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神様のお使い  作者: 泡沫にゃんこ
第一部
13/52

2人の休日



「さぁて、そろそろ行くか…ミシェル、準備出来てる?」



翌日、時刻は昼の11時ちょっと前。


昨日の約束通り、拓也とミシェルは市街地へ向かう準備をしていた。



「とっくに出来てますよ」



奥から出てくるミシェル。


あの後悩みに悩んだ挙句、結局はいつものような服装に落ち着く彼女だった。


しかし少し冒険して今日は手元とスカートの部分に白いフリルが付いた黒基調のワンピースである。




「よっしゃ、じゃあ行こうか」



「……そうですね」



彼女の服装について一言の感想すら言わなかった拓也。


一晩悩んでようやく決めた一着。ミシェルは少しムスッとしながら不愛想に返す。



「……ごめん早くも怒らせた?」



「いえ、何でも無いです。というか早くもって何ですか、私は怒る前提ですか?」



そんな彼女の態度に気が付き適当に謝罪する拓也に、ミシェルが軽く冗談を飛ばしその場に談笑が生まれる。



と、その時。


拓也がミシェルをまじまじと見つめ、一言。




「その服似合ってるな」



「な、なんですか急に!?」



予想だにしていなかった拓也の言動に、思わずよろめくミシェル。


顔が熱くなるのを感じて思わず顔を逸らした。



「…いや、似合ってるなぁ…と」



「そ、そうですか………あ、あありがとうございます。


た、拓也さんも今日はいつもよりおしゃれしてますね!」




恥ずかしくなってくると、話題を逸らして逃げる。


ミシェルが良く使う手段だ。この場にジェシカが居たらアピール不足と怒られていたことだろう。



「なにそれ……確かに俺家ではジーンズにTシャツだけどさ………」



「しかも意味の分からない文字入りですよね『ぱるく~る』とか『ちくわ大明神』とか」



「失礼な、ちゃんと一つ一つに意味があるんだよ。


例えば『海綿体MAX』とか……」



「…?それってどういう意味があるんですか?」


会話に紛れて言葉によるセクハラを行おうとしている拓也。


しかしミシェルにそこまでそう言った方面の知識は無かったようだ


拓也は思わず言葉に詰まって無言で歩き出す



「え、ちょ、ちょっと待ってください!どういう意味なんですか?」



そのすぐ後ろを追いながら尋ねてくるミシェルに気まずそうな顔をし、無言で足を進める拓也





ー誰かこの空気なんとかしてくれねぇかな…ー




「ま、まぁ気にせんでくれ。実は俺もよくわかんないんだ」



「なんですかそれ……」



「安心しろ、今日は着てないから」



拓也はそう言うと、インナーの上に着ていたグレーのカーディガンのボタンを外す。


中にはいたって普通な白基調のインナー。



「流石にあれを外出用にするほど俺はヤバい奴じゃない」



「その他の面で十分ヤバい人ですけどね」



「それは言わない約束だぜ!」




そんなこんなしているうちに街の中心部に到着する。



相変わらず見渡す限りの人、人、人。


その人だかりに少々気持ち悪くなりながらも、拓也とミシェルははぐれないよう慎重に足を進める。


ようやく人の流れに乗り、足取りも安定してきたころ…拓也が顔に冷や汗を浮かべながらミシェルに喋り掛けた。



「ヤバいミシェル……俺っちノープランなんですけど…」



そうこの男。


あまりに不慣れなこと過ぎて何も考えずに誘っただけだったのだ。


ミシェルはやっぱりと言わんばかりに口元を緩ませると、申し訳なさそうにしている拓也に笑いかける。



「まぁ期待はしてなかったので大丈夫ですよ」



「地味に傷ついた、どうしてくれる」



「口調から傷ついているようには感じませんね」



ミシェルが怒っていないことを感じ取るや否やこの男…


まぁ彼女もそんなことをいちいち気にするほど器は小さくない。



「今11時半前くらいか……ちょっと早いけどお昼にする?それともショッピングでもするかい?」



「拓也さんに任せます」



「そういうのって一番決めにくいよね~。『今日の晩御飯何がいい?』『なんでもいい~』ぐらいに」



「……じゃあお昼にしましょう。私もお腹空いてきました」



拓也の謎の演劇。


本人は老年夫婦をイメージしてやったつもりだったのだが、声的に無理があったようだ。



ミシェルは少し考えるようなしぐさをすると、そう結論を出した


拓也の歩く道をなぞるようにして後に続くミシェル。


特に計画を立てていなかった拓也は、飲食店を探しながら看板を見回す。


しかしこんな時に限って飲食系の看板は目に入ってこない。



「…あった!」



ようやく見つけた飲食と思われる看板。


紫をバックに白黒の文字で『しまうま』と書かれている。


何を血迷ったか、拓也はその店へと足を進めた。



「ちょ、ちょっと拓也さん!そこって本当に飲食店なんですか!?」



こじんまりとしたその店の外装。


とても華やかなレストランのようなところとは程遠く、言ってみれば居酒屋のような雰囲気を感じ取られる。



「安心しろ、俺の嗅覚がこの店は飲食店と言っている。


しかもここの店主相当の腕前だぜ」



「……まぁ拓也さんがそう言うなら…」



拓也の非常に無駄な嗅覚を信頼することにしたミシェル。


結局二人はこの店で昼食をとることにした。



拓也が先行し、店のドアを押し開く。



「あ~らあらあら!こんな時間のお客様なんて珍しいわね☆」



「…」



拓也は無言で開いたドアを閉めた。



「ごめんミシェル。俺ちょっと疲れてるみたいだわ」



「私もです…よくないモノが見えました……」



冷や汗をかき、踵を返した拓也。


ミシェルも背後で青い顔をしている。



ーヤバい…最近あんまり寝てないせいかな……坊主で色黒でピチピチの紫タンクトップ着たのマッチョメンがグラスを磨いてるなんてきっと俺の脳が生み出した幻影なんだよきっとそうだそうに違いない…ー



半ば現実逃避の域に達している拓也の推測のようなもの。



ミシェルもミシェルで今見たものを必死に忘れようと脳内で悪戦苦闘しているようだ。



「よし!どっか飲食店探そうか!」



「そ、そうしましょう」



拓也が来た道を引き返そうと足を一歩踏み出したか出していないか。


拓也の背後のドアが不気味な音を立てながら開く。


そこから伸びた何者かの手が拓也の肩をガッチリとつかんだ。



「まぁまぁ!こんなに可愛いお客さんは久しぶりねぇ…あたし緊張してきちゃった!!」




謎の手の正体が店の奥から現れる。


185はあるかというほどの身長に、色黒の肌。


発達した筋肉。


そして何より………この厚めの化粧。



俗に言うオネエというやつなのだろう。




ーいやああああああああああああああああッ!!?


