最早形を失い、黒い蒸気のようになって消滅していった。



「流石…でも……これなら!」



次の瞬間、茂みの中から強大な魔力反応。



「甘いッ!」



しかし…茂みに向かってそう叫んだ拓也。一体何をするつもりだろうかと、闇の中から彼の一挙一動を観察する闇帝。


すると拓也は少し後ろへ下がり…ビリーの足を片手で掴む。




そして…次に彼が取った行動は……



「どっせぇぇいッ!!」



「んッうううぅぅぅ!!!?!?」



「どうした!早く助けてやんないとあいつ数十秒後には潰れたトマトだぜ!?」



ビリーを遥か空の彼方へブン投げるという至ってシンプルなものだった。


狙いは…彼女を彼の救助に向かわせ、その隙にトンズラをかます事だろう。



単純。しかし、彼女が帝という立場である以上、護るべき民である簀巻きの彼を助ける義務がある。



そうこうしている内にも簀巻きで王空を舞うビリーのベクトルは水平より下に下がっていた。



「続き…は……また…今度」



「あいよ~」



不満そうにそう言い残すと、とんでもない速度で枝と葉の天井を突き抜ける黒い影。


拓也はニヤニヤとしてやったりといった表情でそちらを見上げながら手を振り、刀を指輪に戻す。



そして彼女が見事ビリーをキャッチしたことを確認すると、踵を返して先に行かせた盗賊たちの後を追うのだった。




・・・・・



冷たい雪を踏みしめ、この世の全てを凍てつかせんと猛威を振るう猛吹雪の中、雪原を行く人の影が一つ。


とても生きていける環境ではないそんな場所で、彼は相変わらずヘラヘラとした表情で呟いた。



「こ~の辺りの筈なんだけどなぁ……」



黒ローブに身を包み、フードの上から頭を掻く彼…拓也。


前も後ろも分からなくなるような吹雪のせいで、視覚だけでは正確な位置情報がつかめないからかそうぼやく。


するとそんな時だった。



「お、なんだなんだ?」



突然の強烈な地震。揺れ方からして自然現象ではないのは明白。


次の瞬間、近くの地面を突き破り、5メートルほどの何かが飛び出した。


吹雪のせいでよく見えないが、紅く光る目と低く唸る声はハッキリと聞こえる。


目を凝らせば、体表もチラと見えた。



極寒の地に住まう生物とは思えないような薄い皮と、所々金属のような装甲が見える。



「ほぉ…じゃあこのまま探すのもしんどいし……お前に案内してもらうとしようかね」



拓也は何かを確信し、腰に下げた剣を抜きながら、フードの下でニヤリと口角を吊り上げた。



・・・・・



拓也がメルとビリーを開放してから丸二日。


王城を訪れていたミシェルにジェシカ、ビリーとセリーは、メルの部屋でトランプをしながら彼の帰りを待っていた。


当初から三日は掛かると話されていた為、ミシェルもまだ平常心を保っている。



「…ぁ」



「アッハハ~それババだよ!!」



「ジェシカさん…そういうのは言わないほうが良いんじゃ…」



ちなみに任務に支障をきたす恐れがある為、彼の目的は王族、帝、ミシェル以外には、この場にいる者にしか話されていない。


つまり拓也はまたもや学園を公欠しているということだ。しかし…公欠の力で出席日数が足りなくなるということはないだろう。



彼女らは、学園の帰りこうして少しだけ王城に寄り、彼の帰りを待っているのだ。




するとそんな時、部屋のドアが軽くノックされる。


メルは視線を手元のカードからそちらのドアへ向け、口を開く。



「はい、どうぞ」



彼女の許可を得て開かれるドア。


そこから姿を覗かせたのは…



「…拓也さん!」



黒ローブの男…剣帝、拓也だった。



一番早く反応したのはやはりミシェル。きっと数日彼に会えなかった為、表情や仕草に出しこそしていなかったが寂しかったのだろう。


