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第3話 ここから始まる真の本編

村発見! ヤッター\(^o^)/ からの廃村_| ̄|○


気を取り直して現在地確認の為地図探し開始!


自称女神のガーゴイル、略してメガゴイルとエンカウント!(今ここ!)


 王道中の王道である「世界を救って」コールが聞こえたが、それよりも前にこのメガゴイルは不穏なことを口走りやがりました。

 

「『この終わったあとの世界』?」


 小さくつぶやいたつもりだが、相手は軽く頷くとその意味を教えてくれた。


「正確には生物の息絶えた後の世界。その世界軸の上に立つ世界です」


 理解が追いつかない。


「ええっと。つまりあなたの言う世界は人間がいない世界なの?」


 隆一の絞り出すような言葉に女神は静かに首を振る。


「人間ではなく生物。この世界には人間はおろか動物、魔獣、悪魔、龍族、妖精に微生物etcに至るまで草木以外の全ての生命体が存在しません」


 狂ってる。この世界に来て誰にも何にも出会わないのはおかしいとは思っていた。街が棄てられていたのではなく『人』が『存在しない』から滅びたのか。


「あんたは誰なんだ…?」


 おそらくだがこの世界の神の一柱だろう。この教会で祀られていた女神かもしれない。


 女神の口から出た言葉は隆一の考えていた厨二病な設定をあざ笑うかな内容だった。


「私の名はファルシナ。この世界の創造主によって生み出された神工神じんこうしんで箱庭の世界の調整者」


 ファルシナと名乗った女神は、言葉を繋ぐ。


「私の役割はこの世界を存続させること。つまりはこの箱庭の繁栄の継続。そして創造主への娯楽の提供」


 こちらの理解なんぞ最初から考慮していないのだろう。都合一切おかまいなく先へと言葉を続けていく。


「この世界を終わった後と言ったのは、創造主が既にこの世界に飽きて別の世界を創り、その世界で遊び始めたことに由来する。つまり終わるとは創造主に捨てられる。創造主に捨てられるとはその生命体すべての死に直結する。それは貴方の世界で言うところの『電池の切れた玩具』と同じ抗えない宿命。

 私たちは創造主から力を分け与えられた特別な存在。故に創造主には遠く及ばなくとも貴方一人を貴方の住んでいた場所の神に頼んでこちらの世界へ渡らせることは可能」


 そこで彼女はこちらを見据えて首をかしげる。


「おそらく貴方が最も知りたがっているその肉体のことですが、おそらくは第三者による妨害と推測されます」


 その瞬間、隆一は無意識にファルシナに掴みかかろうと前へと詰めかけた。

 

 意味のわからない状態でこの世界に呼び出されたと思ったら横槍が入って肉体失ったなんて笑い話にもならない。

 

 後一歩の位置で隆一は歩みと感情を押し止める


 眼前にあるファルシナのその顔は、わずかだが泣きそうな表情だった。


「原因は?」


 隆一は努めて平静を保った声色で訪ねたつもりだったが、彼の体は小刻みに震えている。

 

 恐怖とも憤りともつかないおかしな感情としか言えないものが彼の胸中に渦巻いている。誰にぶつければいいのかわからない。


「創造主の新たに創り出した眷属が、貴方の召喚の邪魔をしたとしか考えられません。世界渡りはあなた側の神の力も借りているのです。万に一つも肉体を失くすなんてありえませんし、新たな眷属にとって、創造主様の力の一端を濃く受けた存在でいる私は目の上のコブのような存在に思えるのでしょう」


 元凶はその世界渡りとやらを邪魔した存在らしい。あくまでファルシナの話を信じるならばだが、こちらに切れる札が無い以上はとりあえず信じておくしかない。


「俺の本来の肉体はもう存在しないのか?」


 無論ダメ元だ。こんな状態でも苦節13年間過ごしてきた大切な体だ。あるなら取り戻したい。


「肉体の消滅はおそらくはないでしょう。しかしどこにあるかは残念ながら…」


 ファルシナのその言葉に嘘はないと直感する。肉体があるならまだ希望はある。


「ファルシナ。『世界を救って』あんたは俺にそう言った」


 確認を取るようにファルシナに問いかけると、女神は小さく頷いた。


「この世界が再び生命に満ち溢れ、創造主の目に留まることができれば恐らくまたこの世界は繁栄を、創造主へ娯楽を提供することができる。創造主の寵愛を受けることができれば今よりも力を取り戻すことができる。そうすればきっと貴方の肉体を探すことができるでしょう」


 ファルシナは噛み締めるように最後の言葉を紡いだ。


「しかし私の力はあくまでも調整の力、それも衰えて幾許の力ももはや振るえないでしょう。繁栄と生命を司っていた創造主ともう一人の神工神の力がない以上、全盛期の力を行使するためにどうしても時を渡る必要が出てきます。それは私たち神工神の力を過剰に超えるものであり、今の私が使えばおそらく精神体としての姿で数千年の時を生きることになるでしょう。本来なら貴方をこの世界に招いた時に貴方自身の肉体に特別な処置をあらかじめ施し、時渡りの術を単体で行えるように貴方側の世界の神と打ち合わせを行い事に臨む予定でしたが、その邪魔のせいでもはやこの時代の私という存在すべてを使わなくてはなりません」


 俺の世界の神が誰なのかはすごい気になるところだが、俺の体に色々と細工をしたということは、もしも肉体が手に入ったらそれこそ俺ってチートプレイヤーじゃね?