何コイツ異常に力が強いんだけど!?動けない…てか徐々に引きずられてる!?助けてええええええ!!!!ー




拓也の声にならない叫び。拓也がミシェルに視線を送るが、彼女は目を合わそうとはしない。


このまま無関係を突き通し被害を逃れるつもりだろう。




ーしょうがない。これは誰だって逃げたくなる。俺だってそうする。


って落ち着いてる場合じゃねぇからぁぁ!!-




「しゅ、しゅみましぇん……こ、ここっここって何屋さんなんでしゅか!?」



あまりのパニック状態でまともにしゃべることすらできていない拓也。


ミシェルは被害を受けないよう既にオネエの攻撃範囲から離脱している。


つまり助けは期待できないということだ。



拓也にそう尋ねられたオネエはニッコリと、拓也に生命的危機を感じさせる笑みを向ける。



「んっふぅ(はぁと)……まぁレストラン…なんてしゃれた場所じゃないけど飲食店ねぇ~」



「そ、そうですか……」




ーだめだ…俺ここに居たらアブナイ…いろんな意味で…ー



「見たところお客様みたいねぇ!さぁ入った入った!家は基本夜に賑やかになるお店だけどご飯の味はお昼時でも変わらないわよぉ!!」



ーなにそれ夜に賑やかになるってどういう意味だよ!!というかミシェル助けろ!!助けろッ!!-



必死にSOSのサインを視線でミシェルに送る拓也だが、ミシェルはもはや我関せず。



しかしオネエはそんな彼女のことを見逃していなかった



「もちろんそちらのお連れさんもね!☆」



「ッ!?」



ビクリと悪さに気づかれた子どものように震えたミシェル。




「ハハッ!ざまぁ!!」




・・・・・



「は~いおまたせぇ!」



結局流され、この店で昼食をとることになった拓也とミシェル。


ちなみにこの店主はオネエのくせに坊主頭なのにはツッコみたくなった拓也だった。




なんか違う意味でお腹がいっぱいな拓也。そんな二人の前に、ゴトッ!と大皿が置かれる。



ーなんだこれ…ジャーマンポテト?ー



食欲をそそるスパイシーな香り。


拓也は小皿に取り分け、恐る恐る一口頬張った。



「これは…………………………ジャーマンポテトだな。旨い」



「本当です!美味しいですね!!」



「でしょ~?自信作なのよぉ!」



ーコイツ見てくれはアレだが料理の腕は相当あるな…


世の中ほんと分かんねぇや、もう引きこもりたい…ー




失礼なことを考えながら、拓也は食べ続ける。



このオネエはオネエで料理を作り続けている。


ちなみにオーダーは『店主のドキ☆ドキお任せコース』というものにしてある。



確かにドキドキするメニューだ。ロシアンルーレット的な意味で。



「…あなたこの店始めて何年くらいたつんですか?」



「も~お~、こら!そんな堅苦しい喋り方やめてよぉ、気軽に『ママ』って呼んで☆ここの店主だし!」



妙にくねくねとした動きで…しかし手つきは一流の料理人のそれだ。


ミシェルは困惑しながらも出された料理を頬張っている。


矛先が自分に向いた拓也はちょっとグロッキーになりながらも、何故か…何故かコイツがいい奴ということを本能で感じ取っているのだった。



「じゃあ俺からもその妙な口調と化粧と動きを止めろと要求する!」



「断るッ!」



「ヒェ……」



拓也が冗談ぽくオネエを止めろとさりげなく言う。


するとまるで人が変わったかのように声の質がドスの利いた漢のそれになり、


鬼のような形相で拓也を威嚇する。



思わず拓也は変な声を漏らし、縮こまった。



「な~んてね!この恰好は私のしゅ~み♪」



「普通にビビっただろ!やめろ!!」



ーなんなの!?コイツは一体どれだけオネエに執着してるっていうんだよもうヤダこの世界ー



「そちらのお嬢さんはどう?お口に合うかしら?」



またもや大袈裟に震えたミシェル。


彼…いや彼女の見た目に相当怯えているのだろう。



それを見かねた拓也が軽く彼女の肩を叩く。



「大丈夫だぞミシェル。見た目はヤバいけどママはいい人っぽい。俺が言うんだから間違いない」



「もぉう!ひっど~い!」



「そ、そうですか……すみません…私人見知りで」



「そんな肩の力は抜いて抜いて!この場に礼節なんて必要ないんだから☆」



ミシェルに軽くウインクしたママ。


ミシェルはミシェルで少し緊張が解けたみたいだ。軽く笑顔で返した。



「そうなんだぜ聞いてくれよママ。ミシェル俺と初対面の時に顔に向かって魔法撃ってきたんだぜ?