手にしていたカードを捨てるようにテーブルに置いて立ち上がり、小走りで彼の傍まで駆ける。



「仕事は終わったんですか?」



「あ、あぁ…一応終わったことは終わったんだけど……」



感動の再会…の筈なのに…何故か苦笑いを浮かべる拓也。


そんな彼の様子にミシェルが首を傾げた…その時だった。



「……………拓也さん…”その子”は?」



視界の端の彼の隣に……腰まであるクリーム色の長い髪の見たことも無い小さな女の子が不機嫌そうな表情でポツンと立ち尽くしているのを発見したミシェルが小さくそう問う。


すると背後の四人も彼女の存在を認識したのだろう。


それぞれがまったく同じ驚愕の表情を浮かべて、ミシェルの問いに頭を掻きながら返答を考えている拓也を見守っていた。



「あー…えっと……なんて言うか…」



そして拓也は…何故か言い渋るように言葉を詰まらせた。



「たっくん…誘拐は流石にマズイよ……」



「拓也君…ミシェルさんがいながら…」



「そんな…幼女趣味がありましたなんて…」



「お姉ちゃん……どうしよう…」



「待てよッ!お前らちょっとは俺のこと信用してくれよッ!!!



コイツはあの丸薬の件の黒幕!


あの薬とかを実際に作ってばら撒いてた”神”なんだよ!!」



あまりにも酷すぎる仲間からの言葉に、怒ったように声を荒げながら返し、隣に立つ少女の正体を明かした。


神。…人ならざる彼女の正体を知り、まずミシェルが恐れるように表情を歪ませ、身構えた。



「あぁミシェル多分大丈夫。コイツ研究と発明とかしか頭に無いただのマッドサイエンティストだから」



「その研究と発明の施設は…ソナタのせいで全部おじゃんになったがの」



「黙れロリババア。付いてくんなっつっただろうが、とっとと家に帰れ」






「ソナタが…ソナタが全部ぶっ壊してしもうたから…帰るところもなくなったんじゃろうがぁぁ!!!」



「家ぐらい作れよ」


シッシ!と手を振って追い払おうとする拓也にそう叫びながら彼の手に噛み付く少女。


拓也はめんどくさそうにその手を振る…が彼女は中々離さない。


仕方が無いのでダメ元で噛み付かれたままの手を振りながらだが、説明の為に口を開いた。



「こいつの研究と発明はただの知的好奇心の為だったようだ。そこでもう何も出来なくなるように施設ぶっ壊して命だけは見逃したんだが……



なんか付いてきてな……。付いてくんなって言っても聞かないし…。



一応王にも報告と一緒にコイツの話はしたんだが……『見た感じまだ子供だし法律で裁けないんじゃないかな?それに神だからなおさらさ~』的なこと言われるし…もうどうすりゃえぇんだ…」



「ワシは子供ではないのじゃ」



「知ってる」



ようやく離したと思えば生意気そうなそう言うだけ。


めんどくさそうに溜息をついた拓也は、諦めたように彼女の背を軽く押し部屋の中へ押し込むと、自身は踵を返した。



「じゃあ報告書作んないといけないから…悪いけど少しの間ソイツ頼んだわ」



「ソイツではない。『リディア』じゃ」



リディアと名乗ったその少女。


幼く可愛らしい外見からか皆の表情が綻ぶ。ミシェルも拓也と彼女とのやり取りを見ていたからか既に警戒は解いており、微笑を浮かべている。



「ん、何じゃソナタら。そんなに見つめおって」



「ねぇねぇ!神様って何食べてるの!?」



「お、おぉ…そうじゃな……魔力で食事を摂らずとも生きてはいけるが…普通に人間と同じものを食べるぞ」



相手が神でもお構いなしか…ミシェルたちがそう思ったことは言うまでもないだろう。



「私はジェシカ!よろしくね!!」



「うむ、先程名乗った通りリディアじゃ。よろしく頼む」



そして神すらともすぐに友達になってしまう…これは最早才能と呼んでいいレベルなのではないだろうか?





