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暗がりの少年 3

今回の任務は、『邸』にとっては失敗できない部類に属するのだろう。

僕がいる『邸』のメンバーはざっと200名、通常一つの任務に2~3人しか派遣しないし、

多いときでさえ5人なのだから、今回のメンバー8人は異例の事態だといえるだろう。

さらに他のチームが関わってくるのだから、気を引き締めて取り掛からないといけない。


 それにしても奇妙なのは機械人相手の任務は『邸』では被害が多くなるので、

ここの『邸』では極力関わらないようにしているのに、今回の任務は本腰を入れているように思える。

資料に載っている相手の機械人は確認されているだけで4体。

そして機械人を操作している筈の技術者がいるはずで、その相手の人数がわからないと言う事。


 機械人を使って護送する物なんて、最近ではめったに無い。

生物と違って機械人はおよそ守るという性質には程遠いからだ。

それに破壊の為に作られた機械人は活動の為のエネルギーが莫大にかかるから、

戦地に向けて機械人を護送するならまだしも、

機械人をつかって護送するなんてそうとうな物に違いない。

(考えても仕方が無い…か)


憂鬱なのはレイナードと組むことになったことだ。

以前レイナードとミーシャと組まされたとき、何故だかはわからないけれど任務に行くまでの間

レイナードは怒りの矛先を僕に向けた。

「表では動けない蝙蝠がいるせいで、

 せっかく街での任務だってのに夜間作業のおかげでショッピングができなくなったじゃないか!」


そうして任務の間中も…

「蝙蝠野郎が側にいるせいで気が散って集中できないじゃないか!」


レイナードの目付け役のミーシャが止めるでもなくクスクス笑っていたのを思い出す。

肌が合わない相手なのかもしれないが、あそこまで言わなくてもいいと思う。

 思い出してもうんざりする。

それにしてもなんで嫌なことは忘れることができないんだろう。

嫌なことを思い出すとすぐ気分が悪くなることはできるのに、嬉しかったことを思い出しても

気分はよくならないなんてナンセンスだ。


=========================================


「ティー、今日の収穫は?」

僕が憂鬱な気分になりかけているときに背中から誰かに声をかけられた。

 振り向くと体中から淡い光を発している者が立っていた… ブレンだ。


 華奢な体つきに、病的なまでの白い肌。衣服から出ている肌がぼんやりと発光している。

僕と同じ裏業使いだが技を使いすぎた為にこんな姿になってしまったらしい。

「さっぱりだったよ」


ブレンは僕と比較的、仲がいい部類に入る。

僕が始めて邸に来た時からブレンは裏業使いとして働いていたので、まだ新米の時には色々と教わったものだ。

発光が始まった事に気づいたのは、つい最近のことだ。

ブレンが前の任務から帰ってきたときには光るようになっていた。


「そうか… それでしばらくは邸にいられるのかい?

 それともまたすぐに任務に出るのかい?」

 

 僕は頭を垂れるジェスチャーで答えを返す。

そんな僕の姿を見てブレンが残念そうな表情をみせる。

 ブレンは僕にバイバイと手を振ると、何事も無かったかのように、暗い所に潜っていった。

 もしかしたらブレンの時間は、もうあまり無いのかもしれない。

今まで邸にいた裏業使いは表で生きていくことができなくなると、『邸』から出て行くことがなくなるらしい。

そうして気が付いた時には『邸』からも居なくなってしまうらしい。

 

 それが死んでしまうことなのか?

 邸から出て行くことなのかは僕にはわからない。

 消えてしまった裏業使いのことは誰も知らない。

 

 一度、ブレンに消えてしまった裏業使いのことを聞いたが何も教えてはくれなかった。

 多分ブレンも詳しくは知らないんだろう。

 再度、ブレンの去っていった方向を見てみると…

 ブレンの姿が 闇の中の小さな消えそうな蝋燭が一本立っている様だった。

 


 僕も体が光り始めるのはそう遠くないかも知れない… 

 分別がついてから悲観的に考える癖がついたのか?

 元々の性格なんだろうか?

 

==========================================


部屋に入るなり疲れた体を休めるようにベッドの中に倒れこむ。


『邸』の中の僕の部屋に帰るとあるイメージが頭に浮かぶようになったのは何時からだろう?

 周りの何かいる大勢の中で、息が詰まりそうなのに疎外感を感じている僕の姿。


あまりにもリアルなイメージに時々通り過ぎる人に手を伸ばそうとしてみる

いつも触れようとする瞬間に手を引っ込める僕。

今日こそはと思い、手を伸ばすがやはり引っ込めてしまう僕がいる。

そうして表と裏のまどろみの中に僕は落ちてゆく。



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