俺は心底驚いたね」



「あ~ら!随分とアグレッシブなのね!ミシェルちゃんってば」



「そ、それは拓也さんが……!」



ガタっと椅子から立ち上がってニヤけている拓也に抗議するミシェル


「おぉっと?俺がなんだ?何をしたっていうんだ?」



「いきなり…あ、あんな恰好で茂みから飛び出して来たら……」



「ん~?あんな恰好って?」



若干赤くなって拓也と向かうミシェル。


拓也はケタケタ笑いながら適当にあしらっていた。



そんな中、ママが次の料理を二人の前に置いた。



「はいはい!次出来たわよ!名付けて『天使の加護を受けた愛のホワイトグラタン』☆」



「いただきまーす!」



「いただきます」




なんだかんだで二人とも結構この店の雰囲気になじんできたようだ。


ちなみにここの料理は一流のレストランにも劣らない味だったという。



・・・・・



「ごちそうさんでした」



「ごちそうさまでした」



店の出口の前で軽く会釈する拓也とミシェル。


会計を済ませた二人は今から町の散策に戻るつもりだ。



「ありがとうございました!!またいつでも来てね☆」



「はい、また来ますね」



「料理だけはまともってことが分かったからな。また来るぜ!」



隣でふざける拓也を置いていくようにしてミシェルがドアを開け先に外へ出る。


きっと彼女は扉を出たすぐそこで待っていることだろう。


するとママは突然、拓也に笑いかける。



「ミシェルちゃんと拓也君はお付き合いとかしてるの?」



………ミシェルがこの場に残っていたのなら非常に面倒なことになっただろう。


それを配慮してのママはきっと今までミシェルが拓也から離れるタイミングをうかがっていたのだろう。



「え?…いや、そういう関係じゃないですよ」



きっと拓也はミシェルがこの場に居たら、いつものように冗談でそれとなく交際しているような事をほのめかすのだろう。


しかしミシェルはこの場に居ない。彼女を待たせている身でもある拓也は、話を拗れさせずに早く終わらせることを望み、そう言ったのだった。



「そうなの…雰囲気的に付き合ってると思ったんだけどねぇ。女の勘が鈍ったかしら」



「いやアンタ生物学的に女じゃないだろ」



苦笑いを浮かべ、そう冗談ぽく言う拓也。


ママはママでこちらは微笑を浮べている。



「まぁそれは置いておくとしても拓也君はミシェルちゃんのことどう思ってるの?」



「う~ん……友人?」



ー俺もミシェルもお互い難しい立ち位置だからな…どういう関係と言われれば色々ある…


他には居候と家主とかもあるし説明がめんどくせえな!-




「拓也君の事気に入ったから言っておくけどあんないい女そうそう居るもんじゃないわよ。早くしないと他の学園の男子にとられちゃったりして☆」



「ハハハ、まぁミシェルのルックスなら十分ありえるな。それに性格もいいし……





…………あれ!?ミシェルっていい女じゃね!?」



いつものように気の抜けた表情と声色でケタケタと笑った拓也。


しかし一気に深刻な表情に変わりワナワナ震えながらそう叫んだ



…まぁ只のジョークなわけだが。



ーていうかミシェルがいい女などということはとっくに知ってたけどね。ー




「そう言ったじゃない!☆」



「そうだな~、じゃあまた来るわ」



「はぁ~い!また来てねぇ☆」



背後にヒラヒラと手を振りながら、適当に返し店を後にする拓也。


外で待っているミシェルと合流する。



「待たせたな。んで次はどうする?」



「そうですね…少し疲れましたしあそこに見える公園で一休みなんてどうでしょうか?」



ミシェルが指をさす先に見えるのは、小奇麗なちょっと大きめの公園。


整備の行き届いた芝生に舗装された歩道。備え付けられたベンチ。


中央には噴水も見える。



そしてミシェルが疲れている理由は恐らく先の店での店主のせいというのもあるのだろう。



「ミシェルにしてはいい案だな。よし採用」



「ホントいつも一言多いですね。ムカつきます」



「ハッハッハー!何とでも言え!!」



ケタケタと笑う拓也をジト目で見つめるミシェル。



しかしそんな目で見つめても拓也は喜ぶだけだということをミシェルはまだ知らないのだ。



二人は噴水に背を向ける形で設置されているベンチに腰掛ける。


少し周りを見渡せば、無邪気に遊ぶ子供、老夫婦、ガラの悪い若者の集団。


実にいろいろな人たちがいることだ。



そこで拓也があるものを見つけた。


ミシェルにもわかる様に軽く視線を向け口を開く。



「へぇ~、あの出店飲み物売ってるみたいだぞ、メニューに紅茶って書いてある」



「なんでこの距離からメニューが見えるんですか…」



中々離れた所にある出店のメニューを当然のように言い当てている拓也に驚くミシェル。


しかしこれでもだいぶ耐性は付いた方だろう。



拓也が重い腰を持ち上げ、軽く伸びる。



「一服に丁度良さそうだし買ってくるわ~」



そのままぶらぶらとその出店の方へ歩いていった。


彼のその背中からは強者という風格が全くない。どこにでもいそうな青年だ。


強いて言えばちょっと無気力なくらいか…



「なんだかんだで結構楽しいですね…」



拓也が離れ、ミシェルが独り言のようにそう零す。


最初にノープランと聞いたときは一体どうなるかと思っていたが、何も心配はいらなかったようだ。




いつものクールな表情から、少し微笑みの混じった表情になるミシェル。


そこである考えが頭を過った。



「(……これって…傍から見たらもしかして……で、デートに見えるんじゃ……!!///)」



一見クールに見えるミシェルだが、考えていることはちゃんと女の子なのだ。


頬が赤く染まり、少し俯いたその時だった。



「あれぇ?お嬢ちゃん一人~?」



「一人なら俺らと楽しい遊びしよーよ」



ミシェルを取り囲むように立つ若者たち4名。


まるでウニのようにツンツンした髪型。恐らく話し合いが通じるような人種ではないのだろう。


おまけに全員もれなくニヤニヤしている。


拓也のそれとは違い、心底虫唾が走るミシェルだった。



「人を待っているので無理です」



冷たい声色で、目も合わせずはっきりそう言い切ったミシェル。


彼女は今までこのような輩に絡まれたことがないわけではない。むしろ多い方だと言えるだろう。


だが、彼らもバカではない。このような人の多い場所では絡まれたことは少なかった。


こういった輩を今まで、ことごとく実力行使で排除してきたミシェル。


しかしこのような場所で魔法を使って、周りに目立つことは避けたかった。



「そんなつれないこと言わないでさぁ」



「そうだぜ、きっと帰るころには俺たちに夢中だからさ」



「違げぇねえ!ギャハハハハハハ」



「…」



折角のいい気分を台無しにされたミシェル。


もういつも通り焼いてしまおうか?…そう考え始めた時。



「ミシェルお待たせ~」



ミシェルが良く聞きなれたこの声の主は、彼もまたニヤけ笑いだが、この輩のような嫌悪感は感じない。


片手に紙製のコップを二つ持った拓也は、もう片方の手でミシェルの手首を掴み、立ち上がらせ、歩き出す



「次は露店めぐりでもしようか」






「おいちょっと待てよ…なに?横取りする気か?」



「あんちゃんなに?彼氏さん?まぁそんなの関係ないけどさぁギャハハハハ!!」



ミシェルを連れて行こうとする拓也に苛立ちながら声をかける金髪と、下品に笑う茶髪のウニ頭。


後ろの取り巻きもニヤニヤしている。


横取り…まるで物のように扱われたミシェルは若干イラつきながらも自分の手を引く拓也にすべて任せることにした。



「でさー、最近美味しそうなケーキ出す喫茶店見つけたのよね~」



拓也、全く意に介さず。


いつもの調子でへらへらしながら最近見つけた喫茶店について話し始めた。


