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ARia-アリアー  作者:
1/15

1話「出会い」

この小説は自分が所属している小説サークル

『死亡フラグ』

で書いているオリジナル小説です。

一応メインのお話は完結している作品なので投稿しました。

少しでも読んで楽しんで頂けると幸いです。


最低でも一週間に1話~3話のペースで上げていく予定なのでよろしくお願いします。


それでも待てないって方は

http://deathflag.sakura.ne.jp/

死亡フラグのHPに乗せております。

そちらをお読みください。


ただ、ここに上げるものは少しだけ変えるかもしれません。


 


 世界はつまらない。 生きていることがつまらない。 そう思っている男が、男がよく通っている飲み屋にいた。

 その男はこの国の騎士が着ているような鎧、マントを着て、腰には一般的な剣よりも細く反っている剣――この国では珍しい武器――を携えていた。さらに、この国、エンセン王国騎士団の頂点に君臨するウォール騎士団に所属する証のエンブレムが鎧の肩部分にしっかりと刻められている。

 別に成ろうと思ってこの騎士団に所属したわけじゃない。

 剣の腕を磨くのだけを生きがいにして、毎日毎日、修行をしていたら知らぬ間に成っていた。

 最初はそのことを誇りに思っていた。

 若くして所属するのはとても珍しいことで、何よりも何も誇れることがなかった自分が剣の腕で王国に認められたわけだ。

『国を守る』

 そう張り切るのは極当たり前のことだ。ただ、どんなに綺麗に見えても汚いところはあるわけで、それはウォール騎士団だって例外じゃない。

 命令があれば人を斬らないといけない。

 国を護るためという理由のためにその男はいったい何人の人を殺めただろうか。

 普通の敵国の兵士だったらまだ割り切れた。でも、どうみても幼い子供や非力な老人。

 命令のせいでそういったものまで殺してきた。

 正義とはいったいなんだろうと何回も自問自答を繰り返したが、その度にわからなくなっていく。

 男はふと周りを見渡してみる。

 楽しく話すカップルや、おっさんや、おそらくクライシスより階級が低い同じ国の兵士が 楽しく飲んでいる。

 その姿を見て、すでに微笑ましい光景だと思えず、滑稽だと思ってしまうほど心が汚れてしまっていた。

「はぁ……」

 今日だけでもう何回のため息だろうかと考えていたらそっと自分が注文していたお酒がテーブルに置かれた。

「おやおや、天下のウォール騎士団の団員がため息かい?」

 見慣れた顔が視界に入る。

 短い銀髪にバンダナをつけ、鼻の下には凛々しい髭をはやしている、いかにも近づくと暑苦しい厳つくて、若干歳がいっていそうな男性――名前はバーン・ロジャー――だ。

「師匠……」

 彼はこの男の剣とは何たるかを教えてくれた本人だ。

 この道に引きずり込んだ張本人と言っても過言じゃない。でも別に恨んでいるわけじゃない。

 そもそも恨む権利がこの男には無い。

 戦争で孤児になった自分を拾って育ててくれたのが彼なのだ。

 名前すら無かった自分にすべてをくれた張本人なのだから…。

「師匠はやめろ。 もう俺はただの飲み屋のマスターさ。それに、今、俺よりお前のほうが強いよ。クライシス」

 クライシス――本名、クライシス・ロジャー――はテーブルに置かれたミートソースのスパゲティを一口食べ、トマトの絶妙な酸味が口の中に広がる。

「それでも俺に取っては師匠だ」

「やれやれ、いつになったら父親と呼んでくれるのかねーこいつは」

 このやりとりもいったい、これが何回目だろう。 もう数えることが面倒くさくなるほどしていることは確かだ。

 クライシスもバーンのことは師匠ではなく、育ててくれた父親だと思ってはいるが、そこまで甘えることが彼には出来ないでいた。

 すべてスパゲティを平らげると、お代をテーブルの上へと置いてそっと席から立ち上がる。

「おい、クライシス、もう行くのか?」

「あぁ、美味しかった。多分明日も来るから」

 バーンに一言言ってから店の外へと出る。

 もう外は真っ暗で空を見上げると星が綺麗に光っている。

 暗い道をひたすら歩いて行く。

 クライシスの住んでいるウォール騎士団の寮は少しこの街から離れたところにあるため、いつもこの街からだと少し歩かないといけない。

 街から抜けると、広大な畑が広がり、人気の無い道に抜ける……いつもなら。

 今日は珍しく人気があり、数人の男たちがいた。

