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異世界紳士録  作者: ガー
笑顔と復讐と星空
19/33

3-4

ジガヒツ。


マーグから海を越えて北西にある国だ。


ジガヒツには有名な産業が2つある。


1つは山岳資源。


ここでしか産出されない鉱石があり、鍛冶士であれば一度は扱いたい鉱石や、高価な宝石が豊富に埋まっている。


そしてもう1つが傭兵稼業だ。


恐ろしく高額だが、2級3級の魔業士が束になっても相手にならないほどの戦闘力を持つ。


傭兵国家とも言われ、国王でさえ時には雇われて戦場に現れるという。


ジガヒツの傭兵には特色が1つある。


それぞれが特異な自作の武器を持っているということだ。







ガチン、と持ち手が折れ曲がり元の柄に戻された。


鋏形態から大剣形態へ戻された武器を手に、カルナがかしらのもとへやって来る。


肺の上部あたりから切断されたかしらは放っておいてもすぐに息絶えるだろう。


「言い残すことはありますか?」


「あ、あるか、よ・・・ガフッ! そ、んなも」


次の瞬間、かしらの頭部が掻き消える。


血糊を振り払うとカルナは大剣を背中に戻した。


「お姉ちゃん。こんなのあった」


カルサが山賊達の住処から宝箱を担いで持って来た。


数十名の山賊をミンチのようにしたというのに、着ている服は返り血を浴びて汚れるということも無くすっきりとしている。


宝箱の中には、山賊団が集めたミゼリア金貨があふれそうなほど詰まっていた。


「さっきまで手伝ってくれなかったくせに」


眉根に皺をよせるカルナ。


「早くこの先の町に行く」


そう言うと先に散らばったマーグ金貨を集め始めるカルサ。


「もう。カルサちゃんったら」


見渡す限り血溜まりだらけだが、マーグ金貨の周りはきれいなもので2人はしゃがんで金貨を集め始めた。









時は遡り前日の夕方。


いつものようにドルプと夕食を囲むクラス。


今日はデザートまで付いていた。


「そうだ。明日はクラスも一緒に来ねぇか?」


「なんかあるんですか?」


「山賊退治だ」


「うへ。山賊って言ってもヒトでしょう? 魔物ならまだしも・・・」


「結構いい額で募集かけてんだよ。なんでもその山賊団のかしらが元騎士らしくてな。討伐隊としてはとにかく数集めたいって話だ」


「もっと駄目じゃないですか。剣なんて握ったこともないですよ」


「後ろのほうでちょろちょろしてりゃいいんだよ。こんなもん」


「・・・やけにすすめてきますね?」


「・・・わかるか? いやー集めた人数次第で上乗せ金があるんでな。ヒヒヒ」


「ハァ。そんなことだろうと思いましたよ。でも数さえ集めればどうにかなるんですか? 元騎士って」


「どうかねぇ。魔業士マゴウシだったりすりゃ俺らにゃ無理だわな」


「マゴウシ?」


「知らねーか? 魔法で能力を上げる奴らだよ」


「能力? 魔導士とかとは違うんですか?」


「ああ。魔法をぶっ放したりはしねぇ。でも武器の切れ味があがったりよ。とにかく接近戦じゃ敵なしな奴らだ」


「騎士っていうのはみんなマゴウシなんですか?」


「騎士隊長だの役がついてるのは、魔業士でもおかしくはないな」


「んー。聞けば聞くほど俺なんかにゃ無理っぽいんですが・・・」


「人数集めに協力してくれりゃいい。戦闘が始まったりすりゃ逃げてもいいさ」


「・・・ドルプさんは戦闘に参加するんですか?」


「いんや。俺も後ろのほうで様子見だ。今までだって討伐隊が何回か出てたんだが、それでも駄目だったらしくてな。今回は本腰を入れて討伐隊にも魔導士も魔業士もいるって話だ。そうだとすりゃ見せかけの俺達に仕事はまわってこえねぇはずだ」


「ドルプさんと一緒にいればいいんですかね?」


「おっ。乗ってくれるか。それでいい。俺もいざとなりゃ逃げる気だしな」


(問答無用でぶった切りゃドラッグドロップいいんだろうけど。生き物の内臓は苦手だ・・・)


そもそもクラスは元の世界でも、テレビで見るような手術風景はすぐにチャンネルを変えてしまっていた。


(戦闘中に前にでるような事がないといいな)


「でも、家まで持ってるドルプさんが、まだこんな危なっかしい仕事やってるんですか?」


「まぁ、つかず離れずの関係の奴らにも儲けさせてやらないとな」


「トムさんから聞いてましたけど、本当に面倒見がいいんですねぇ」


「俺が? 止せよ。今回は伝手への顔見せみたいなもんだ」


似たような年のおっさんが、はにかむのはきついなとクラスは思った。







朝もやがうっすらと残る早朝。


カイミの町を囲んでいる外壁の一角に、がやがやとうるさい集団がいる。


思い思いの武器を持ち、ガチャガチャと音をさせた賞金稼ぎ達だ。


ドルプが隣に居るクラスに話しかける。


「・・・本当に武器も持ってないんだな」


「言ったはずでしょう。俺は剣なんか持ったことないって」


「でもよう・・・。しょうがねぇコレ持ってろ」


ドルプが腰に差していた大型のナイフをクラスに渡す。


重さを確かめたり、皮のシースがついたまま振り回したりしたクラスは、


「使えそうにはないですよ?」


「それでも持ってなきゃ人数に入れてくれねーよ」


ドルプ自身は長剣と丸い盾を持っている。


髭を生やしているドルプの相貌を合わせ、まるで山賊のようだとクラスは思った。


「まーでも。目指す6人は集まったから良しとするか。へへへ」


他の4人も武装はしているが、どこか気の抜けた感じでやる気は感じられない。


「そろそろ出発だろう。荷物はかついでおけよ」


クラスも水筒などを入れた袋を背中に担ぐ。


残っていた朝もやが消えたころ、一団は目的の山道へ続く森へ入っていった。

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