第8話 言い訳
地下室発見! 扉開かない! よしデストロ祭りだ! 武器屋へGO!
ヒャッハー! (*∀*)お宝発見!!
大剣に名前つけてスライムがプルプル! ← 今ココ!
過去の俺の歴史を見ているうちに予想が確信へと傾きつつあるのを感じた。
順番が逆。つまり過去へ行き歴史を変えるのではなく、まずはどうにかして体を取り戻しその後過去へ行く。もしくは過去へ行き当時のファルシナを諭す。
隆一は考える。前者は体を取り戻して万全の状態で過去へと赴きファルシナの考えとは別に歴史改変に介入する。これは、目指していた創造主の興味を保ち続ける行為が長きに渡る戦争だったという可能性だ。
可能性の一つに過ぎないが、もう一柱の神工神が創造主の目をひくために意図的に戦争を長期化させているかもしれないのだ。神工神が相手だとすれば過去に戻ったばかりで力を失った状態のファルシナは役に立たない。故に武御雷と共同で弄ったと言う俺の体が必要になる。なんでもチート級な力を持つ体が手に入れば時渡りが単身で行えるというのだから。
もっとも数ある歴史分岐のうち、創造主が興味を持ち続ける世界という目標を達成した瞬間に、未来から来たファルシナの力が戻るはずだ。
後者は戦争をどっちかの勝利で終わらせるのではなく現在のファルシナを説得して人間側の勝利ではなく種族皆平等の世の中を作り上げ創造主が飽きずに眺めていられるような世界を目指す。
この考えは現代の知識を少しでも持っている俺が中心となって世の中を変えていく覚悟で挑まねばならず、戦争真っ只中でそれを行うというのはどこの種族からも恐らく気狂いの類と判断されるのが濃厚だろう。
しかし、これが成功して創造主の力がファルシナに流れ込むのなら、一番被害が少なくて済むことは間違いない。
全てが終わってから俺の体を取り戻すためにこの時代に帰ってきて創造主が作ったという新たな神工神に俺の体の場所を吐かせれば…
そこで隆一はタイムパラドックスに気づいた。
「そうか! 創造主がもう1つの世界を作った理由がようやくわかった!」
過去に戻って創造主の興味を持ち続けたなら新しい世界を作る必要なんてないしそもそも新しい世界の神工神が生まれるはずもない。
ならそこでファルシナの力と俺の体は元に戻るはず。
タイムトラベルものの小説はいくつか読んだし映画だって見た事もある。
過去によって未来を変えたとき、そこから別の未来が線引きされる。俗にいう平行世界とか呼ばれるものだ。
その説が本当かどうかは目の前の大剣『草薙』と俺自身の筆跡があるノートが実証してくれている。
正しくこの時間を行き来していると仮定するなら、過去へ行こうといずれ必ずこの時代この場所へ帰って来れるはずだ。
衣服と知識と武器と、個人的にRPGで必要な知識は詰め込んだ状態と言える。
正直な話、草薙の言葉とファルシナの言葉、どちらを信じればいいのかと問われた時、俺はどちらを選ぶこともできないだろう。
それは双方のうちどちらかに依存するのではなく、どちらも信用できないわけでもない。もしも過去へ行く選択肢になったとき、草薙の言葉に重きを置く事は否めないし、ファルシナがどうしても歴史の上で必要だということがあれば可能な限り従うだろう。
でもそれでは過去の繰り返しになるのだ。
故に俺は二人の言葉は参考程度にとどめておいて常に新しい未来を探すだろう。
俺の体を探すために新しい世界に向かうことになったらそれこそ二人の言葉に重みなど感じない。俺は俺の望むままに体を探し世界に介入するだろう。
なんだかんだ言っても俺は我が身可愛さに奔走するのだ。
過去でも今でも未来でも、俺は俺のために動く。
ローブを羽織り直し、ブーツと手袋を着用し、もともと履いていた靴は収納袋に入れる。大剣と大金槌のうち金槌を収納袋へ、大剣をローブの背に垂れていた紐で上手い具合に吊るす。最後に手に持っていたノートを収納袋に入れて準備は完了だ。
そこでふと部屋の中央で未だプルプルしているスライムを見つめる。
健気なまでに空気清浄機な感じにプルプルしているがこのままここに置いていってはなんだか可哀想になってくる。
べっ別にペットにしたいわけじゃないんだからね! とツンデレしてみるが誰もいない部屋でツッコミもないとバカみたいだ。
「大丈夫かマスター頭?」
草薙が可哀想なモノを見た声で心配してくれる。ほっといてほしいわ。
「あー。スライム。スライム?でいいのかな? 俺とくるか?」
さりげなく手を差し伸べるとスライムはこちらの言葉を理解しているのか体の一部を細く伸ばして差し伸べた手に触れてくる。
それを見て了承ととり、よろしくと伸ばされた触手を軽く掴んで握手とする。
そしてそのままスライムと共にファルシナの待つであろう教会へと向かうのであった。
多分、ファルシナはこの世界軸に一人だけ。つまり何度も同じセリフを同じ顔で俺に言ってきたはず。きっと今までの俺は装備を整えてファルシナの言葉通りに過去へと飛んで創造主の興味を尽きさせないように奮闘してきたのだろう。
その度にファルシナは共に過去へと戻り、力を無くしたまま、再び未来の俺がここに飛んでくるであろう時まで精神体とやらで世界を見続けを繰り返して今まで過ごしてきたのだと考える。精神体になるのが過去に戻った時創造主から流れ込んでくる力を蓄えるためだとすれば、全盛期の力とはどれほどのものなのだろうか?