無視された金髪と茶髪。


その中でもリーダー格の金髪のこめかみに、ピキリ!と青筋が現れた。



「おいテメー。冴えねぇ面して無視とかなめてんのか?」



威圧するような声色で拓也を罵った金髪。



「匿名希望の赤髪さんの評価では中の上らしいですぜ、こりゃあ楽しみですわ。アイツ辛口評価だから本当はもっとおいしいはずだ」



しかしこれまた無視。


いい加減我慢の限界が来たのだろう。金髪はことごとく無視され、プルプル震えだした。



「クソが!無視してんじゃねーよ!!」



拓也の肩目掛け、右の拳を思い切り振りぬいた。


しかし拓也の体はまるで影響の無いように少しもブレなかった。


ミシェルはそれが拓也の鍛え抜かれた肉体によるものだろうと納得し、そして理不尽な暴力が彼を襲った事に遂に彼女自身も我慢の限界に達そうとしていた。



「俺はとりあえずショートケーキかな~。シンプルな物って実力に嘘が吐けないからね!」



拓也はミシェルがキレそうなことに気が付いたのだろう。


そう言いながら、彼女の手を一瞬だけ強く引き、自分の右腕にしがみつかせた。



「ッ!///」



拓也のその行動に少しばかり動揺したミシェル。


赤くした顔を隠そうと俯き…そしてあるものを見つけた。



『構うだけ無駄。このまま無視しながら人通りの多いところへ出ればコイツらも諦める』



拓也の伸ばした人差し指から浮かぶように出現している赤い文字。


それは魔法陣を形成している枠や文字の形作るそれと同じ。


つまり火属性の魔力を使い、空中に文字を浮かび上がらせているのだろう。




「(なるほど…そうすれば目立たないですもんね…)」



拓也の考えを理解したミシェル。


自分とは違う手段をパパッと思いつく彼に感心する。



「ミシェルはどうする?そこは俺の奢りだから何でも頼め」



「い、いえ!そんなの拓也さんに悪いです!」



「いいって、さっきは強引に割り勘にされたしな」



二人ともまるでいつものように。


金髪どもはまるで居ない者のように扱い始めた。


しかしこの密着した状況。


必然的に早まる鼓動。


ミシェルは緊張で強く、そして速くなった心臓の音が拓也に聞こえないていないかが非常に心配になりつつあった。



「おい、無視してんじゃねぇぞッ!!」



もう激オコなのだろう。


金髪はそう怒鳴ると、拓也の背中目掛け今度は前蹴りを放った。



「う、おぉ!」



しかし相手は拓也だ。


ヒトの細胞の総数より多い年数修行してきた拓也だ。彼の磨き抜かれた体幹はその程度ではビクともしない。


つまり簡単に例えるならば大岩に蹴りを入れているのと同じようなものなのだ。



「ギャハハハハハハ!お前何やってんの、ダッセェ!」



情けない声を上げ地面に尻もちを付き、目を見開く金髪。


それをみてウニが大笑いし、金髪を罵る。



「う、うるせぇ!ちょっとバランス崩しただけだっての!!」



きっと何千回何万回やっても同じ結果だろうが、彼はそんなこと知るすべはないのだ。


しかし彼も直感的にそれに近いことを悟ったようだ。



そして何か新たな作戦を思いついたのだろう。二ヤリと笑うと、もう一度手を伸ばした。







ミシェルへ。



よくよく考えれば拓也に構わず、ミシェルだけを攫えばいい話だ。


それで拓也が反抗するのならば倒してしまえばいい。そんな考えなのだろう。



ミシェルの肩に手が届くまであと10センチほど。



「熱っつッ!!?」




そこで金髪の顔面になにか非常に熱い物がぶちまけられた。




「今のはその汚ねぇ手でミシェルに触れようとした罰だ」



「ッ…テメェ……」



ようやくゆっくりと振り向いた拓也。



悪態をつく金髪の足元に転がる紙コップ二つ。先ほど顔にかけられたものは紅茶だったのだろう。


拓也のまさかの行動に固まる他のウニ達。



「そんでこれは俺を冴えない面呼ばわりした罰だ」



彼らの目には恐らくブレて見えただろう。


高速で振りぬかれた右足は、金髪の顎先を掠めた。


次の瞬間金髪は、糸の切れた操り人形のように地面にうつぶせに倒れる



「おい!!大丈夫かよ」



「あ…ぁぁ……」



「しっかりしろ!!返事しろよッ!!」



涎を垂らしながらうなだれている金髪に寄り添う茶髪ウニ…と他の2人。


拓也はその内に、踵を返し人の中に紛れてるようにこの場から離脱したのだった。



・・・・・



人ごみに紛れた拓也とミシェル。


順調に公園から離れ始めていたとき、ミシェルが口を開いた。



「拓也さん、無視して公園を出る予定じゃなかったんですか?」



案の定先ほどの事だ。



「ん~、アイツミシェルの肩を掴もうとしてきたからなぁ、そこで流石に俺が我慢すればいい問題じゃなくなった。


まぁミシェルが触られて喜ぶような変態なら悪いことしたと思うけど」



「それは拓也さんでしょう?…というか背後が見えてるんですか……」



簡潔に説明した後、いつものようにジョークを飛ばす拓也。


それをミシェルも適当に返しながら、いつもながらの彼の人間離れした特殊能力のような物に驚き、そして呆れるのだった



「まぁ俺ですし……んでさぁ…」



ニヤけが増す拓也の顔



そして彼はミシェルを挑発するように口を開く



「俺が触られると興奮すると知っていながら、未だ俺の右腕に掴まっているということは誘っているということでオーケー?」



「……な…ッな!!!///」



次の瞬間、拓也の胸部を襲う見事なコークスクリュー。


ーやっぱりこの感じ……いい!!-



しかし喜ぶ…いや悦ぶ拓也。


流石はプロだ



「まぁまぁ、冗談じょうだ………ガハァッ!!



バカな……まさかハートブレイクショット!?」



「なんですかもう!只離れるタイミングを見失ってただけです!!///」



心臓が止まるような感覚に陥る拓也



しかしミシェルは弁解中で聞いてはいなかった。





「ハァ…ハァ……すみません…つい手が…」



「……………よし、次からは気を付けような?…な?」



時分がおちょくったせいでミシェルがブチギレたと思い込んだ拓也は、これ以上彼女を刺激しないように穏便に事を進めることにした。


来た道とは別の方向へ足を進め始める二人。



「にしてもああいう輩はどの世界にもいるんだねぇ、やっぱり。



ミシェルも気を付けなよ~、万が一ってことがあるからさ」



「…そうですね……実力行使以外にも解決する方法を考えておきます」



「あらヤダこの子ったら脳筋!というか絡んだ奴の方が心配だわ」



いつもの様な調子で笑う拓也。


しかしミシェルには一つ心配なところがあった。


彼の事だからきっとなんともないのだろうが、ミシェルの中の良心が彼女の動かす。


そして小さく口を開いた。




「あ、あの…」



「ん?」



首だけを後ろに向けて、いつものような笑顔を向けて来る拓也。


そんな彼に少しドキッとしながらも、ミシェルは言いかけた言葉を紡ぐ



「怪我とかされてないですか?…結構派手に蹴られてましたし……」



先ほどの背中にヒットした前蹴り。そのことで心配そうにそう尋ねるミシェル。


それを聞き、少しの間ポカーンとした拓也。



「大丈夫だって~、んもう!ミシェルちゃんってば心配し過ぎ~!」



口調が若干『しまうま』の店主のそれになった拓也。


そのニヤけ面を無性にぶん殴ってやりたくなったミシェルだが、とりあえずなんともないことを知り、ホっと胸を撫で下ろした。



「人がせっかく心配してたのに………」



「クックック…真のヒーローとは己は殴られ蹴られ罵倒されようとも他人のために尽くす者のことを言う」



そしていつものこの調子。


四六時中一緒に居るミシェルでも、真剣な拓也と話す機会などいくらあったのだろうか?


心の中で、そんな事を考えるミシェル。



「あ、でもさっき『俺を冴えない面呼ばわり~』って言って蹴りましたよね?


