結婚しようぜ!
ところどころ読みにくいのはDKの頭の中だからということで。
「殊理ちゃんはどんな結婚式が良い?」
不思議そうに見上げてくる殊理ちゃんは今日も可愛い。
色素の濃いこげ茶の髪と目。俺が羨んでも手に入らないそれ。
でも俺がそうなったところで殊理ちゃんみたいにはなれないんだと思う。
この髪色と目の色。それに顔の作りから何からが全部、殊理ちゃんだから。
「俺はそうだな…まず、式は教会式。
神前式や人前式もありかなって思うけど厳かに執り行いたいってのと殊理ちゃんには白無垢よりウェデングドレス着てほしいから。
あ、勿論殊理ちゃんがドレスより白無垢派なら喜んで合わせるよ。袴も悪くないし。
何より2人が満足できる結婚式が大前提だもんね」
思い描くはベールと白いドレスに包まれた彼女。
手には花束、父親に付き添われ俺の元へ粛々と歩き出す。
そして託された彼女を連れて神父の下へ。
永遠への宣誓と指輪の交換。リングガールは幼い従妹にお願いしよう。
誓いのキスは頬っぺたに。唇だと恥ずかしがりそうだからね。
あーもう、まだまだ先の話だってのに!こんなにも妄想が膨らんじまって仕様が無い!
「でも式場は俺に任せてもらってもいいかな?和洋どっちも出来るよう何箇所か候補があるんだ。
式の形式決めたら下見に行こうね。
あ、そうだ俺のオススメの式場!今度披露宴のコースメニューの試食会があるんだけど、次の週の土曜とかどうかな?デートついでに。
まだ予定が分からないなら後で教えて?」
鞄に入っていたチラシを殊理ちゃんに手渡す。
チラシを斜め読みした殊理ちゃんはそれを丁寧に折り畳んで鞄にしまった。
この流れだと俺の希望通り教会式になっちまうけど、神前式の神社もチェック済みだ。
殊理ちゃんの希望は全て叶えるよう尽力する。これぞ人事を尽くすというやつだ。
どっかの少年漫画の登場人物みたいなこと言ってんなよ俺…。天命は人事を尽くして勝ち取るもんだっての。
「ドレスはマーメイドラインよりプリンセスラインの方が良いなぁ。ふんわりとした感じの。きっと似合うだろうなぁ。
俺さ、ミニ丈とか踝丈とかって好きじゃない。本来ウェディングドレスって処女だけが着る事を赦された純潔の象徴なんだよ?それをわざわざ砕いてやる必要ないじゃん。
あ、別に殊理ちゃんが処女じゃなくても俺の愛は変わらないよ?元彼殺すとかそんなこと今は思ってないから安心して?」
前は思ってたのかという顔をされた。
本当に前の話だよ。うん、今はね、うん。
だって殺そうにもその対象が居ないんだし。自分から手を下すのはなぁ?
「披露宴はどうしよっか?
従妹がケーキ大好きだからウェディングケーキは生ケーキで、“新郎新婦、初めての共同作業です”は外せないよね。あれ結構憧れてんだ。
入場の曲は殊理ちゃんが決めて?俺音楽ってよく分からなくてさ。殊理ちゃんならきっと良いの選んでくれると思うんだ。
招待客はどうしようか。式は親族だけとして、披露宴には友達何人呼ぶ?俺はそんなに…精々5~6人くらい。
あ、ネームプレート!あれ手作りにしない?その方がなんか可愛いっていうか、思い出になるし!
あとはそうだなー…お色直しって何回したい?俺としては1回やれば十分な感じだけど。
ほら、何度も着替えるのって結構面倒じゃない?あ、お色直しのドレスは俺には内緒で決めてね?俺にも楽しみが欲しいっていうか、ドキドキが欲しいんだ。
まぁ殊理ちゃんの傍にいるだけで毎日ドキドキものだけどね!」
身長差およそ13cm。殊理ちゃんは常に上目遣いで俺を見る。
わざとらしくない自然なそれは、俺を刺激するには十分だ。可愛い。
それに限らず殊理ちゃんの一挙一動が俺の本能を刺激して、正直何度もオカズにした。
制服に包まれた胴。ニットベストを押し上げる胸。スカートから伸びる白い足。それらがまだ見たことない殊理ちゃんの裸体を想像させて…なんで制服ってこんなエロいんだよ。これは俺の心の中に仕舞っとくか。
「家は住宅街よりも少しはずれにある静かな場所にしようね。壁は白で。リビングに置くソファーやカーテンとかは2人で決めよう。ベッドカバーとかも。
キッチンは殊理ちゃんが自由に決めて。キッチンの主役は奥さんなんだから。
プライベートルームはあまり欲しくないんだけど、書斎とかは憧れるかな。殊理ちゃんもそういうの欲しい?
そうだペット。俺はハムスターとかケージで飼えるやつが良い。犬猫って家傷つけちゃうし、結構長生きだし、掃除大変だしね。
庭はどうしよっか。あまり手間の掛からないのがいいね。でも子供が遊べるように芝生は在ったほうがいいか。転んでも痛くないし。
あ…あとさ、殊理ちゃん。えっと、その、こ、子供は何人欲しい?俺はその…5人くらいが良いな!賑やかで笑い声の絶えない一家。
そのためには殊理ちゃんに5回も頑張ってもらわないといけないんだけど、嫌ならせめて2人!2人は最低でもほしいんだ。
勿論最初は女の子で次が男の子。一姫二太郎っていうの?そういうのも意識してさ。
2人共殊理ちゃんに似て可愛いんだろうなぁー…そんな子供達にお父さんとかパパとか呼ばれるなんてもう夢みたい。名前は…」
「あの」
久しぶりに殊理ちゃんが口を開く。
も、もしかしてさっきから喋ってばっかだったから拗ねた?
あぁ殊理ちゃんたら笑ってないし!寧ろ怪訝そうな顔してる!やっべー俺ってば本当に馬鹿じゃん!
「も、勿論殊理ちゃんの意見も聞くよっ?ジミ婚のが良いってなら考えるし、やりたいことがあんならそれもやろ!さっきも言ったけど2人が満足出来る式にしないと意味ないもんな!お家のこともペットのこともさっ!!俺は犬苦手なんだけどあの大きな白いのとかじゃ無ければ全然オッケーだし!和室とかそういうのも2人で話し合って決めよっ!もしかして家の利便性のこととかか?駅に近い方が良いなら考えるって!でも俺うるさいの嫌いだし、土地の広さも郊外の方が取れると思うんだ!それも頭に入れてよく考えて欲しい!それに」
「そうでなくて」
殊理ちゃんは困ったような、呆れた様な、そんな表情を浮かべ一言
「あなた…誰?」
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「お姉ちゃん」
「あれ、お久しぶりことちゃん」
「相談があるんだけど」
「何?」
「知らない男子に私との今後の人生設計、主に結婚から新婚生活編を語られたんだけど、どうしたらいい?」
「意味が分からない」
ストーカーにはご用心。