 

 自身が既に幽体というある意味チートな状態であることを棚に上げ頭の片隅で打算的な考えを張り巡らす。


「とりあえず色々聞きたいが何故俺がこの世界に呼ばれたのか説明できるか?」


 隆一がこの世界に来てすぐに考えたことだった。

 

 なぜ? 普通の人間である俺が選ばれたのか?


 ファルシナは隆一の言葉に小さく息をつき、隆一の目を見据えた。


「おそらく貴方自身は覚えてはいないでしょう。小学校の頃、貴方は一人近くの橋の下で野良猫を飼っていましたね?」


 突然言われた古い記憶。たしかに小学校の頃、給食の残りを隠して猫に与えていた時期がある。


「それがどうしてこれに繋がる? そんな優しさが基準なら世界中が異世界救える勇者だぜ」


 隆一の言葉にファルシナは静かに首を振る。眉尻を下げ、悲しそうな顔でこちらを見つめつつ言葉の続きを口にする。


「貴方はある大雨の日、強風で飛ばされそうな子猫の入った箱を守ろうと、長い間雨に打たれ次の日生死の境を彷徨う様な高熱を引き起こしました。

 本来貴方の住んでいた世界の理では自然災害における死は生物にとって輪廻の外側の出来事にあたります。輪廻とは生物が死ぬと生まれ変わるまでの間、罪の重さによって彷徨わなければならない時間のことです。

 天命をまっとうできない人、不慮の事故や故意による殺傷等は死んだ人間にとっては輪廻の外に区分されます。故に貴方は自然災害による偶発的な病気という位置づけで貴方を輪廻の外側にある死と定義し、例外的に転生を行う措置を決めたそうです。

 その時、病院の貴方の状態は、すでに手遅れといっても差し支えなく、おそらくはすぐに転生の措置に入ることになるだろうという状態だったそうです。

 しかし、貴方はいざ転生の儀式が始まる瞬間に奇跡的に息を吹き返し、今日まで生きてきた。」


 隆一を見つめファルシナは最後の言葉を口にした。

 

「本来なら死んでいた少年。それが貴方であり、輪廻の転生候補地が今から数千年ほど昔の時間軸に位置づけられていたこの世界だったのです。その折、貴方の世界の神と知り合いになることができ、今回のように救いが欲しい時は貴方という存在を貸与えてくれるという相神契約あいじんけいやくを結んでいました。貴方の預かり知らぬこととはいえ巻き込んだ形になってしまい申し訳なく思っています。貴方の国の神『武御雷』様もこの話を聞いて早速犯人調査に乗り出しているようです。とりあえず今日はこの協会の空き部屋に泊まり、明日詳しい時渡りの方法を伝えたいと思います」


 隆一はさりげなく出てきた『武御雷』という名に驚きと神同士の繋がりを知って開いた口が塞がらなかった。


 色々と知りたいことが出来たがとりあえず今日はもう寝て頭を整理したい。


 ファルシナの言葉に従い覚束無い足取りながら近くの屋根のある部屋へと入って壊れかけのドアを閉める。

 


 反動でドアノブが取れたが気にせず部屋を見渡す。


 どうやら司祭の使う部屋のようで、ボロいのは相変わらずだが天井もあるし調度品も原型を保っているのがほとんどだ。唯一寝る場所がないくらいだが今更埃や汚れ程度で気にする身でもない。


 さっそく壁際で横になる。

 

 色々なことがありすぎて興奮して眠れないかと思いきや、意識は泥のように睡魔に絡まり数分経たずに静かな寝息が聞こえてくるのだった。  


 隣の部屋から静かな寝息が聞こえてきたのを確認し、ファルシナは静かに息をつく。


「この身を立てても浮かぶ瀬のないこの世界。創造主はどこまで彼の少年に試練を、そして世界に混沌を与えれば目を向けてくださるのでしょうか」


 ファルシナの言葉は虚空へと消える。誰も聞く人のいない、彼が今後向かうであろう時代と歴史、出会うであろう英雄たちとの会合に、彼女は過去を知る者としてため息をつく。


「今度こそ彼を導かねば。例え主を、創造主の思惑に反旗を翻そうとも…」


 次第に暗くなる室内。夜が来る時間になると女神もまた静かに石像からその身を剥がし、礼拝堂には静かに鎮座した女神像がその身を月光に照らし、神聖な雰囲気を醸し出すのだった。



ようやく異世界トリップのスタート地点に立てた隆一。


誤字脱字は気付き次第訂正していきます


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