「さて…ソナタらは鬼灯拓也と親しいと見て二.三質問したいのじゃが…」



「いいよぉ!本人の人権が侵害されない範囲で答えるよ!」



唐突に始まった質問コーナー。


ジェシカは既にノリノリ。故に、他の面々は止めることが出来ない。


するとリディアは前置きに一つ咳払いをすると、エメラルド色の瞳を少しだけ鋭く輝かせた。



「何故ヤツは…人間であるはずなのにあそこまで強いのじゃ?」



静まり返る一同。


そんな中、リディアは続ける。



「ワシが作っておった自律戦闘兵器、合成獣…その他諸々の力作が……ヤツにはまるで歯が立たなかった。


起動こそしていなかったものの、その中には世界を終わらせられるものも多数存在していた。それにもかかわらずじゃ…。



ワシの発明した戦闘兵器…それらがいとも容易く全て斬り伏せられ、たった一撃の魔法で施設は粉微塵にされた。



とても人間の力とは思えん」



どう答えればいいのか…。まず彼はどこまで話しているのか。それが分からない状態での回答はマズイ。


皆が口を噤んだその時…




「ヌェッ!!?」




奇妙な叫び声と共に部屋のドアが乱暴に開いて、そこから先程この部屋から出て行った拓也が勢い良く射出された。


数回のバウンドの後ようやくその勢いが収まると、彼は慌てて立ち上がり、自分がスタイリッシュに入室したこの部屋のドアに向かって怯えたように手を翳して震えた声を精一杯張り上げた。



「ま、待て!仕方なかったんだ!!」



彼の視線を辿り…皆が目にしたモノとは………




「へぇ、私の可愛い妹に『あんぱん』なんて叫ばせながら街中を疾走させた変質者が何の言い訳?」



「お、お姉ちゃん!?」



拓也の天敵…リリー登場。



ユラリ…鋭く睨みつける瞳からは怪しい光…口からは煙が…そんな錯覚すら起こす程の様子の彼女。


とりあえずブチギレていることだけは、容易に分かった。



「だ、だから俺は発声が全て『あんぱん』になるように細工しただけで…」



彼女は後ずさりする拓也の鳩尾に一撃、続けざまにハートブレイクショットを打ち込むと、止めにバランスを失い仰向けに倒れそうになった彼の顔面にチョッピングライトを打ち込んだ。



