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第1話 肉体の無い異世界トリップ

皆さんはじめまして!

初投稿です。

タグの通り色々と出す予定ですので気長に待ってくださるとありがたいです。

主人公である龍ケ崎 隆一の頑張りに期待しててください。

 もういい加減にして欲しい…。


 目を開けた時、自分の見知らぬ天井をもう何度見たことか。


「いい加減に覚めてくれよ…」


 龍ケ(りゅうがさき) 隆一(りゅういち)と呼ばれる。今年でようやく16歳を迎える青年と呼ぶに片足を少し踏み入れたばかりの男は、古ぼけた天井を見つめながら気だるけに現実を噛み締める。

 

 彼がこの世界に渡って来たのは今からおよそ3年前、当時中学1年生の時だった。

 

 つまり今から懐古するのはその時の記憶である。


 俗に言う『異世界トリップ』なるモノに遭遇するのはラノベやゲームにハマっている者、これから流行するであろう『厨二病』なる精神病患者達が我先に遭遇するものとばかり思っていた。


 無論、隆一とてアニメを見ないわけではないし、ライトノベルや漫画、ゲームなども流行に沿ってそこそこに嗜んではいる。


 しかし決して『ヲタク』と呼ばれるほどではない。


 運動だって普通にするし、友達付き合いだってそっち系よりも運動部の連中とつるむ方が圧倒的に多かった。


 そもそも今まで読んできた中で最も多かった異世界トリップものの王道である『チート』な能力どころか魔法が使える肉体とか以前にだ!


 以前にだ! 大事だから2度言った。


「どう考えても肉体が無いって最悪だろう!」


 異世界に来てから3年幾度となく呟き、叫び、憤怒した。 


 目を閉じれば思い出す。

 

 よくある最弱から始まる英雄譚とか、実は秘められた力が『ゴゴゴゴゴッ!』とか、この世界に飛ばされた直後の数日間は、周囲が森で囲われ、野生の獣や山賊の類に出くわす可能性を恐れ、現状の把握に務めるため即座に木々の間に身を隠し、自分の状態を確認するのに試行錯誤を繰り返し、自分の体が半ば透けている事実に愕然としつつも「ドド○波」とか「オラオラ!」とか言いながら指や手のひらからビーム出したり幽波○出す練習したり(後に幽波○って今の自分の状態じゃね? と気づいて恥ずかしかった)と色々な修行?をして過ごした。


 結果、何故か幽体なのに物を掴んだり蹴っ飛ばしたりといった物理的な行動が普通にできることが判明(隠れるのに落ち葉や枝で簡易な隠れ家を構築できたことに後々気づいた。それまで木の上で体を固定して寝た)。なぜかその間空腹を感じることもなく数日経ち、結局飲まず食わずでも死なない体をどうにかして、あわよくばこの状態から元の世界に帰れる、もしくは生身の肉体を手に入れられないかといいった淡い希望と、誰一人いない孤独から寂しすぎていっそ殺してと思う不安と絶望を背に、人がいそうな新天地を求めてフワフワ(幽体なんで、しかし2足歩行)と、風の赴くままに旅を始めた。


 それからぶっ飛びまして1ヶ月後、高い丘の上から木に登り、遠目に見ても半日くらいの距離に人が住んでいそうな大きな村らしき場所を発見できた。


 えっ? 1ヶ月間の内容? あるわけないじゃん。人っ子一人、ケモ耳一匹いない上に自分の身長より高く飛べない、空中を歩けない、幽体なのに木にはぶつかる。つまりは生身の人間と大差ない機動性、運動性能、それなのに疲れないわで発狂寸前状態、本気で風に漂うがごとく人がいたらいいなぁくらいの気持ちだけでここまで来たのだ。


 よく気が触れなかったものだ。


 しかも道中誰とも出会うことはなかったものの、この姿で会話ができるのかもわからない(他者がこの姿を視認できるかはまだ不明)。


 言葉もわからないかもしれないし(こちらも他者が以下同文)。


 もしかしたら某エクソシストみたいな神の使徒とかに殲滅されるのではと怖気づいてブルブルしたりと百面相しながら村へ近づくにつれて次第に不安になっていく。だってまだ中学生だもん。


「よし、誰か村から出てきたら茂みで倒れたフリして助けてもらおう。記憶喪失と体は呪いで透けているとか言えばきっと大丈夫なはずだ。言語だって異世界ボーナス的に通じるに決まっているさ。だって異世界だし…」


 御都合異世界論を展開して自分を鼓舞しつつ近くの茂みに隠れていつでも行き倒れたふりできる体制でスタンばること3日。


『通行者0名』


「あるえぇ!?」


 村の周囲を確認し、入口が一箇所しかないことを確認した上で死んだふりしたはずだ。

 

 1日過ぎたあたりで違和感は感じていたが、根比べするべき時だと自分を戒めひたすら土と草の匂いを嗅ぐこと3日。


 もう一度言おう


『通行者0名』


「もう村の中に素直に入らせてもらえるか交渉しよう」


 仮に言葉とか通じなくても某幻想殺しや他作品主人公も「ボディランゲージは万国共通」と言っていたはずだ。


 こういう所を変に覚えたり考えたりするあたりがヲタクっぽいのだろうか。


 傍から見れば気が長いとか立派なヲタクですがなにか?とか言われそうなものだが、隆一はそろそろ苔とかキノコとか生えてもおかしくないのではないかと思う状態から身を起こし(よく見れば寝ていた場所は人型に草が枯れて地肌が見えている)、幽体であるにもかかわらず何故か肩や腰を鳴らしながら外と村を繋ぐ跳ね橋へと歩き出し、入口と思われる巨大な跳ね橋の前まで来て、ふと周囲に視線を投げる。


 子供の身長からでも目の前の跳ね橋は『村』の入口と呼ぶには少し大きく、また古過ぎる気がしてならない。跳ね橋を支える太い金属の鎖は錆びてボロボロ、跳ね橋の板は苔むしてところどころ草が生えている。


 威厳ある跳ね橋に見えるが、それらの要因が景観を著しく損ねていると言わざるを得ない。

 

 既に使われていない跳ね橋なのだろうか?

