表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界紳士録  作者: ガー
2つの太陽
3/33

1-2

トム一家は俺を訝しがりながらも家へ上げてくれた。


木造の家は昔見た西部劇の開拓者の家を思いださせた。


トムさんは上の肌着も俺に着ろと渡してくれる。


「ありがとう」


「さぁ教えてくれ。お前さんが何者で畑で何をしてたのかをな?」


何者なのかは少しはわかる。何をしてたのかは頭をひねって考えてもわからない。

分からないことは考えてもしょうがない。正直に全部話すことにしよう。


「私は日本の会社員。奥戸繰主33歳。地球の西暦2012年9月18日にトイレで用をたし、

水を流したら全裸になってトムさんの畑に。簡単ですが以上です」


トムは腕を組み、しばらく眉根にしわを寄せて考え込んでいたが、


「聞いてもわからねぇな。マコわかるか?」


マコさんは両手を開き、肩のあたりに持ち上げた。


外人特有のジェスチャーわかりませんをテレビ以外で初めて見て少し感動する。


「チコお絵かき帳を持ってきな」


「はーい」


元気よくチコちゃんは飛び出していった。


「今言ったことを書いてみてくれ。しかし33てのは本当か? マコ見えるか?」


「見えないね。ガイス兄貴と同い年なんて」


ガイスさんとやらはここにはいないようだ。


チコちゃんが大事そうに帳面を抱えてきた。


「昨日はねー。おとーさんを描いたんだよー」


力作をトムさんに見せている。


「チコは上手だなー。1枚だけクラスのおじさんに描かせてもいいか?」


「いいよー」


マコさんから鉛筆のような物を、チコちゃんからは帳面を受け取り書き始める。

私は・・・


書きおわった帳面を見てトム夫妻は顔をしかめた。


「どこの国の文字だ?」


予想はしていたがやはり読めないらしい。

英語やカタカナを追記してみるがわからないとの返事だ。

試しにマコさんにいくつか数字や文字を書いてもらう。


EXEをテキストエディタで開いた時のように規則性がわからない。

言葉が通じるのに。

書いた文字を指差しながら説明する。


日本という国は聞いたことがなく、西暦もわからないと言う。


地球という惑星の考え方は笑われてしまった。


「ヒッヒ。地面が丸いってゆーのは面白いが、住んでた場所がこの国じゃないってゆーのは

嘘をついている様には見えないな」


文字をみながらトムさんは教えてくれた。


「ここはミゼリア王国西のはずれ。午車で2日ほど東にいけば町がある辺境だ。暦はあるぞ。今は王国暦323年申の月だ」


説明を受け思考が止まる。ミゼリア王国とやらをすぐにググりたい。


「世界地図とかありますか?」


差し出されたコーヒーらしき飲み物で喉をぬらす。


「爺さんが持ってたかな」


頭を掻きながら、奥の部屋にトムさんは入っていった。


「不思議な文字ね。直線と曲線の組み合わせが複雑で」


マコさんは俺の書いた文字をなぞりながらそんな事を言った。

となりではチコちゃんがお絵描きを始めている。


「おう。古いがこれでいいか?」


丸められた羊皮紙のような物をトムさんが数本持って来てくれた。


「ひい爺さんがここに落ち着くまでには、かなりあちこち行ったって爺さんが言ってたな」


破かないように開く。


「これはウインザットのほうだな。かなり北のほうだ」


地図を見て驚いた。海岸線が恐ろしく細かい。

入江の湾曲などが航空写真のようだ。


「ミゼリアはーっとこれだ。このあたりがここら辺だな」


指でトントンと指された辺りを見る。どの地図も地球上じゃないっぽい。


地理の成績が良かった訳じゃないが、地球にある大陸の形はだいたいはわかる。


数枚の地図を縦横斜め、あらゆる方向から再度、頭の中の地球地図と比べる。


認めざるをえない。



俺は異邦人になってしまったのだと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