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異世界紳士録  作者: ガー
2つの太陽
5/33

1-4

たしかにデスマーチ中の現場では、目を瞑っても残像のように残ってはいた。


だが今は畑仕事の最中など真昼間でもマウスカーソルが見えている


視線を動かせばついてくる矢印は、視線の先にある物により形を変えるらしい。


水たまりに視線を合わせるとカーソルは矢印の先に、十字矢印がついた移動可能予測のカーソルに変化した。


(まさかねぇ。)


クラスは冗談半分で、何もない机を右手の人差し指でトントンと叩いてみるダブルクリック


そして目を疑う。


水たまりは、選択されたことをしめす真っ青な色になっていたからだ。


恐る恐るもう一度机を叩く。水たまりはなにもなかったかのようにただの水たまりに戻った。


もう一度。


はたして水たまりは真っ青になった。


「チコちゃん」


「んー?」


「あの水たまりは何色に見える?」


「んーとねぇ水色ー」


「すごく青い?」


「ふつー」


(運動不足を解消したら、脳が筋肉になったとでもいうのか?)


カーソルはそのままに、机、自分の腿、鼻はては空中。人差し指でクリックしまくってみる。


水たまりはその度に色を変えた。


選択状態のままドラッグしてみる。


重さを感じることもなく、すんなりと水たまりがスライドする。


「チコちゃん」


クルクルと視界の中で動かしながら、クラスは聞いてみる。


「んー?」


「さっきの水たまりはどう見える?」


じっと見つめるチコちゃん。


「水色ー」


クラスはドラッグしたままの水たまりを離すドロップ


バシャッ!


突然宙に現れた水は、地面に落ちた。


チコにはなにが起きたかわからない。


「バシャッてなったー」


落ちた勢いで水まりは広がり、いくつかの小さな水たまりに分かれた。


クラスは小さな水たまりを、クリックし選択する。


深呼吸を3回ほど行う。


右手中指でクリックする。


頭を抱える。


視界の中で水たまりのとなりに現れたのは、『切り取り』と『コピー』の文字がならんだコンテキストメニューだった。




チコは、目まぐるしく変わる窓の外の風景に夢中になった。


最初はクラスからの呼びかけが面倒になり始めたころだった。


早くお絵かきの続きがしたいのに。


だがしつこいくらいに見ろ見ろという水たまりが、チコの目の前で変化してゆく。


クラスが頭を抱えたり、ニヤニヤするたびに


水たまりは増えたり無くなったり色が変わったり場所を変えたりする。


こんなに楽しい雨の日は初めてだった。


やがて水たまりだけでなく、庭の形も変わっていく。


音もなく、へこんだ土の道ができた。


庭にたまっている水が土の道を通り、畑のそばを流れている小川へ流れてゆく。


土の道ができてからは水たまりどころかすでに庭のあちこちに地面が見え始めている。


いつも大雨の後にできる池でする泥遊びが大好きだったチコは、


「お池ができないねぇ」


「池か、小さくてもいい?」


「うんー」


円形選択で楕円を作り土を切り取る。


グラデーションをかけてすり鉢状にしたへこみに、その周辺の目についた水たまりをドラッグドロップする。


出来あがった小さな池の周りを範囲選択し切り取り、花壇の近くに張りつける。


「これでいい?」


チコは、ニコニコ顔で首を何度も縦にふる。


クラスは落ち着いて、視界のカーソルで出来ることを1つ1つ確認していく。


コンテキストメニューにはショートカットもついている。


(もしかして……)


CtrlキーとCキーによるコピーやVキーによる貼り付け。


CtrlキーとZキーのやり直しやYキーによるやり直しのやり直し。


もちろん実際のキーボードはどこにもない。


だが、クラスの予想通り左手でのキーボード操作は効果を現した。

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