何処が真のヒーローなんですか?」



「甘いなミシェルよ……いつ俺自身が真のヒーローなどと発言したのかね?」


そんな鬱陶しい言い回しをし、ミシェルを翻弄し面白がる拓也。


イラッとしたミシェルはとりあえず脇腹に拳を打ち込んでおいた。



「クックック…私の筋肉の壁の前ではその程度の攻撃など無効化されるのだよ」



だが街中だからだろう。オーバーにリアクションをし目立ちたくない拓也は非常にムカつく笑顔を作りながらそう言った。


そしてそのまま喫茶店のような場所へ入って行く。


手ごろなカウンター席に座り、ミシェルにも座るよう促した。



「いらっしゃいませ~、ご注文お決まりになりましたらお呼びください~」



素晴らしい速さで水とおしぼりを持ってくる店員。



ー…ッチ…男か……ー



真面目に仕事をこなしている男性店員に心の中でそう毒づく拓也。


メニューを開いて、隣に座るミシェルにも見える様に位置をずらす。



「ミシェル何にする~?ちなみにここがジェシカに聞いた喫茶店だ。俺は………シュークリームと紅茶かな」



「ショートケーキにするんじゃなかったんですか?」



「気が変わった」



「そうですか……じゃあ私もシュークリームと紅茶にします」



ミシェルから注文を聞き届けた拓也。


店員を呼んで笑顔で注文を終わらせる。



店員が裏へ戻ったのを確認したミシェルは、この際だからと、ラファエルに効いた時からの疑問を、直接拓也に聞いてみることにした。



「あの…質問したいことが何点かあるんですけどいいですか?」



「年齢以外ならいいぜ」



知っている…と心の中でツッコんだミシェル。


あえて口に出さなかったのは、話をよけい長くし、本筋からそれることを恐れた結果だろう。



「じゃあまず……


拓也さんって体重90キロくらいあるってラファエルさんから聞いたんですけどそれって本当なんですか?」



刹那… 拓也の動きが止まった。




揶揄ではない。


物理的に動きが止まった。



「……どうしました?」



拓也のおかしなその仕草に思わずそう尋ねたミシェル。


次の瞬間、油の切れた機械のようにぎこちない動きでミシェルに顔を向けた拓也。


額からは冷や汗が流れている。



「い、いやぁ………………実はその体重少しサバ読んでるんだよ…………」



「?…なんでそんなことを?まさか体重がコンプレックス……て訳ではなさそうですね……」



「話は長くなるから簡単に言うと、ラファエルの奴さ………筋肉フェチ…だろ?」



「……はい…」



冷や汗を流す拓也は、恐る恐る駿前置くと、説明を始めた



要約するとこうだ。



・天界時代修行中の拓也。その中で拓也の肉体の成長・進化。



・それがトリガーとなりラファエルの隠れたる性癖『筋肉フェチ』が発動。



・そして拓也の身長、体重、体脂肪率、筋肉量…筋肉に関係する全てをラファエルが記録としてノートに記すことになる。



・拓也の体重、筋肉量などが増えていくたび、狂い笑いをするようになったラファエル。



・身の危険を感じた拓也は体重を偽り始める。




「体重とかが自己申告制で助かったぜマジで………もしばれたらどんな目に合うか……」



ガタガタと震え、歯をがちがちと打ち付ける拓也。


余程ラファエルが恐ろしいのだろう…。




「ラファエルさんはだけは常識人だと信じていたのに………確かに片鱗は見えてましたけど………」



「天界って場所は恐らくキチガイしかいないね。


セラフィムはあんなんだしラファエルはこんなんだしじーさんも初対面の俺の顔面に鈍器フルスイングするような奴だし。


あんなのが神や天使とか世も末だぜ」



やれやれといった顔でそう言い、水を飲みながら思い出しながら微笑む拓也。


だいぶ落ち着いたようだ。



「それで実際は体重はどのくらいあるんですか?」



「ミシェルの二倍はあるよ」



「…えッ!?」



水の入ったグラスを揺らしながら、目を合わせず衝撃の事実をそう言い放つ拓也。


ミシェルは驚き、思わず声を荒げた後、店内ということを思い出し少し赤くなり俯いた。



「じゃ、じゃあ…100キロ以上…あるんですか?」



「へ~、ミシェルって50キロ位なんだ~。これはいいことを聞いた」



「………………なッ!!///」



ニヤけ面でそう言った拓也。


ミシェルは、自分の体重がばれたことに動揺し、そして赤面した。



「最低です!嵌めましたね!」



「ハハハ、まんまと嵌りましたね!」



怒って拓也を罵るミシェル。


拓也はそんな彼女に、いつもの彼女の口調を真似して更に煽る。



「ハァ~………もういいです…口を滑らせたのは事実ですから…」



これ以上拓也を罵ってもなにも意味はないと判断したミシェルは、諦めるようにそう呟いた。


女の子として知られたくはないであろう情報上位に入る体重を知られたミシェルは、少しブルーになり、手元にあった水をちびちび飲み始める。



「まぁまぁそう気にすんな。その身長でその体重なら至って普通だぞ。


それにその程度の事結構前から知ってたし。正確には49.5㎏だろ?」



「ど、どういうことですか?ジェシカから聞いたんですか!?」



「見ればわかる」



「…………流石ですね…もう………」




見ればわかるといった拓也。


その相変わらずの超人っぷりに、ミシェルは驚くというよりも、毎度のことで呆れたように笑ったのだった。



「そうブルーになるな、いつかのミシェル誘拐事件の時にお前に飲ませた解毒薬も適切な分量で使わないと只の毒みたいなもんだ。

まぁ様々な不測の事態に備えてミシェルの身体情報はあらかじめ調べておかないといけないと思ったんで、悪いが他にもいろいろ知ってるぞ」



「…気持ち悪いですね」



ジト目で拓也を見つめてそう言うミシェル。


対する拓也は本気で言われていないことは分かっているのでいつもの調子で続ける。



「ハハ、そう邪険にするな。起こり得る最悪は事前に想定しておかないといけない。

そうしとかないともし最悪が起こった時に最善を尽くすことが出来ない。


まぁそんなことが起こらないように未然に防ぐのが一番なんだけどね~」


途中、珍しく真剣なトーンに声色が変化し始めた拓也だが、


最後はいつも通りヘラヘラ笑いながらそう言い話を締めくくった。




「お待たせ致しましたー」



拓也のその話が終わると同時に、店員がシュークリームと紅茶を運んできた。


何も入っていないストレートの紅茶からは、ゆらゆらと湯気が上がっている。



「やっぱり当たりだな。流石はスイーツ博士ジェシカ…」



運ばれてきたシュークリームを一口頬張り、感想を述べた拓也。


ミシェルも紅茶に角砂糖を一つ落とし、かき混ぜる。




「あ、そうです。さっきの魔力で作ってた文字…あれってどうやってたんですか?」



そこで思い出したようにミシェルが話題を振った。


質問された拓也は、口の中のものを何も入れていない紅茶で流し込み、紙ナプキンで軽く口元を拭う。



「ただの魔力コントロールの応用だ、ある程度の知識と技量があれば誰でもできるぜ」



あっけなくそう言い切る拓也。


左手の人差し指をピンと伸ばすと、火属性の魔力を放出し『!』を作って見せた。


しばらくの間見惚れていたミシェルは、感心したといった顔で小さく拍手をする。




「それも何も魔力に限った話じゃない。魔力を使って発動する魔法。散々イメージイメージ言ってるが、実はこれにもちゃんとした法則がある。


まぁ今の魔法学じゃ発見されてないみたいだがな」



「そ、そんなものがあるんですか!?」



「あぁ、魔法を使用する際に使う【精霊語】《エレメントワード》というものがある。これが理解できれば新型の魔法の開発がより容易になるんだ。

知りたい?」



拓也の口から語られるようとする魔法の真理。


ミシェルは個人的にも魔法が好きなほうだ。