真実は知らないが様々な憶測が脳裏に浮かぶ。
「真実はファルシナしか知らない。それを確かめるんだ」
教会にて
「創造主が飽きられたのは間違いない」
「きっともう一柱の神工神が黒幕です」
ファルシナはかたくなに過去へと固執している。色々な憶測を交えてファルシナに進言してみたが、ファルシナの結論としては過去に行き創造主が興味を持つ世界を作り続けること。
これ一点である。
糠に釘、今回は暖簾に腕押しといったところか。
こちらの考えを全く考えてくれない。
もしも考えたのなら過去へ行くのを少しはためらうはずである。
それにもう一柱の神工神の話を聞こうとすると強引にはぐらかされる。
「貴方は私の要望通りに過去へと赴き創造主の望む理想の世界を目指してくれれば良いのです」
段々と本音と建前が入り乱れてきたぞ。
「武御雷様との相神契約を結んだからにはその契約を履行してもらわねば困ります」
そもそも相神契約ってなにさ?
「訳がわからない状態で過去へ向かったところで同じ過ちの繰り返しに決まっているだろ。ここは発想を転換してもっと細かい情報を入手するのが先決だってわかってるだろ!」
隆一の言葉に対してファルシナは首を振りながらなおも反論を続ける。
「創造主が新しい世界を作り上げたのに私はこの世界を任されたまま新しい世界へと連れて行ってはもらえませんでした。あんなに創造主が興味を持ち続けるように多種多様な生命で大地を満たし、常に寵愛をいただけるように世界を操り、龍族がいなくなってからでした。創造主の目線が外へと向き始めたのは」
なんか自白始めた!?
「たしかに興味を持ち続けるようにと戦ごとに世界に調整をかけ、どちらも拮抗状態を維持するように駒を配置し、硬直状態を長きに渡り続けさせました。
時折両軍に強者を産み出し白熱した戦いをさせて創造主を楽しませもしました」
きっとその強者が龍族を根絶やしにしたに違いない。
「あまりに強すぎた者が暴走しないようにストッパーとして戦を司る神工神にお願いしてこの世から別の世界へと転生先を移してもらっていたのに…」
ああ、なんとなく先が読めてきたぞっと。
「それが理由で創造主が強き者の為に新しき世界にその神工神を連れて世界を離れていってしまうなんて」
もう俺の考えがめちゃくちゃだよ。
今までの俺の推論はほぼ的外れ。ここまで真剣に考えて創造主とファルシナと、過去と未来と男と女…じゃないな。まぁ色々と可能性を考えて少ないピースを繋ぎ合わせたのに、返せ俺の体!
「ようは自分が調子に乗って歴史弄ったら神様が弄った対象に興味持って視線が逸れてったってことじゃん! そんなん創造主がその対象に興味持ち続けてたらどんなに小さな分岐変えても同じ時間軸創造主が共有してたら本末転倒じゃないか!」
創造主の興味の対象が世界から一個人に代わったということは世界を支えることができる力が一個人として集中しているってことだろ!
もしかして
「ファルシナ…正直に答えろ。お前、俺の体の在り処知ってるな?」
その時言い訳めいた顔をしていたファルシナの肩が動いたのを俺は見逃さなかった。
さて色々と考えが巡り巡ってそして空回って、読んでくださった方にはここで逆にこれか! と思われた方がいると思います。
でもタイトルに沿ったストーリーになる予定ですので今後共ご贔屓にお願いします。
誤字脱字等気づいた方がいればお気軽に連絡をお願いします。
もちろん気づいたら直します。