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ARia-アリアー  作者:
5/15

5話「戦争」


「くっ……」

 左右を見ると剣を構えた鎧を来た男二人が立っている。

こちらも自分の愛剣を構えては牽制する。

 左側の男が剣で切りかかってくるのを剣で受け止めては左に体をそらし相手の体制を崩す。その瞬間、体制を崩した男に蹴りをいれて先ほど右側にいた男の斬撃をなんとか剣で受け止める。

 その動きは訓練を受けていない一般人ではまず目で追えないぐらいの速さだった。

 攻防を続けているうちに相手、男二人の集中力が切れてきたのか動きが鈍くなった。鈍くなった所で、仕込ナイフを投げた。そのナイフを弾いた男の懐に一気に入る。

 無駄のない動きで名前すらしらない男の急所を切り刻んだ。

「こいつ!」

も はや屍となった男を盾にするかの様に屍に蹴り、斬撃を屍に受け止めさせる。そこで致命的な隙が切りかかってきた男には生まれた。そこをクライシスは逃さず、確実に首元に剣を突き刺した。

 すさまじい量の生ぬるい赤い血がクライシスにかかる。

「次だ」

 かかった血を気にする余裕などは無く、次の相手に向かう。

 現在、エンセン王国は隣国のバエリス国と開戦中だ。

 ただの戦争ならこの国は何度も経験をしている。しかし、バエリス国は昔からエンセン王国とは親交が深く、戦争などついこないだまでは起こるなど考えられなかった。

『バエリス国を攻めろ』

 王からの命は軍、民衆すべて驚かせた始末だ。

 それだけじゃない、民衆への度重なる重税、軍部の増強、外交への悪化。 クライシスがアリアと出会ってからすでに一年ほど立っていたが、もはや国として政策が低迷していることは民衆から見ても明らかで、限界を感じている。

 何回か民衆による暴動が起きたこともあった。その度にウォール騎士団などをはじめとした軍が動き鎮圧していった。逆らう者は家族すら処刑までされてしまう。

 何回もクライシスはバリエス国攻略作戦に対する抗議書を提出したがそれが受理されることは結局なかった。

 どんなに攻めたくは無いと思っても結局は従うしかない。自分が従わないと自分だけならまだしもバーンとアリアまで反逆罪に巻き込んでしまうことになるからだ。

「おっと、クライシス。無事だったか」

 次の作戦ポイントまで走って行く途中で見慣れた男が建物の影からでてきた。グレン・カスールだった。

「グレンこそ無事だったか」

 いつもの様などこか抜けている顔だったのでクライシスも安心した。

「良い知らせと悪い知らせがあるけど、どっちから聴きたい」

 二人で回りを警戒しながら一端走るのを辞め、グレンが聞いてきた。

「なら、良い知らせから聴こうか」

「了解、なら良い知らせからな。中央特殊連隊と第一、第二中隊、俺たちの隊長が率いるウォール騎士団の別働隊が城の内部へと突破した。この戦争も直に終わる」

ちなみに今クライシスが攻めているのはバエリス国の中枢である中央都市【ミィーズ】。

もともとバエリス国は軍事力が低い国であり、国のエンセン王国に守られる形で今まで存在してきた歴史を持つ。

なので、今ではいろんな国を攻め、軍事国家へと成り果てたエンセン王国が本気を出して攻め入れられたらひとたまりもない。

その証拠にこの中央都市まで攻め入るのに二か月ほどしか時間はかからなかった。

そして、クライシス達は城までの突破口を開く、別働隊への援護の任務を与えられていた。

ここまで来るのにいったい何人の敵の兵隊を斬ったかわからない。相手は戦闘員な故、前の村人への虐殺行為に比べて胸は痛まなかった。

いや、考えるのを辞めていた。

余計なことを考えると、気が散って戦闘に集中できず、自分が斬られるとクライシスは思ったからだ。

だから、最初から斬った人数など気にしないようにしておいた。

「……早くこんな無駄な戦争を終わらせよう。グレン」

「おうよ。敵さんもわんさかまだ居ますからね。城に向かわせないように足止めしなきゃな。それで、悪い知らせなんだが……」

 何処に潜んでいたかわからない敵の弓部隊の弓が容赦なく二人に襲いかかるが、二人は冷静に剣で飛んで来た弓を叩き落とす。

「おうおう、怖いねぇ!この辺りを任されていた第三剣兵中隊が苦戦して一度退却した」

建物の影へと咄嗟に隠れると今度は剣兵隊がこちらへと距離を縮め、二人を囲んでくる。

「おい、それって……」

「つまり俺達は完全に孤立した」

 当初、聞かされていた作戦では相手側の指揮系統を乱すのが目的で、クライシス達数名が囮役になり、作戦終了後は第三剣兵中隊と合流するはずだった。

この絶望的な状況に溜息を吐いてから周りを見渡せば、弓部隊もこちらを狙ってきているのが見える。

「グレン……この剣兵はなんとかする……お前は弓部隊をなんとかしてくれ」

「なんとかしてくれってな、この状況でそれを言うか。お前」

「するしかないだろ!別働隊が戦争終わらせるまでの辛抱だ。グレン。それに大半の敵兵は城防衛に回っているはずだ。俺達二人居ればなんとかなるさ」

「たく、しかたねぇな」

グレンが弓部隊に向かって走り出すと同時にクライシスはそれを追わせない様に剣兵に斬りかかった。

 複数相手でも相手の斬撃を冷静に裁いていく。

その裁いている姿はたから見る打ち合わせでも事前にしているのかと思わせるほど動きは滑らかだった。なるべく弓兵から弓を貰わない様に意識しながらの立ち回りは自分の師匠であるバーンからしっかりと叩き込まれていたので自然と体が動いていく。

 一人、また一人と確実に剣兵の急所を切り裂く。 

今は別働隊を信じて戦い続けるしかなかった





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