そんな革命とも言うべき新しい知識は、喉から手が出るほど知りたかった。



「…いえ、いいです」



しかしミシェルは拓也の提案を断った。



意外そうな顔をする拓也に、ミシェルはにこやかに笑いかけ、語り始める。



「確かに知りたいです…けど拓也さんに教えていただいてる剣術も未熟なうちに新しいことに手を出すのは拓也さんに失礼です」




「そうか、じゃあ気が向いたらいつでも言えよ」



拓也はそのミシェルの返答に、対して驚きもせず笑いながらそう返した。



ー…まぁミシェルならそう来ると思ってたけど…ー



内心一人でそう呟く。


どうやら彼女がどう返答するかまで分かっていたようだ。



「あぁ、後このことは他言無用で頼むぜ」



紅茶に角砂糖を二つ落とした拓也は、隣でシュークリームを頬張っているミシェルにそう言った。


ミシェルは拓也に向き直す。




「………この世界ではまだ知られていない知識だからですか?」



「さっすがミシェル、理解が早くて助かるよ。


確かにこの【精霊語】の知識があれば新型の魔法の開発が容易になって、人類はより発展した文明を手に入れるだろうけどさ~医療魔法の発達とか…


でもいいことばかりに使われるとは俺は思えないんだよね」



「………確かにそうですね」



紅茶片手にへらへらしながら自分の考えを述べる拓也に、ミシェルは共感の意を示す。



「今でもあっちこっちの国で戦争やってるしね~。一体1日でどれだけの人が死んでるんだろうな。


そんな中こんな知識を流しちゃったら間違いなく新型とか改良された攻撃魔法でもっと死人が出ると思うんだ」



ちょっと苦笑いしながらそう説明した拓也。


確かにそんなものが出回ればきっと非人道的な魔法が生み出され、今より人が死ぬことになるだろう。



人々の生活をもっと豊かにしてあげたい。そして豊かにすることのできる新たな知識を持っている。

しかし同時に争いがより激化する危険性も秘めている。



表裏一体のその新たな知識。


それを世に放つか、否か。力を持つが故の苦悩だった。




そこまで聞き、ミシェルは気がついた。


魔闘際の時拓也が、王国の医療班に教えた治癒魔法。



「なるほど…既成している魔法を教えるだけなら………」



「そう、【精霊語】の存在は知られない」



「それに治癒魔法、人が傷つくことはありませんね。むしろその逆です」



納得のいった顔で頷いたミシェル。


しかし対して拓也は、苦笑い。


なんで? と表情で訴えかけるミシェルに拓也は一度紅茶で乾いた喉を潤す。


そして口を開いた。



「それがそうとも限らんのだよ。


たとえ直接的には傷つける事が無くても、この魔法があることによって兵の戦線への復帰が速くなる。


しかし何回も死にかける思いをする兵達は、肉体こそ回復しても精神は着々と蝕まれる。


ここから考えられるのは、兵たちの士気が下がって戦いが長引くこと。


結果、物資は無限じゃないからその状況が続けば国民の生活に支障が出始める…的な?」



「一体どこまで考えてるんですか……」



ペラペラと論文を読むように説明してくれた拓也。


ミシェルはため息をついて、苦笑いをしながら残ったシュークリームを全部口に含む。



拓也は拓也で微笑している。



「確かに深読み過ぎるかもしれないけど何が起こるか分からんからな。いつも最悪を想定するようにしてるんだ。


まぁ今回は俺はこの国の人間を信じてこの魔法を世に送り出したわけだからねぇ~」



拓也はシュークリームの最後の一口を頬張り、紅茶で流し込んで大きな欠伸を掻いた後、手に持っていたカップを置く。


椅子に座っていたことで固まっていた体を軽く伸びをすることで解消すると、力なく椅子に体を預けた。



「いまさらだけど俺この国結構気に入ってるんだよねぇ~。今は戦争もしてないし、奴隷制度も無いしさ」



「確かに他の国ではまだ結構当たり前にあるようですね」



「それでこの前直接王に聞いたら『え?だってもし僕が奴隷だったら嫌だもん。辛そうだし』だって、ホント面白いこの国の王」





ハハハと軽く笑いながら、席を立ち、店の出口近くのカウンターに向かう拓也。



「ありがとうございますー……」



やさしく笑いかける店員(男)にあからさまな作り笑いの拓也。


代金を支払うべく財布を取り出す。



「私も……!?」



拓也に全額出させるのは悪いと思ったのか、自分の分は払おうと考えたミシェル。


しかし財布を取り出そうとバッグに手を入れたきり、見えない力によって押さえつけられ腕がピクリとも動かせない。


犯人は………考えるまでもないだろう。




そしてミシェルの抵抗空しく、結局拓也に払う形になってしまうのだった。



・・・・・



「…拓也さん」



「魔法って便利だよね!」



「やっぱりですか……」



満面のニヤケ顔で、ムカつくグッドサイン間で作りながら振り向きそういう拓也。


なんと無駄な魔法の使い方だろう…


ミシェルは少しムスッとした顔をした後、額に手をやった。



「まぁまぁ、そう機嫌を悪くするな。ミシェルには色々世話になってるしね、このくらいはさせてくれると嬉しい」



「それなら私のほうがお世話になってますよ。料理に掃除に…それに……その…護衛?」



疑問系でそう反論するミシェルに、拓也は合点がいったといった顔で頷いた。



「あぁ、確かに俺のほうが世話してるわ」



「なんですかそれ心底ムカつきますね」



いつものように拓也がふざけ、ミシェルがそれを咎める。そんな軽く冗談を飛ばしながら、二人の間で談笑が始まった。


フツメンの拓也と美少女のミシェルが仲睦まじく喋る様子は、周りから見れば結構浮いている存在なのだろうが、


そんなことは二人とも全然気にしてないのであった。




・・・・・



日が傾き始め、夕焼けで辺りがほのかなオレンジの世界に変わる。


時刻は夕方の6時過ぎ。



「いやぁ~結局買い食いばっかりしてたな」



「私は結構楽しかったですよ」



「まぁ俺が計画したわけですし当然ですわな」



「ノープランとか言ってたくせによく言いますねそんなこと」



ゆっくりとした歩調で帰路に着く二人。拓也とミシェル。


口では拓也を罵るミシェル。二人きりの外出という事で最初はかなり緊張していた彼女

しかし、いろんな意味で調子を狂わす拓也のおかげで楽しむことができたのだった。



心地よい充実感に浸りながら拓也の隣を歩く。



そんな時だった………。




「おいテメェ…待てやコラ」



背後から、どこかで聞いたような声。


思い出そうとしていたミシェルの隣。拓也が深いため息をついた。



拓也はそのままゆっくりと振り向く。



「ハァ~……なんか用?」



声から正体を察していたのか、拓也はめんどくさそうに苦笑いを浮かべながらそう声を掻ける。


拓也に釣られて振り向いたミシェルの目に飛び込んできたその人物。





昼間のヤンチャ集団だ………。



ーヤバイなんか人数増えてるし……ていうかなんであの金髪野郎以外全員頭ウニなの?そういう宗教なの!?-



ということはあの金髪が教祖か…などと続けて意味不明なことを考え

…そして拓也は盛大に吹き出した。




「あ゛?なめてんのか?」



ゾロゾロと拓也に近づいて行き、金髪が拓也の胸倉を掴む。


相変わらずクスクス笑いながらプルプルしている拓也。


ミシェルはこの状況でそんな呑気でいる拓也に頭を痛めながらも、もしもの時のために魔力を練り上げ臨戦態勢をとる。



そんな中、ようやく拓也が口を開いた。



「昼間と…ックックック…同じこと言ってる……クスクス…己は九官鳥か!!」




「おい、こいつもうシメちまおうぜ。イライラしてきたわー」



ウニ集団の中から、昼間もいたウニがそう発言する。


すると周りのウニたちが笑い声を上げ、はやし立て始めた。


所謂悪ノリと言うやつだろうか?



