第2話 教会と女神とガーゴイル
前回までのあらすじ
異世界トリップ ⇒ 身体がない((((;゜Д゜))))
幽体なのに[壁|(・д・`。 )))。。。通れない… ⇒ (((゜Д゜;)))マジで!?
村発見! ヤッター\(^o^)/ からの廃村_| ̄|○
気を取り直して現在地確認の為地図探し開始!(今ココ)
大きな建物といったアバウトな条件だけで村を進むにつれて、次第にここは想像していた規模よりも大分大きな村、いやこの規模だと街と言ったほうがいいのかもしれない規模の大きさだということがわかった。
外周は高い塀と堀で仕切られ、入口は入ってきた跳ね橋しかなかった。そもそも反対側を調べようにも途中で堀の口が広がり池と化していて、外周半分までしか行けなかった為に確認できず、あまりにも何もないので村だと考えていたのだ。
言い訳じみているが、街の上下左右が堀と川の終端に当たる巨大な池に囲まれているため、全体像が把握しにくいのもあった。よくある地形を利用した城塞(城は見えないが)のような造りだと考えていいだろう。
「別に困るわけじゃないけど街全体が段々と下に向かって降りてきているような?」
隆一のつぶやきの通り、緩やかだが街の中へ進むにつれ道が降ってきている。
「地盤沈下でも起こったのかな? 液状化現象とか。周り池だし地盤ゆるくなっててもおかしくないし」
緩やかに下ることしばらく、目の前にあるのはどうやら探していた巨大建造物みたいだ。
おそらくは教会だったのだろう。十字架こそついていないが、一種の神秘さを醸し出す女神像と思しき銅像の残骸が門番替わりに左右に一体ずつ配置されている。
片方は翼が付いていたのだろうか? 背中に何かが生えていたようで途中まで残っている。
もう片方は顔が削り取られたかのように欠けていて、全体像から女神像としか判断できない。
ずいぶん古いものに見えるが他の街の建造物に比べ、特別な処置がしてあったのだろう。幾分か綺麗に見える。
建物の形や使われている建築素材に鉄骨やガラス窓がないことから、この間まで世界史の授業で習っていた中世、それも西洋や東欧の文化に近いのかもしれない。
昔は教会よりも高い建造物は建ててはいけないと戒律が決まってらしいし。そういった宗教的事情もこの街の造りにはあるんだろうか?
「いつまでも女神像を見つめてても動き出すわけでもないし、これだけの大きさの協会ならなにかこの場所の手がかりがあるかもしれない」
なにごとも拙速が大事だ。と自分に言い聞かせ先程まで道端で行き倒れのフリして時間を無駄にしていたことを思い出す。
しかしそこは若さで水に流すことにした。
「とにかく中を調べてみて、大丈夫ならしばらくの間ここを中心に街を探索しよう」
崩れた女神像の間を通り、教会の内部へと入っていく。
「とりあえずはでかい豪華な部屋と屋根のある部屋だな」
大きな扉を開けると、信者達が祈りを捧げていたであろう礼拝堂が、ヒビ割れたステンドグラスから注ぐ陽光に、どこか神聖さを思わせる厳かな雰囲気を出しながら隆一の眼前に展開される。
しかし、見る人が見れば神々しさを醸し出している光景も、隆一にとっては一背景に過ぎないものだ。
ゆえに、彼はその光景に目も向けず、左右を見渡して部屋を探し始める。
中学に上がったといえど、根はまだ二次成長期を迎えつつある少年に過ぎない。
こういった建物の探索、子供だてらに言えば探検、冒険の類は心にグッとくるものがある。
隆一は正面を一度も注視しないまま、とりあえず左の法則に従い、左手側から時計回りに探検を始める。
「あのー、ちょっといいですか?」
彼の探検を妨害しようとしたのはこの世界に来て初めて聞いた他人の声で、しかも女性の声であった。
隆一は、動きを止めて静かに声のした方を向いた。
「えっ? だれも、いない?」
改めて見た礼拝堂の中には、中央にシャンデリアがかろうじてぶら下がっており、祈りを捧げるであろう祭壇の後ろには女神像が首をこちらに向けて微笑んでいるだけだった。
「ここです。ようやく会えましたね?」
女神像が微笑みを絶やさないまま口を動かしてこちらを、像のはずなのに目線までこちらに向けて話しかけてきた。
何度も言うようだが彼、龍ケ崎隆人は名前こそ厳ついと思われがちだが中学一年生である。
異世界トリップの生経験を経てこの世界の不思議を絶賛噛み締めている最中である。
そんな彼にも、常識はあるのだ。
「ガ! ガ! ガ! ガーゴイルだ!」
異世界ファンタジーにおいてのお約束、出逢ったら初見殺しとも言われる。初心者勇者の天敵、斬撃よりも打撃に弱いあのガーゴイルさんだ!
隆一の叫びに対し、「違います」と冷静に返答する女神ガーゴイル。
石像のくせに意外と軽快な動きで祭壇に腰掛け、両手を膝の上で組みながらこちらを笑を濃くして見据えてくる。
「まずはこの終わった後の世界へようこそ。そしてこの世界を救ってください」
女神ガーゴイル、略してメガゴイルを見ながら、隆一は、身体がないのに何故か走る神経を撫でるかのような背筋の悪寒を感じながら、言葉の意味を静かに反芻するのだった。
異世界の女神は意外と抜けてるのが多いと思います。
誤字脱字は気付き次第逐次修正していきます。