 クライシスは特に興味がなかったのでスルーしようとしたが……。

 その横を通り過ぎる時に背筋が凍る感覚が襲った。

 反射的に男たちの方を向き、腰にさげている剣に手をかけてしまうほどの殺気だった。

 この殺気はただ者じゃない。明らかにクライシスより、一つ、二つ上手の強者だ。

 男の集団たちからの殺気だと思ったがどうも違う。

 その殺気は集団たちの中心にいる。

「気のせい……か……?」

 だが、殺気は一瞬で消えた。

「おい、お前、何か用か」

 集団の中の男一人がクライシスに気付いた。

 剣に手をかけていた為か、もの凄い形相で睨んできた。周りにいた男たちもこちらを振り向けば睨んでくる。

「いや、何でも無い」

 とりあえず、剣から手を離し、こちらは敵意など無いと言うことをアピールはしてみるものの、今さらそんなことしても効果は無い。

 現に、男たちはクライシスを囲み始めた。

 面倒なことになった。

 まさしく、クライシスは『絡まれてしまった』わけだ。

 大抵、町中でも絡まれてもウォール騎士団のエンブレムを見たらそれだけで尻尾を巻いて逃げいくのだが、今は夜のため、エンブレムに気付かない。

 クライシスは心底面倒くさい顔をしながら辺りを見渡す。

「……ふむ……全員で十二人か」

 人数を冷静に確認する。

 いかなる時でも冷静に情報を集めて判断するのは基本的なことで、クライシスには容易い。

 ぱっと見てもどれも隙だらけで、明らかに自分より弱い。クライシスはそう思った。

「おい、俺たちも別に悪魔じゃない。痛い思いしたくなきゃ身包み全部出せば許してやるぜ」

 リーダー各らしき男が一歩前に出てくる。 どうやらこいつら最近この当たりで話題になっている盗賊の集まりみたいだ。

「はぁ……わかったよ」

 クライシスは懐から金が入った袋を取り出せばそれを男の前の地面に落とすように投げた。

「わかれば良いんだよ。あんたみたいな素直やつ俺はす…がぁ…!?」

 男が袋を取ろうと視線を袋に落とした瞬間、クライシスはおもいきり男の顔に蹴りを入れた。当然男は地面に倒れて、一発KOとなった。

 多分、あれは鼻の骨ぐらいは確実に折れただろう。

「す…?すまんなぁ。良く聞こえなかった。ちなみに、俺はあんたらみたいなやつは反吐が出るほど大嫌いだ」

「な…お前!良くもやったな!」

 残り十一人。

 当然、怒った男たちは剣を抜き、そのうち何名かが勢いをつけて斬りかかってきた。

 クライシスは体を横に逸らして最初の一撃を避け、勢いが余った男に足を掛けて転ばせる。 それをすると同時に後ろから切りかかってきた男より早く体を捻り、避けた後、すかさず首に首刀を入れる。

「どうした?もう怖じ気づいたのか?仕方ない。ハンデをやろう。剣は抜かないでおいてやる。纏めてかかってこい!」

 残り九人…。

 次から次へと襲ってくる男たちを無駄の一切無い動きでクライシスは倒していった。

そして…。

「ふぅ…食後の運動にすらなりゃしないな」

 しばらくすると、クライシスの周りには返り討ちにあった男たちが倒れていた。

 地面に落ちていた自分の財布である金が入っている袋をひょいと拾い上げれば懐へと入れ、さっさと宿舎に行こうとした瞬間… 。

「……!?」

 クライシスは見たこともない少女が自分のマントの先を持って、引っ張っていた。

「子供……?」

 とっさに前に飛んで距離を取ってしまったため、恐る恐るその少女に近づく。

 暗くて良くわからないが、その少女は腰ぐらいまで伸びる髪をしており、背は小さめで、服装はここら周辺では見ないような不思議な服装をしていた。

 手を伸ばせば頭を撫でることが出来るところまで近づくと、少女はクライシスの顔を見上げてにっこりと微笑んできた。

「君、名前は?家はどこだい?」

 試しに声をかけてみるが笑顔で見上げてくるだけで、何も答えない。質問を変えたり、しゃべり方を変えたりいろいろ試してみてもやっぱり何も答えない。

「(…なんだ?もしかして、捨てられた子か?)」

 クライシスは面倒なことになったと嘆きながらもこの子一人置いて行くわけにも行かず、でも、宿舎に連れて行くわけにもいかない。

 クライシスも行く宛がないところをさ迷っているところにバーンに拾われたから尚更ほっとけないのだろう。

「はぁ、仕方ない。ついてこい」

 溜息を付きつつも少女の手をそっと取り、ゆっくりと元来た道を戻っていった。



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