ーというかいつの間にかターゲットがミシェルから俺にシフトしてたわけね……ー



そんな災難に見舞われる拓也はいつもの調子で笑ってはいるものの、内心泣きそうになっていた。



「やっちまえやっちまえ!」



「しばらく歩けないくらいにしてやろうぜ」



ガヤガヤと拓也をどういたぶろうか、下品に笑いながら話し始めるウニ共。


しかし金髪が横に手をやり、それを制止する。



「待て待てお前ら、コイツにもチャンスをやろうぜ」



いやらしく笑いながらそう言った金髪。



その顔からは、慈悲と言うものは感じない。


ただどう拓也を辱めてやろうかとでも考えているといった表情。


拓也を掴んでいた手を荒っぽく離し、



そして次の瞬間その言葉は飛び出した。



「ここで土下座しろよ、それで許してやるから」



ニヤケながらそんなことを言う金髪。


それを黙って聞いていたミシェルを激しい怒りが襲い、遂に彼女は彼ら仕留めるために左手を金髪にかざした。


しかし彼女の動きはそこで停止することになる。



「どうもすみませんでした~」



流れるように美しく…拓也は土下座を決めたのだ。



「ギャハハハハハハ!!女の前でダッセェ!!」



「コイツ頭おかしいんじゃねーの!マジキメェ」



ミシェルから見れば全然心の篭っていない。そんな土下座だったが、ウニたちにとってその光景は、自らの保身のために、女の前で情けなく頭を下げる男。


そんな風に映るのだろう。


下品な大笑いがそれを証明している。



「は~いお嬢ちゃん!こんなキモくて情けない彼氏君なんてほっといて俺らと楽しいことしようぜ~」



拓也が土下座したことで気を良くした金髪は、そのままミシェルに手を伸ばした。


激しい怒りに駆られているミシェル。


彼女がまさに彼の顔面に光線を打ち込む一歩手前



「あれぇ~約束が違うんじゃない?」



金髪の肩に拓也の手が置かれた。



「とりあえず土下座したわけだしもういいじゃん?彼女に手を出すな」



「あ?今からお楽しみなんだよ。


テメェはそこで下座ってろ、お嬢ちゃんの前で情けなくなぁ!」



いつも通りのニヤけ面で肩に手を置きそういう拓也に、言い返す金髪。


またもや盛大に笑い出すウニ達。



そして次の瞬間、ゴギッ…と言う鈍い音と共に、あたりは静まり返った。



「もう一度しか言わんからよく聞いてろ、彼女に手を出すな」



皆の視線が注目した場所。


それは急に強い口調に変わった拓也でもなく、金髪の左手に送られていた。


右手より少し伸びたかと思うくらい伸びた腕。


それが金髪の体の振動に合わせ、プラプラと揺れているのだ。


その動きは、金髪が任意で動かしているようには見えない。



しかしそんな時間も無限には続かない。



「あ、あ、あ………あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」



数秒間静まり返った空間は、金髪の大絶叫によって終わりを迎えた。


肩の関節を外された金髪は情けなく喚き、地面に倒れのた打ち回る。



「俺は弱いものいじめは好きじゃないんだ、このまま帰れ」



先程とは一変。


冷たい声色でそう言い放ち金髪の襟を掴むと、ウニ集団へ向かい軽く放る。


そして踵を返してそのまま前へと歩みだし、ミシェルの手を取った。



「帰るか」



「は、はい」



ウニ達を残し、歩き出す二人。


しかし簡単に見逃してくれるようなやつらではないようだ。



「ッチ…」



死角である背後から飛来した拳サイズの石を見事にキャッチした拓也。


元々拓也を狙って投擲されたそれは、コントロールを失いミシェルの後頭部に当たろうとしていたのだ。


もちろんこれを投擲した人物は…



「死ねッ!!殺すッ!!今ここで殺してやるッ!!!」



誰が見てもただの虚勢にしか見えないその叫びを拓也はなんとも言えない表情で見終わると


手に掴んでいた石を粉々に握り潰す。


握撃。ここに来てようやく拓也の異常さに気がついたのだろう。


恐ろしいものを見るような目で後退りをし、逃げよう…とするがもう遅い。



拓也は非常に冷たい表情と声色。それに殺気を織り交ぜ放った。



「まだ俺達に構うようなら……『今ここでお前達を殺す』」




逃げようと前に出す足。しかし面白いほどに縺れ、立ち上がり、走り出しては転び、走り出しては転び。


それを繰り返しているウニ達に更に濃密な殺気が当てられた



「『相手の力量も測れず自分の力量すら知らないゴミ虫め、貴様らのような常識も弁えん奴を見てると心底虫唾が走る』」



ウニ達の本能を襲う、絶対的な生命の危機。


目の前の男にはどう抗おうが絶対に勝てない。彼らの本能はそう告げる。



「『第一、殺すなんて言うくらいなんだからもちろん俺に殺される覚悟もあるんだろうな?』」



冷徹な表情で淡々と告げる拓也。


ウニ達は、言うことを聞かない自分の体を奮い立たせようとあらゆる手段で刺激をあたえる…


が、相変わらず震える脚は動く気配すらない。



今にも心臓麻痺で死にそうな表情の彼らに、拓也は不気味に口角を吊り上げて見せ、片手を向け風と雷の魔法陣を多重展開した。


そして死神のように笑いながら、かつ冷たく止めの一言を言い放つ。



「『あぁ、安心しろ。塵一つの残らないから』」



その刹那、一際強い殺気がウニ達の全身に襲い掛かる。



拓也の絶妙な加減を加えた殺気。


ウニ達は口から泡を吹き、気を失った。


それを確認した拓也。ゆっくりと魔法陣を解除し、片手を下ろす。



「すまんなミシェル…みっともない所見せて」



「い、いえ…というか大丈夫なんですか?……彼らは」



「安心しろ、生きてるから………というよりミシェルさん…。


なんで俺の腕に?」



アハハ~と笑い、頭を掻きながら、拓也は自らの左の腕にしがみ付くミシェルにそう笑いかける。



自分でも無意識のうちにしがみ付いていたのか、指摘されようやく気がついたミシェル。若干赤くなりながら拓也の鳩尾に、素晴らしいボディーブローを叩き込む。



「ゴッホァァァ!?」



「だ、だって…拓也さんの殺気を少し感じ取っちゃいまして……」



「それなら尚更近づいちゃ駄目だろ…」



もじもじしながらそう弁解を試みるミシェル。しかし弁解になっていないことを拓也に指摘され、更に赤くなり俯いた。


この後、やがて始まるであろう無言の空間。


それが嫌だった拓也。



「腕に当たる二つの誘惑物資、通称『お○ぱい』のせいで煩悩が掻き立てられて危うく声に覇気がなくなるところだったぜ…危ない危ない」




無言で放たれるレーザーは、拓也の顔面を呑み込む。


光が晴れたそこには、黒く焦げた拓也のフツメンが残る。



「なッ…なッ///!!………………もういいです、私も悪いですから………」