「原因はアンタ。それだけ分かればいいわ」



「少しは話し聞いてくれてもいいと思うの!!」




鼻を押さえる手。その指の隙間から血がダラダラと流れ出る…が、怒りメーターが臨界点を振り切っている彼女はまだ止まらない。


拓也の胸倉を掴み、100キロ超はあるはずの拓也の体を片手で軽々と持ち上げると、もう一方の手で部屋の窓を開け放ち…



「アンタは痛い目見ないと分かんないみたいだね」



「もう散々痛い目にあってるんですがそれは…」



「問答無用ッ!!」



胸倉を掴んだ腕をぶん回し、引きつった表情の彼を王国の遥かの上空へ放り投げた。


更に…王空へ向かった彼へ放たれる無数の氷の槍。彼が汚い花火となったのは言うまでもないだろう。



・・・・・



「ふーんそうなの、殴って悪かったわね」



「個人的には氷の槍の方が痛かった」



「ふーん」



妹セリーから事情を説明されたリリーだったが…適当にそう謝罪すると、これといって興味なさそうに足を椅子から投げ出した。



ー…こうして見ると、ほんとに幼女にしか見え…-



次の瞬間、何故か怒気の篭った細い氷の針が拓也の眉間に突き刺さる。

超直感と読心術が搭載された幼女とは末恐ろしい。




「それで…アンタ…ミシェルちゃんに冷たくされるからって……こんな子供を攫って来たの?」



「ちゃんと話し聞いてた?こいつは神だって言ってんじゃん。


それとミシェルのそれは愛情表現であって俺のことを嫌ってるわけじゃないから。




……………だよね?」



「な、何で私を見るんですか…」



「まぁちょっとしたジョークよ、ジョーク。そのくらいも理解できないの?」



「ふむ…差し詰め幼ジョークってとこッんぁぁぁ!!?」



彼の言動に一々反応していては話が進まない。


だから彼女らは、曲がってはいけない方向にへしゃげた彼の腕のことはとりあえず見ていない振りをして話を進めた。



「それで…どうするの?」



「腕痛い…」



「…お父様に聞いてみないことにはなんとも……」



「腕、痛い…」



若干彼の目に涙が浮かんだが気にしてはいけない。気にしたら負けだ。


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するとそんな彼に歩み寄る者が一人。



「ワシはソナタのことを…ありとあらゆる事まで解析してみたい。その為に付いて来たのだ」



「何コイツストーカーかよ……」



隠すことも無くそう言い放ったリディアに、腕の痛みも忘れて呆れ顔を向ける拓也。


しかしそんなことお構いないしに彼女続けた。



「そこでソナタと寝食を共にしようと思う」



「却下」



彼のその否定に、彼女は信じられないというようにワナワナと震えだす。



「な、何故じゃ!何が不満だというのじゃ!!」



「全て。というか家ぐらい作ることぐらい造作もないだろ、帰れ」



もっともな彼の指摘に思わず閉口し、目を伏せたリディア。


周りの面々は可哀想とも思うが…自分たちが口を出すべき問題ではないことを理解している為、誰も口を開かなかった。



するとその時だった。…突然、リディアの足元に、透明の雫が落ちた。



「独りぼっちは…イヤじゃぁ……」



続けて震える声で小さくそう呟き、それによく見れば僅かだが震えている。



ー…まぁ……俺の知らないずっと昔からあそこで研究ばっかしてたんだろうしな……


おまけにあの研究所には合成獣とロボだけだっし…ー



そりゃ寂しいか…と内心で続け、ここまでにしておこうと決め、彼女へ手を伸ばそうとしたとき…その時。



「事情は分かりました。いいですよ、家に来てください」



拓也がアクションを起こすよりも早く、ミシェルが彼女へ優しく笑いかけ、手を伸ばした。


少々呆気にとられたような表情を浮かべた拓也だったが、次の瞬間には彼女らしい…と思い、微笑を浮かべて小さく笑い声を漏らす。


するとミシェルは笑う彼にジトッとした目を向ける。



「まったく…なんでそんな意地悪したんですか?どうせ最初からこうするつもりだったんでしょう?」



「い、いや~…家主はミシェルだし、最後はミシェルに決めてもらわないとって思ってさ!」



「へぇ…」



何か言いたげな目を向けるミシェルから目を逸らした拓也は、彼女の追及を、あさっての方向を向きながら口笛を吹くことで回避するのだった。





リディアはミシェルの足元に駆け寄り、潤んだ瞳で見上げる。



「い、いいのか?」



「えぇ、いいですよ。二階にはまだ二部屋空きがありますし…



それにどうやら…私は家がない人と縁があるみたいですから」



そう発言しながら楽しそうに拓也を見つめるミシェル。


きっとこの世界に来た当初のことを言っているのだろうと予想しながら拓也も彼女に笑みを返した。



「そんなホームレスみたいな言い方しないで…」



「事実ですから仕方ないです」



涙をボロボロと零しながらお腹に顔を埋めてくるリディアを微笑みながら軽く抱きしめるミシェル。


長年生きる神のはずなのにまるで子供のようなそんな姿に一同は、どこと無くほっこりとした気分になるのだった。



・・・・・



その日の夜の出来事。


ミシェルより一足先に風呂から上がってきたリディアがソファーでだらける拓也に一言。



「おい鬼灯拓也。ヌシに良い事を教えてやる」



「ん、なに?」



「ミシェルの乳…マシュマロのようじゃった」



「…マジか」



彼の瞳は…まるでリミッターを解除した時のように輝いていたという…。



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