 

 だとしたら3日も行き倒れしてたのも納得できる。


 思えばこの1ヶ月、行き倒れ期間も含めて散々だった。

 

 せっかく体透けてる幽体なのに空飛べないし、幽体なのに物体すり抜けられないし。

 

 とにかくひたすら人がいそうな方向へあてもなく揺蕩う日々。


「それも今日で終わる。無意味に粘った3日間も今思えば決して無駄じゃなかったと思いたい」

 

 題して『行き倒れたフリして上手いこと村に入っちゃえ!』大作戦も決して無駄じゃないんだ。


 なぜならここにたどり着くまでのヒマな時間、そして行き倒れていた時間、俺は飛ばされてきた状況を必死に思い出そうとしていた。別に考えることがないからではない。

 

 飛ばされる直前の記憶はどうやっても思い出せないが、異世界トリップ初体験のテンションも相まり、当初この体に対しての疑問よりも『なぜ自分が?』という思いが強かった。


 正直に言えば驚きや恐怖よりも歓喜に近い感情が心中にあったことは否定しない。

 

 世間一般で言うところの『平凡』というカテゴリに分類されるであろう自身の存在を、どこか客観的に見ている節があったことも否定しない。


 しかし、それでも、『自分がここにいるのは理解できない』という意識はある。


 中学も一年生半ば、股間にまさに毛が生え始めたヒヨっ子な人生初心者。


 思考こそ大人ぶっているが所詮は見栄で、他者よりも偉く見られたいし少しでも自信がつくように口調を『僕』から『俺』へ変えるなど、可愛らしい背伸びだってしている。


 クラスに一人はいる皆を引っ張っていくリーダーシップがあるわけでもない。好きになった子だって学年男子で人気NO.1の女子だ。


その女子はすでに別のクラスと付き合っていたらしいが(泣) 


 思い出したら崩れ落ちそうな自身の足に力を入れ、同じく崩れ落ちそうな跳ね橋を慎重に渡りながら、隆一は自身の内に這い上がってくる違和感と不安を雑念と割り切って振り払う。


 跳ね橋を渡り始めてすぐ、幽体なのでイケルんじゃないかと穴の上を通過しようと踏み出したら腰まで落ちた。以降それはもう慎重に慎重を重ねている。

 

 幽体なのに! 幽体なのに!!


 物理法則とか内容はよく知らないがそういうのを無視してると思う。


 よくRPGとかだとこういう所には門番? 衛兵? が立ってて通行証とか要求されたり


「ここは始まりの街だよ」とか「武器は装備しないと使えないよ」とかいうものだと思っていた。


 しかし跳ね橋を渡る前からなんとなく気づいてはいたが、やはり渡り終えても人が出てくる気配はない。


 跳ね橋が降りているから中には入れるのだろう。しかしこういった予感は得てして当たるものだ。


「廃村だ…」


 正確には村であっただろう所だ。


 一目見てそうとわかるのは、隆一の祖父母が住んでいた村が過疎化が進み廃村となったからだ。


 中学生でも言葉の意味ぐらいは知っている。都会やその周辺への若者達の流出による後継者の減少やそれに伴う世帯数の低下などによる山村部の人口減少。

 

 住む人のいなくなった家屋は傷みによる劣化が早い。


 祖父母の家も3、4年くらい後に様子を見に行ったら半分位が野生に帰っている状態だった。

 

 彼の見た村の家屋もまた、原型こそ保ってはいるが壁に穴が空き、屋根の一部が壊れたり、扉が無く風通しの良くなった状態が多く見られた。


「そりゃ行き倒れしてても誰も来ないわけだ」


 大きくため息をつきその場に崩れ落ちる。


 普通ならばここらで大泣きしたいいところだが、なぜか感情に制御がかかり涙が出ない。

 

 幽体だからか? とは思わない。少なくとも人がいたと思われる証拠がここまで来たのだ。ここでなにか地図でも見つければ、これからの行動予定も変わるというものだ。


 仮にゲームなら選択肢で行き先選択出ることだろう。

 

1. 一番大きな建物

   

2. 村の中央広場へ

   

3. 雨風凌げる頑丈そうな建物へ


 頭に浮かんだ選択肢で一番有力なのはやはり一番大きな建物だろう。

 巨大建造物なら大抵は領主とか村長の屋敷だろうし、廃村になっていてもなにか見つかる可能性は高いだろう。


 もしもなかったら家をしらみつぶしに探せばいいだけの話だ。


 目に見える範囲に巨大と言える建造物は存在しないので周囲を注意深く警戒しながら村の内部へと入っていった。





色々誤字脱字や文章が読みづらいなどありましたら教えていただけるとありがたいです。

更新は不定期ですが合間合間にアップしていけたらと思います。

最後まで読んで下さりありがとうございました。

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