頬が更に赤く染まって行き、第二波に備え始めた拓也。


しかし予想とは裏腹に、ミシェルは顔を逸らして攻撃を中断した。



先程に比べれば元に戻ったが、まだ少し赤い顔の彼女は、恥ずかしさを紛らわすためか、拓也に喋りかける。



「拓也さんの腕…筋肉凄いですね……」



「ッ!?まさかミシェルまで!?」



「違います!単純にそう思っただけです!!」



ミシェルのその言葉で、一瞬にしてラファエルの狂いっぷりをフラッシュバックした拓也は、身震いしながら、恐れを孕んだ声色でおびえるようにそう言った。



ミシェルはその誤解を解くべくそう説明し、安堵した拓也はほっと胸を撫で下ろす。



「……なんて言うんでしょう?こう…筋肉のなんとも言えない……触り心地…でしょうか…?」



ーなに!?ミシェルまで筋肉フェチ発動!?もう俺の気の休まる場所は無いというのかッ!?-



「いやしらねぇから………俺の筋肉は魔性の筋肉なの?


…なにそれキモイ。


まぁ触りたければいくらでも触るといい。お互いwin-winな関係だね」



「なんですかそれ……」



そうは言いつつミシェル。徐々に…徐々に手が拓也の腕に伸びてゆく。


そして拓也の左上腕を、その右手で掴んだ。



「驚きの吸引力…ダ○ソンも真っ青だな」



「な、なんで…?…でもこの反発…」



自らの手が自然に吸い寄せられたことに驚きつつも、拓也の腕を堪能し始める。


若干興奮して来ている拓也だが、表情に出さない辺り、流石はプロの変態紳士だ。



ミシェルの両手で掴み、一周するぐらいの上腕。


一般人と比べれば発達している部類に入るのだろうが、この腕が計り知れないパワーを出すことを、ミシェルは想像できないでいた。


しかし、彼の前日のあの腕立ての仕方を思い出しその考えは綺麗さっぱり消え去った。





「ハッハッハー、どうだ凄いだろー」



大きく笑いながら、拓也は腕に力を込める。


すると上腕を掴んでいるミシェルの指が押され始める、それに抗うように指に力を込めるミシェルだが、


まるで鋼鉄に指を押し込んでいるかのようにビクともしない。


これが同じ人間の肉体なのか?と疑問に思いながら、そっと手を離した。



「本当に凄いですね…というか凄いを通り越して気持ち悪いです」



「なにそれひどい


…じゃあやっぱり人前で服脱ぐのはマズイな…」



「いや、そもそも人前で服脱がないでくださいよ」



「じゃあミシェルの前で脱ぐわー、脱いじゃうわー」



見事なタイミングでツッコむミシェル。


しかし悲しきかな…一度ふざけるスイッチが入った拓也は止まらない。



「……」



「オーケーオーケー。とりあえずその鈍器を仕舞おうか。というかそれって本来の用途じゃないよね?」



瞬時に魔武器である杖を呼び出すと、慣れた手つきで上段に構えるミシェル。



ークッソ!剣術なんて教えるんじゃなかった!!-



内心若干後悔しながら、保身のため彼女を宥める拓也。


その姿から、先程、ウニを気絶させたようなの覇気は全く感じられない。


必死に命乞いする拓也。


彼はそこでふとあることに気がついた



「…ってミシェル、心拍数高いままだぞ。ごめんそんなに怖かった?」



彼が先程、彼女の手首を握りながら使った殺気。過去にも同じようなことがあったと拓也は少し自分の気の効かなさに落ち込む。


それはそうとし、どうやって彼女のその情報を知ったのだろうか…


答えは拓也だからとしか言いようがないだろう。


そう言い当てられたミシェルは、少し目を見開く。



「な、なんで分かるんですか!?」



「俺だし」



「………妙に納得できるのが悔しいです」




「それで大丈夫?俺離れてた方がいい?」



珍しく心配そうな表情でミシェルに喋りかける拓也。


元凶である彼は、自分自身が距離を置くことで彼女への負担を減らそうと考えたのだろう。


しかしミシェルは、少し顔を伏せると、拓也の予想とは遥かに違う選択を提示する。



「あの…手、握っててもらってもいいですか?」



「……………………Why?」



彼女の突然のその提案に、普段ではあまりしない沈黙の後、何故か英語で返答した拓也。


ミシェルからすれば、羞恥心を押し殺し、勇気を出してようやく言った一言。


ジェシカがこの場に居れば、きっと満面のニヤケ顔で喜んだことだろう。



「拓也さんの傍に居ると…なんだか凄く安心するんです」



非常に稀な、ミシェルの赤面。


実際は、主にジェシカのせいでよくあることだが、拓也の前ではかなり珍しい出来事だった。


すかさず脳内フォルダに今見ている光景を録画と録音と画像で記録し始めている拓也。



「まぁ俺ってば最強だからな。信頼と安心の拓也さんだからな」



「…………」



「…冗談」




冷たくあしらわれた拓也は、少しシュンとしながら踵を返す。


次の瞬間、いつものウザイ笑顔で振り返り、右の手をミシェルへスッと伸ばした。



「さぁ、共に行こう。君に勝利と栄光を!」



「………よくいつもそんなテンションで疲れませんね…」



拓也を軽く罵りながら、ミシェルは彼の手を取る。


拓也の手の指4本をキュッとやさしく摘むように握り、先を行く彼の後を行くミシェル。



硬く、ゴツゴツした拓也の手の感触。


心臓は今にも張り裂けそうに脈を打ち、ミシェルの体温を上昇させた。




ふと彼女は思い出す。



『それとたっくんのことさん付けで呼んでるけどそれも良くないね~、呼び捨てでいいんじゃない?』



文化祭の時、ジェシカがミシェルにしたアドバイス。


何故このタイミングで思い出してしまったのだろう…


ミシェルはそう思いながら、いつものジェシカの小言を思いだす


『もっと勇気を出すべきではないのか?』…と



現に今も拓也と手をつないでいるミシェル。


今ならきっとできる!…そう自分自身に暗示をかけながら、ミシェルは恐る恐る口を開いた。



「………拓也…」




「どうした?呼び捨てなんて珍しいな」



「なッ!///なんでも無いです!」



彼女が勇気を出して始めて拓也を呼び捨てで呼んだ。


しかし彼は特に何も考えずに、思ったことを素直にズバッと言う。


彼が言った事実に、やはり恥ずかしくなったのだろう。


ミシェルは赤くなりながら必死に有耶無耶にするのだった。



「そうか~、まぁ呼び捨てで呼んでくれても構わんけどな」



「…そうですか……善処します」



「そうしてくれ」



ケラケラ笑いながらそういう拓也。


彼が前を向いているのが彼女にとっては幸なことだ。



そんな感じで休日は終わって行く…。


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